更新日:2018.01.16
もっと知りたい肥料! vol2 元肥・追肥ってなに?種類や与え方、トラブルの対処法、土づくり
元肥(もとひ、もとごえ)や追肥(ついひ、おいごえ)という言葉をご存じでしょうか。園芸やガーデニングを始めたばかりの方はまだ耳にしたことがないかもしれません。すでにいろいろな植物を育てている方には耳慣れた言葉でしょう。こちらでは、元肥・追肥に関する情報をはじめ、肥料の種類や施し方、施肥時のトラブルに関することなど、肥料にまつわる基本的な知識をご説明します。園芸初心者の方や、改めて肥料について確認したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
肥料の施し方の種類
肥料は、施すタイミングによって呼び方が異なる場合があります。生長に応じた施肥が行えるよう、施し方の種類を確かめておきましょう。
元肥とは
元肥とは、苗の定植時や鉢花、観葉植物などの植え替えの際に、あらかじめ用土の中に混ぜておく肥料のことです。植物の初期生育に必要な肥料分を供給し、生育を途切れさせないために必要不可欠なものといえます。基肥(きひ)や原肥(げんぴ)と呼ばれることもあります。マグァンプK が最適です。
なお、培養土を購入すると、あらかじめ元肥が施されていることがあります。そうした場合は元肥を追加する必要はありません。自分で用土を配合した場合や、古い土を使う場合、元肥なしの培養土を買った場合などは肥料を準備しておきましょう。
種まきの際に元肥を加えるかどうかは状況によって異なります。畑などの広い場所に直接種をまく場合は、元肥を施した土を使ってかまわないとされています。広い畑の土であれば、肥料の濃度が上がりすぎないためです。プランター栽培のように狭い場所で種まきをするなら、まずは肥料の含まれていない種まき用土を使ったほうが良い場合もあります。育てる植物の種類によっても異なるため、それぞれの性質を調べたうえで種まきをしましょう。苗からプランター栽培で育てる場合は、通常どおり元肥をはじめからいれておくとよいでしょう。
追肥とは
追肥とは、植物の生育途中に与える肥料です。生育旺盛な植物や、次々に花を咲かせる植物にはとくに大切な肥料となります。
元肥が生育初期に株を生長させるための栄養を与える役割があるのに対し、追肥は花や実をつけて子孫を残すときに必要な栄養を与えるものとされます。生育段階に応じた肥料を施すことがポイントです。
ハイポネックス製品で言うと「ハイポネックス原液」や「プロミック」が追肥としてよく使用されます。追肥で注意したいのが肥料切れのスピードです。地植えにするときと比べ、プランターや鉢植えは肥料が流れやすい傾向にあります。そのため、プランター栽培の場合は、追肥の頻度が多めに必要になることがある点に留意しましょう。
寒肥とは
寒肥は、元肥の一種で、根の生育が停止している冬に施す肥料です。「かんごえ」や「かんぴ」などと読みます。樹木に対して与えるケースが多く見られます。花木や果樹などを栽培する際は、寒肥が必要になるかもしれないと考えておきましょう。
家庭で育てる機会の多い庭木は、冬になると休眠するものが多く見られます。休眠期にじっくりと効く肥料を施しておくことで、春以降に活発になる樹木へエネルギーを与えられます。寒肥は元肥の一種ととらえておくと良いでしょう。
与え方には複数の種類があります。株をぐるりと囲むように肥料を施す「輪肥」や、穴を数カ所掘って肥料を施す「つぼ肥」、穴を放射状に数カ所掘って施す「車肥」などです。いずれの場合も、幹のすぐ近くには肥料を施さず、根の先端あたりへ施肥するように心がけましょう。また、肥料が根に直接触れないように気をつけることも大切です。
お礼肥とは
お礼肥(おれいごえ)は追肥の一種です。開花が終わった宿根草や花木、収穫が終わった果樹などへ栄養を与えるために施します。
開花や結実などは、植物のエネルギーを大きく消費します。肥料を与えずにおくと、次のシーズンに咲く花が減ったり、果実の数が少なくなったりすることも。お礼肥を与えておくことで株が充実し、翌シーズンも元気に生長してくれるはずです。
芽出し肥とは
