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イギリス便り(7月)RHS ハンプトンコートフラワーショー

イギリス便り(7月)RHS ハンプトンコートフラワーショー

「ファーガス流 プランティングスキーム」

今回、チェルシーと並ぶハンプトンフラワーショーのお話をしたいと思いますが、前回、グレートデクスターの回でお話しした〝ナチュラルスティック プランティング’について、今一度、私なりの思いと、ファーガスに聞いた話をまずはお話したいと思います。

〝ナチュラルスティック プランティング’〟は、自然回帰の流れから来ているように感じています。 高まる自然回帰の動きには、温暖化現象による自然災害の多発、また日々更新されていくITの激しい動きに、実は戸惑いを感じている私たち人間の本能の叫びではないかと思うのです。子どもの頃の自然の風景、本来私たちに備わっている自然からの恩恵への感謝の心。それらはイングリッシュガーデンの在り方のベースです。イングリッシュガーデンの生みの親、ガートルードジーキルは18世紀より起こる産業革命の後、やはり自然回帰の運動に大きく影響を受けているのは周知の事実です。

コニファーや垣根を背景に黄色や青の色彩がちらばる。ロングボーダーにて

コニファーや垣根を背景に黄色や青の色彩がちらばる。ロングボーダーにて 

イングリッシュガーデンの作り方はとても緻密で年間計画が必要となります。その上でヘッドガーデナーは各々のプランティングスキームを庭に反映させていきます。先代のクリストファー・ロイドとファーガスもやはりそれぞれ違ったスキームを持っています。私が行き来し始めた7年前は、グルーピングと言われるスキームをよく見かけたように思います。庭仕事で日々慌ただしく過ぎる中、時間を見つけ、前回にお伝えした黄色の花を自然な風景に見せるプランティングスキームについてファーガスに聞いて見ました。なんの事はない、「いつの時も風景を変化させて、見に来てくれるお客様に楽しんでもらいたいだけさ。白色の風景はもうみんな見慣れたしね」と一言だけ。そんな朴訥なファーガスの植物に対する熱い思いは格別です。機会がありましたらぜひグレートディクスターへ遊びに来て下さい。

お昼時間の合間にファーガスと共に撮影

お昼時間の合間にファーガスと共に撮影

特集ガーデン ‘植物の進化’

特集ガーデン ‘植物の進化’ (The Evolution of Plants)。 同じくRHS特集ガーデンピエットウドルフ ガーデンとともに

RHS ハンプトンコートフラワーショー2018 RHS特集ガーデン〝植物の進化(The Evolution of Plants)〟

気がつけば今年もRHSハンプトンコート フラワーショー の時期になっていました。園芸大国イギリス。とにかくシーズン中は休む間もなく毎日が過ぎていきます。RHS(英国王立園芸協会)主催のフラワーショー では2013年にチェルシーフラワーショーが100周年を迎え、次世代への激励・サポート、また園芸を通した教育に特に力を入れるようになりました。 世界で最大の開催規模を誇るハンプトンコート フラワーショー でも、数年前よりRHS主催の庭をいくつか企画するようになりました。その1つ、ドームを使用した企画に昨年より参画しています。今年は〝植物の進化 (The Evolution of Plants) 〟がテーマです。何億年もの前には生体はまだ地球には存在していませんでした。生きている地球と共に少しずつ生体が変化していく姿をプランティングで表現しています。苔類が誕生し、シダ類へ成長。シダ類の種類も、時代を重ねるごとに葉の形態や種類も変化していきます。そして氷河期へ。

地球に初めて現れた生体はコケ

地球に初めて現れた生体はコケ

水が湧き出しシダ類も現れる

水が湧き出しシダ類も現れる/Photography by Nicholas Hodgson

河期が終わってしばらくはシダ類のみが存在していた

氷河期が終わってしばらくはシダ類のみが存在していた/Photography by Nicholas Hodgson

マグノリア、クロロウバイ
マグノリア、クロロウバイ

マグノリア、クロロウバイが地球に花をもたらす。白や薄い色の花達から品種はたくさん生まれていく/Photography by Nicholas Hodgson

その後しばらくののち、マグノリアやクロロウバイが地球に花をもたらし、白や薄い色の花たちが生まれ、その後たくさんの種類へと変化していきます。そして最後はフラワーメドウへと移り変わり、現代の私たちの時代まで続きます。このフラワーメドウも自然回帰にみる‘ナチュラルスティック プランティング’の近年の代表スタイルの1つです。

ドームの周りはすべてフラワーメドウに

ドームの周りはすべてフラワーメドウに

時代を表現するプランティングにはいつもと違った緊張感がありました。見にきてくれる方にそのメッセージは私のプランティングで伝わるんだろうか……。

RHSの特集ガーデンなのでボランティアのメンバーがたくさん助っ人にきてくれました。プランティングをどんどん進めていく私の耳にふと「作り込んでいるけれどとってもナチュラルに仕上がっているよね」という一言が飛び込んできました。私の目もやはり自然回帰のナチュラルスティック プランティングの流れに動いているようです。

ピープルズチョイスという賞

ハンプトンフラワーショー

1821 若い世代をサポートするカテゴリーで以前に受賞した女性デザイナー4人が競うライフスタイルガーデンズカテゴリー。この〝The Health and Wellbeing Garden〟はシルバー受賞。さらにピープルズチョイスを獲得。

ハンプトンコート フラワーショー でも賞は、ゴールド、シルバーギルド、シルバー、ブロンズと、得点により与えられます。その上で一般投票というカテゴリーがあり、各庭のカテゴリー毎に一般投票が行われます。投票は誰でもできます。ウエブサイトから行うのが普通です。この傾向を少しお話すると、確実にイングリッシュガーデンコテージスタイルが色濃く見られます。ゴールドやブロンズなどの審査員の評価とは別にやさしいプランティングスキームで収められた庭が獲得することが多いようです。さすがにピープルズチョイス。ゴールドとは違ったうれしさかもしれませんね。

佐藤麻貴子

佐藤麻貴子

ガーデンデザイナー、ガーデナー
東京の老舗ホテルを退社後、英国で園芸学・ガーデンデザインを学ぶ。英国 チェルシーフラワーショーや長崎ハウステンボス ガーデニングワールドカップでは数々の金賞を受賞しているガーデンデザイナーのコーディネーターを務める。
2011年 makiko design studio を設立。ハンプトンコートフラワーショー2012 に「日本の復興―希望の庭」を初出展。準金賞を受賞。イギリス独特の植栽と、日本庭園を組み込んだ独自のスタイルが文化を越えて好評を博す。
チェルシーフラワーショー100 周年(2013年)では、RHS(英国王立園芸協会) のショー運営本部にて本部長のアシスタントを務め、また、イギリスにあるグレートディクスターでは、現在もガーデナーとして研鑽を重ねるなど、国内外で活動中。

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