芽出し肥(めだしごえ)も追肥の一種です。春先の2月~3月に与えます。芽出し肥を施しておくことで、発芽のために使われるエネルギーを補うことができます。
元肥や追肥に適した肥料成分
肥料には、主な成分であるチッソ・リン酸・カリなどのほか、さまざまな栄養分が含まれていることがあります。いずれも植物の生育に欠かせない成分です。それぞれの成分について、基本情報を確かめてみましょう。
肥料成分の基礎知識:肥料の3要素
植物の生長には、さまざまな成分が必要です。そのうち、炭素や酸素、水素などは水や空気を介して得ることができます。そのほかの成分は、主に根から吸収されます。
根から吸収する栄養のうち、必要量が多い成分を「大量要素(多量要素)」と呼びます。大量要素はチッソ(N)・リン酸(P)・カリ(K)の3種類で、これらを合わせて「肥料の3要素」と呼ぶことがあります。いずれも植物全体の生長に使われる大事な成分です。
チッソ
チッソ(窒素、チッ素)はアミノ酸やたんぱく質などの主要成分で、株全体の生育を促す役割を果たします。葉色を濃くするほか、葉を大きく育てることなどに使われるため、「葉肥」ともいわれます。
チッソが不足すると葉が色あせて小さくなり、株が貧弱になってしまいます。反対に、チッソが過剰な状態になると葉や茎ばかりが茂ってしまい、花や実つきが悪くなってしまいます。また、チッソが多すぎると虫を呼び、虫が病気を呼びます。チッソが多いと、植物はより大きく育ちますが、一方でデメリットも生じやすくなります。適しているものを選ぶことが大切です。
リン酸
リン酸はDNAや細胞膜などを構成する成分です。糖類と結合し、エネルギー吸収作用にも関わります。花つきや実つきを良くすることから「花肥」「実肥」ともいわれます。
リン酸が不足すると開花や結実が少なくなり、根張りも悪くなります。果実の場合は、甘みが減ってしまうことも。葉は小さく、茎は細くなっていきます。反対に、過剰になると株が小さくなります。ただし、リン酸が過剰になるケースはそれほど多くありません。
カリ
カリは「カリウム」のことですが、肥料成分としては「カリ」と表記されることが多くなります。植物の炭水化物やたんぱく質などの合成をはじめ、さまざまな化学反応に役立つとされています。根を丈夫にすることから「根肥」ともいわれる成分です。
カリが不足すると植物の抵抗力が弱まり、病害虫の被害を受けやすくなります。環境に対する適応力も低下するため、耐暑性や耐寒性が弱くなります。古い葉から枯れはじめ、根が伸びにくくなり、根腐れが生じることも。果実をつける植物の場合は、味も悪くなってしまいます。過剰になるケースは少ないものの、極端に多く吸収された場合、カルシウムやマグネシウムの欠乏症につながることがあります。
肥料成分の基礎知識:中量要素(2次要素)
肥料成分のなかで、肥料の3要素にあたるチッソ・リン酸・カリほどではないものの、必要とされる量が多いのが「中量要素」(2次要素)です。カルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)、硫黄(S)などが該当します。
カルシウム
カルシウムは、細胞膜をより強くし、根を生育旺盛にする働きを担います。石灰に多く含まれている成分です。土壌の酸度調整にも利用でき、施すことでアルカリ性に傾きます。
カルシウムが不足すると生育が鈍ります。とくに新芽へ影響が見られることがあります。
また、トマトやピーマンなどは、カルシウム欠乏により「尻腐れ病」になるパターンが多く見られます。白菜の「芯腐れ病」も有名です。トマト・ピーマンが有名ですが、野菜栽培の際は特にカルシウムを補うことを心がけるとよいでしょう。
カルシウムが過剰になるパターンは多くありませんが、与えすぎるとマンガンや亜鉛、鉄などの吸収が鈍くなります。土壌がアルカリ性に傾きすぎるためです。
マグネシウム
マグネシウムは「苦土」とも呼ばれます。葉緑素の成分であり、光合成に関わります。苦土石灰に含まれている成分です。
マグネシウムが不足すると、葉の変色や斑点が見られるようになり、生育不良を引き起こすことも。反対に、過剰になると亜鉛やマンガン、ホウ素といった成分の吸収が悪くなります。
硫黄
硫黄はたんぱく質の構成成分であり、不足すると生育不良になります。ただし、通常であれば不足することは少ないため、基本的には別途与えなくても問題ありません。過剰になると、大量要素や中量要素などの吸収が悪くなることがあります。
肥料成分の基礎知識:微量要素
肥料として欠かせないものの、必要量がそれほど多くない成分は「微量要素」に含まれます。マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ホウ素(B)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、塩素(Cl)、モリブデン(Mo)などが該当します。不足すると生育不良になることもあるため、注意しておきたいところです。ただし、大量要素と比較すると、欠乏するパターンはそれほど多くありません。
例えば、「ハイポネックス原液」には、肥料の3要素(窒素・リン酸・カリ)及び、中量要素(2次要素)であるカルシウム・マグネシウム・硫黄に加え、微量要素(マンガン・ホウ素・鉄・銅・亜鉛・モリブデン・塩素)と有用元素(ナトリウム・コバルト)の15種類の栄養素にビタミンがバランスよく配合されています。
肥料成分の基礎知識:活力剤との違い
植物用の肥料を探していると、「活力剤」として売られている商品を見かけることがあります。活力剤も肥料と同じ成分が含まれていることがありますが、違うのは成分量です。
肥料は法律によって規格最低量が決められています。肥料として販売されるのは、「チッソ・リン酸・カリがそれぞれ0.1%以上、あるいは2成分以上の合計量が0.2%以上含むもの」という基準を満たした製品だけです。肥料としての条件を満たさないものが活力剤として売られることがあります。また、肥料成分が含まれていないものの、植物の生理活性に関わる成分が配合されている活力剤もあります。
例えば、植物用活力液「リキダス」は、肥料の吸収をよくし、根張りや夏バテ・冬の寒さへの抵抗性を強くするのに役立ちます。特にカルシウムの吸収を高めます。活力剤は、植物に元気を与えたいときに施します。ただ、肥料として十分にエネルギーを与える役割はありません。肥料の3要素である窒素、リン酸、カリが、肥料で定義される含有量分を含んでいないため、活力剤は単体で用いず、肥料と活力剤を併用しながら栽培していきましょう。
元肥や追肥におすすめの肥料成分
元肥や追肥として使える肥料は多岐にわたります。どういった形式の肥料であっても、植物に合わせて成分がバランスよく配合されているものを選ぶことがおすすめです。肥料を買うときは成分表をチェックしてみましょう。
例えば、元肥の場合は、生育初期に株を生長させるため、チッソが含まれている肥料を選びましょう。反対に追肥には、開花前になったらリン酸などが多く含まれた肥料に変えることも検討すると良いでしょう。加えて、特に野菜を育てる際は、活力剤「リキダス」をプラスで与えることで、カルシウム不足予防等に役立ちます。
もちろん、適している肥料の成分は、植物の性質によっても異なります。栽培するのが花なのか、野菜なのか、果物なのかによっても変わってくるでしょう。植物ごとに合う肥料を確かめておくことが大切です。必要であれば、専用肥料も検討してみましょう。「バラ専用」特に「観葉植物専用」「ブルーベリー専用」「トマト専用」など、植物の特性に応じて配合された専用品が販売されていることがあります。
肥料成分の比率による呼び方
市販されている肥料は、肥料の3要素の配合比率が「8-8-8」のように表示されています。数字は「チッソ-リン酸-カリ」の順番で並びます。並び順は、メーカーや製品によって変わることはありません。また、「8-8-8」の場合は、肥料100g中にチッソ・リン酸・カリが8%ずつ含まれているとわかります。
「8-8-8」や「10-10-10」「5-5-5」などの肥料は「水平型」といわれ、3要素がもっともバランスよく配合されています。幅広い状況であらゆる植物に使える、使いやすい肥料です。特に洋ラン類は水平型がおすすめです。
「10-8-4」「10-5-5」などは「下がり型」で、チッソをもっとも多く含む肥料です。生育初期に向いています。葉物野菜にも適しております。対して、「5-5-10」のように、カリがもっとも多いものは「上り型」と呼ばれます。開花や収穫後のお礼肥や根菜類の野菜におすすめです。季節的に肥料を変更することもできます。秋は株を丈夫にして耐寒性を強化するために、カリが多めの上がり型が効果的です。
「5-10-5」のようにリン酸が多いものは「山型」です。多数の花を咲かせる植物の開花期に向いています。反対に、「10-5-10」のようにリン酸が少ないものは「谷型」となります。
元肥や追肥に適した肥料の種類
肥料には幅広い種類があります。原料や配合方法、効き目のはやさなど、さまざまな基準によって種類が分けられます。元肥や追肥には、どういった肥料が適しているのでしょうか。こちらでは、肥料の種類に関する基礎知識を解説します。
肥料の種類の基礎知識:単肥と複合肥料の違い
肥料は、単肥と複合肥料に大きく分けることができます。ひとつの養分が主体となっているものが単肥、複数の栄養分が含まれているものが複合肥料です。
単肥を使うのは、特定の栄養成分が不足したときです。基本的には複合肥料を用い、必要な栄養をまんべんなく取り入れることがおすすめです。
肥料の種類の基礎知識:有機肥料と化学肥料の違い
肥料は、原料となる成分によって「化学肥料」(無機質肥料)や「有機肥料」(有機質肥料)に分けられます。化学肥料は、鉱石などの無機物を原料としてつくられた肥料です。速効性のあるものが多く、臭いが少ないメリットがあります。量の計算がしやすく、初心者でも扱いやすい点も大きな魅力といえます。一方で過剰に与えると植物に障害が起きてしまうことがデメリットとしてあげられます。
有機肥料は、魚粉や油粕、家畜の糞など、有機物を原料としてつくられた肥料です。化学肥料と比較すると効き目がゆるやかに現れます。ガスが発生するものや、臭いが強いものがあり、また虫が寄ってきやすいというデメリットがありますが、土壌改良効果を発揮し、過剰に与えても植物に障害が起きづらいというメリットがあります。また、有機肥料に発酵材を配合してつくる「ぼかし肥」があります。すでに発酵させておくため、施肥してからすぐに効果が見られる点が特徴です。製造方法に決まりはなく、農家ごとにオリジナルのやり方が確立されているともいわれています。
有機肥料と化学肥料は、どちらにもメリット・デメリットといえる部分があります。栽培環境や植物の生育状況などに合わせ、適したほうを選んで施しましょう。
肥料の種類の基礎知識:有機肥料と堆肥の違い
堆肥は有機肥料に該当するとのイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、厳密には異なります。堆肥にも肥料と同じ成分が含まれてはいますが、土壌改良を目的として加えられる点が大きな違いです。原材料は牛糞や鶏糞、骨粉、米ぬかといった有機物です。こういった原料を腐熟させ、微生物などによって分解、発酵させると土壌改良効果が生じます。同量の有機質肥料より、含有されている肥料成分は少ない点も特徴です。
肥料の種類の基礎知識:化学肥料と化成肥料の違い
前述したとおり、肥料は大きく「有機質肥料」(有機肥料)と「無機質肥料」(化学肥料)に分かれ、化成肥料は「無機質肥料」(化学肥料)の一つにあたります。化学肥料は、窒素、リン、カリのいずれか一つだけを含む単肥と、それらのうち二つ以上を組み合わせた複合肥料に分かれ、複合肥料を加工し、機能性を付与したものを化成肥料と呼んでおります。原料は化学肥料で使われているものと同じです。化成肥料のうち、肥料の3要素の合計が15%~30%であれば「普通化成肥料」、30%以上であれば「高度化成肥料」に該当します。家庭菜園の場合は普通化成肥料を使うのが一般的です。
肥料の基礎知識:形の違い
化学肥料の形は、主に固形タイプと液体タイプに分けられます。固形肥料は、タブレット状のものや粉末状、粒状のものなどが存在します。土に混ぜる、表面に置くなどの方法で施すのが特徴です。ゆっくり長く効きます。
液体肥料は、液状になった肥料のことです。元から液体として売られているものもありますが、粉末肥料や固形肥料などを水に溶かして使うこともあります。固形よりも吸収のスピードがはやい点が特徴です。速効性はありますが、効果が持続しづらいです。
肥料の種類の基礎知識:効き目の出るスピードの違い
肥料の効果が発揮されるタイミングによって、「遅効性肥料」「緩効性肥料」「速効性肥料」に分けられます。遅効性肥料は、施してもすぐに効果が生じない肥料です。微生物に分解されてから栄養が吸収できるようになるものや、成分が溶けるスピードが遅いものなどが該当します。一般的に有機肥料は遅効性肥料に該当します。
緩効性肥料は、施してからすぐに効果を発揮するうえ、持続期間が長い特徴があります。表面をコーティングして成分が一気に溶けないようにつくられた「被覆複合肥料」や、不溶性の原料を使用した肥料などが代表的です。急激に肥料の濃度が高まる心配がなく、肥料焼けを起こしにくいため、初心者でも扱いやすい肥料といえます。後述しますが、特に元肥に適しております。
速効性肥料は、施すとすぐに効果が生じますが、持続期間も短いことが特徴です。液体肥料(液肥)として販売されているものが多く見られます。効果が早めになくなる分、与える量を調整しやすい点がメリットです。追肥に使用するとよいでしょう。
元肥や追肥におすすめの肥料の種類
初心者の方は、扱いやすい化学肥料をメインとして施肥を行うと良いでしょう。チッソ・リン酸・カリの3要素がバランスよく配合されている肥料を購入しておくと、幅広い場面で活用できます。ただし、土壌改良を行う場合には、化学肥料のみでは土壌改良が難しいため、有機肥料と併用していくことが大切です。
肥料の種類は、タイミングに合わせて使い分けることがおすすめです。元肥としては、主に遅効性肥料や緩効性肥料などが利用されます。ハイポネックスの製品では「マグァンプK 中粒」が元肥としてよく使用されます。
追肥には、施肥を行うとすぐに植物が吸収できるよう、効果の持続が短い速効性肥料が使われます。ハイポネックス製品でいうと、「ハイポネックス原液」や「プロミック」が追肥としてよく使用されます。
また、お礼肥や芽出し肥などにも速効性肥料が用いられます。追肥と同様、すぐに効果を得られる肥料が適しています。
寒肥におすすめなのは、遅効性肥料や緩効性肥料です。元肥と同じものを与えるケースもあります。樹木の品種や栽培環境によるものの、基本的には1月~2月を目安に与えます。
元肥や追肥の与え方
肥料の与え方には、全層施肥、溝施肥(植え穴施肥)、置き肥など、さまざまな方法があります。家庭菜園の場合は肥料を土に混ぜ込んだり、固形肥料を土の上に置いたりといった方法が主流です。肥料の種類によって与え方が異なるため、基本的な施肥の方法を押さえておきましょう。
肥料を土に混ぜ込む方法
有機質肥料や緩効性の化成肥料などは、土に混ぜ込んで施すことがあります。土全体にまんべんなく混ぜるのは「全層施肥」、植え穴を掘り、根の下に肥料が来るように施すのは「溝施肥(植え穴施肥)」と呼ばれることがあります。
全層施肥は肥料が土になじみやすく、早めに効果が現れます。溝施肥をする場合は、伸びた根が肥料に当たらないように注意が必要です。
ダイコンやニンジンなどの根菜は、全層施肥で元肥を与えると良いでしょう。溝施肥にすると根が肥料に当たり、可食部が変形する可能性があるためです。株間を広くあける植物なら、溝施肥のほうが向いています。
肥料を注ぐ方法
液体肥料の場合は、水やりがわりに土へ注いで施します。説明書通りに水で希釈し、鉢底から流れ出るくらいたっぷりと与えます。その際、肥料が花や蕾などに触れてしまわないように根元に施肥するとよいでしょう。
肥料を置く方法
固形肥料を土の上に置く方法です。「置肥」ともいわれます。株に肥料が直接触れないよう、ある程度離して配置する必要があります。地中に混ぜる方法と比較すると、肥料がゆっくりと溶けていくことが特徴です。肥料の効果をじんわりと長く発揮させたいときに向いています。
肥料を葉に散布する方法
植物が弱ったときは、液体肥料を直接かける「葉面散布」を行うことがあります。スプレーに希釈した肥料を入れ、葉や茎へ噴きかけます。根が弱って肥料を吸収できないときの一時的な栄養補給としてもおすすめです。
葉面散布するタイミングは早朝が適しているといわれています。水を与えると同時に植物が活発になり、栄養を吸収しやすくなるためです。ただし、夏場は植物の生育が停滞しており、葉面散布によって葉焼けが起こる可能性があるため注意が必要です。また、雨が降ると、せっかくかけた肥料が流れてしまいます。晴れの日を選んで散布することがコツです。
元肥や追肥が少なすぎると起こるトラブル
元肥や追肥が不足すると、肥料切れを起こすことがあります。肥料が足りない植物には、どういった問題が生じるのでしょうか。
問題
肥料が足りずに各種栄養が欠乏すると、花つきや実つきが悪くなります。花の観賞や実の収穫などを十分に楽しめなくなるでしょう。野菜の場合、実が出来ても未熟な段階でぽろっと実が途中で落ちてしまうことが多くなることもあります。
また、株自体も小さくなり、丈夫に育たないことがあります。葉や茎などの色が薄くなり、貧弱な姿になっていきます。
対策
肥料不足を防ぐには、肥料切れのサインを覚えておき、必要に応じて施肥することが大切です。不足した栄養を、追肥で補っていきましょう。
肥料切れのサインは植物ごとに異なりますが、基本的には株の色あせや変色、枯れなどで見分けます。花や実が落ちる、成熟が遅いなどのトラブルが生じるときも、必要な成分が不足している可能性があります。
元肥や追肥が多すぎると起こるトラブル
家庭菜園の場合は、肥料不足よりも肥料過多となるケースが多く見られます。過剰に肥料を与えないためには、どういった部分に気をつけておくと良いのでしょうか。
問題
肥料過多になると、害虫被害が増える、徒長する、病気になるなど、さまざまなトラブルが生じることがあります。また、肥料をたくさん与えていたとしても、株が小さく育つことがあります。過剰な肥料により、かえって軟弱になってしまうためです。花つきや実つきなども悪くなります。特にチッソ過多に気を付ける必要があります。
対策
肥料をあげすぎないように、適量を守ることが大切です。裏面に記載の施肥量を守るようにしましょう。初心者の場合は、とくに少なめを心がけたほうが良いかもしれません。また、あげすぎを防ぐために、じっくりと長く効く緩効性肥料を活用することもおすすめです。
肥料過多のサインも覚えておくと良いでしょう。茎に穴が開く、果実が熟すのが遅れるなどの症状は、肥料が過剰になることで生じることがあります。
また、家庭菜園を長く続けている場合、畑の土の栄養が偏っていくことがあります。施した肥料の成分が、どんどん蓄積されていくためです。特定の成分のみが過剰になる、もしくは欠乏するといった状態に陥ることもあるようです。困ったときは、土壌診断(土壌分析)も検討してみると良いでしょう。
元肥や追肥の効果を発揮しやすい土づくり
元肥や追肥を施しても、用土に問題があるとうまく吸収されないことがあります。作物を栽培するときは、土にもこだわってみましょう。良い環境で育つと良いものができやすいのは植物も同じです。特に野菜の場合、土の良しあしが、野菜の出来にも大きくかかわってきます。
植物を育てるのに適した用土とは
植物が育ちやすい土は、根張りしやすく、通気性・排水性・保水性・保肥性が良く、微生物がたくさん含まれている土です。加えて、適切な酸度であることや、異物が含まれていないこと、清潔であることなども求められます。
土づくりで目指したいのが「団粒構造」の用土です。大小さまざまな大きさの粒が混じり合った土で、通気性・排水性・保水性・保肥性に優れています。団粒化せず細かい粒がぎっしりと詰まった土だと水はけが悪くなり、根を伸ばしにくくなるため、植物が旺盛に育つことができません。
加えて、植物ごとの性質に合う土を選ぶことが大切です。植物によっては、乾燥気味の土を好むこともあれば、湿り気のある土を好むこともあります。酸度についても、植物の種類によって適正な数値が異なります。多くの植物は弱酸性土壌を好みます。日本では雨の影響で土壌が酸性に偏りやすいので、苦土石灰等をまぜることによって酸度を調整するとよいでしょう。一方で、代表的な例としてブルーベリーは酸性を好むので、ブルーベリー用の培養土・肥料を選ぶとよいでしょう。
また、肥料の効果は、土の状態によって変わってくることがあります。用土の通気性や水はけが悪い場合、肥料の効果も出にくくなります。肥料の効きが悪いと感じたら、土の状態もチェックしてみると良いでしょう。
主な用土の種類
園芸やガーデニングで使用される主な用土には、以下のような種類があります。
- 基本用土(赤玉土、鹿沼土、黒土、真砂土、赤土、荒木田土、桐生砂など)
- 有機質改良用土(腐葉土、ピートモス、もみ殻くん炭、堆肥など)
- 無機質改良用土(パーライト、バーミキュライト、軽石など)
上記のような用土を混ぜ合わせて培養土をつくることが基本です。基本用土とは、配合する際にベースとなる用土のことです。赤玉土は通気性・保水性・排水性が良い、鹿沼土は赤玉土よりも酸性が強めなど、用土ごとに異なる特徴を持ちます。
改良用土は、基本用土に足りない部分を補うためにブレンドする補助用土です。有機質の改良用土は、微生物を活性化させる働きを持つものもあります。
それぞれの土の特性を活かして配合すれば、オリジナルの培養土をつくることができます。分量を量り、よく混ぜて土をつくりましょう。
ただし、こういった方法では土を数種類用意するコストがかかるほか、目的に応じた配合を行うのが難しい場合も。植物を育てやすいように配合された市販の培養土もあるため、慣れないうちは製品を購入して使うのもおすすめです。
基本的な土づくりの方法
栽培するものを決めたら、植物の性質に合わせた土づくりを行います。まずは、どの用土を使うか決めましょう。
また、お庭や畑などに地植えする場合、元からある土を改良して使う場合があります。日本の土は酸性に傾いていることが多いため、植物に合わせて酸度調整をしましょう。土の酸度を測定したら、石灰を散布して調整します。植えつけの2週間前までには済ませておきましょう。石灰を加えてから1週間程度経ったら、堆肥や肥料を施します。堆肥は土とよく混ぜて、しっかりと耕しましょう。その後、植えつけ作業へ進みます。
追肥と同時に行うことが多いお手入れ
野菜や花などを育てている場合、追肥と同時に「土寄せ」や「中耕」などを行うことがあります。土寄せとは、株元へ土を集めることです。栽培中に崩れてきた土を戻して固め、株が倒れないようにします。根の露出を予防して、変色や乾燥などを未然に防ぐ目的もあります。ジャガイモやサツマイモのように、土の中で育つ野菜を育てるときは、芋の部分に日光が当たらないように土寄せすることも大切です。
土寄せに似ているのが「増し土」です。栽培中、水やりなどの影響で株元の土が減ってしまったとき、新しく土を入れて株元へ集める方法です。主にプランター栽培や鉢植えなどで行われます。ユリやフリージアのように、生育途中でタイミングよく増し土することで、より育てやすくなる植物もあります。
中耕は、生育途中に畝(うね)の間や株間を耕すことです。クワなどを使って軽く耕していきます。
プランター栽培の場合は、縁に接している部分などを耕します。移植ごてや小さな熊手、フォーク、スプーンなどを使って土をほぐします。
中耕をすることでかたくなってきた用土がふかふかになり、追肥した肥料も土になじみやすくなります。水はけや通気性なども良くなるでしょう。また、耕すことで雑草の根が切れる点もメリットです。ただし、植えている植物の根まで傷つけてしまわないように気をつけましょう。深く掘り返さず、軽くほぐすように耕すのがコツです。追肥をしたら、必要に応じて土寄せや中耕なども同時に行ってみましょう。
おわりに
元肥も追肥も、園芸には欠かせない存在です。適切なタイミングで適切な量を施すことで、植物がより元気に生長していきます。肥料には多彩な種類があるため、育てるものに合わせて選びましょう。基本的には複数の成分がほどよく配合された肥料を使うことがおすすめです。
また、肥料の過不足には注意すると同時に、土をお手入れすることも大切です。野菜や果物、花などを栽培するときは、ぜひこちらの記事も参考にして元肥や追肥を選んでみてください。
公開日:2018年1月16日
更新日:2022年5月30日
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