バラのまち横浜で出会った花のトレンド
ガーデンネックレス横浜が開催されている横浜のまち(6月13日まで)、特にローズウイーク開催中の横浜は、港の見える丘公園、山下公園などいたるところでバラが楽しめるまさに‘バラのまち横浜’でした。5月中旬、各所を巡ってたどりついた横浜市役所新庁舎1階のアトリウムでは、「ローズフェアwith趣味の園芸」(終了)の開催中で、番組の収録以外にも、ウエルカムローズガーデンなどの展示もあり、バラ一色の世界でした。
そこで、目に留まったのが最新品種とバラ盆栽の展示、そして、同時開催されていた2021F&Gジャパンセレクション&ジャパンフラワーセレクションです。ジャパンフラワーセレクションは、2006年に始まった日本で唯一の統一的な新品種コンテストで、2019年まで毎年、フラワー&ガーデンショー(F&G)の会場(2020年、2021年中止)で、クオリティの高い魅力的な品種をセレクトしてきました。今回は、2年ぶりの展示で、実際の花を直接見られることになり、審査に参加させていただいていたこともあるわたしも、大いに楽しみにしていました。
バラの新品種
まずは、バラの新品種です。一昨年秋からこの春に発売された品種で、その中のいくつかを紹介したいと思います。その前に‘バラ選び’は一般の人にとって難しい面もありますが、Piantia「バラの迷宮」の連載でおなじみの玉置一裕さんがポイントを教えてくれました。「栽培にかけられる手間や自身の家でどんな感じになるかイメージする、そして〝花と目が合う”お気に入りの品種を見つける」とのこと。その玉置さんのおススメ新品種を、会場に展示してあった花からご紹介しましょう。
‘アジュール’河本バラ園(日本)
白にピンクがかった花びらが詰まるロゼット咲きが特徴。弁先がツンと尖る繊細さや、甘く上品な香りが魅力。育てやすく、繰り返しよく咲く。名前はアジュール刺繍からつけられた。バラの貴公子こと、大野耕生さんも一押しの花。
‘パフューム ドレス’タンタウ(ドイツ)
ラベンダー色の大輪花で、ブルー系の香りが特徴。株はよく伸びて葉も美しい。名前はふんわりとしたドレスが豊かな香りをまとっているイメージから。
‘プロローグ’コルデス(ドイツ)
ライラック色でロマンティックな雰囲気のある花が、房状に数多く咲く。病気にも強く、2017年ADR受賞。物語のようにこの花からそれぞれのバラ物語が始まってほしとの願いからの命名。※ADR 共通ドイツバラ新品種試験。世界で最も厳しいバラの品種認証システム。
‘リナルド’河本バラ園(日本)
濃い紫のロゼット咲き。小さめの花が房で咲く。咲き進むとピンクを含んだ赤紫色からシックな紫へと変化する。樹形が広がらないので栽培しやすい。名前は中世の騎士名前から。
‘ローズ アントワネット’デルバール(フランス)
淡いピンクの大輪ロゼット咲き。花弁がやさしく重なり、オールドローズのような雰囲気がある。強い香りがあり、四季咲き性。耐病性もあり育てやすい。‘ローズ・ポンパドゥール」の枝変わり。育種家の木村卓功氏が発見して固定させた。
‘シャルール’ ロサ オリエンティス (日本)
色の濃いつぼみから開き、オレンジや黄色の花芯を見せて、さらに咲き進むと花色が変わる、千変万化を楽しめる四季咲き性中輪房咲きのバラ。名前はフランス語で熱や暖かさ、ぬくもりを意味する言葉から。
もちろん、他にもたくさんの魅力的な品種が世に出ていますから、できればカタログなどだけではなく、実際の花を見てから購入する苗、品種を決めるといいと思います。
そして、少し離れたところに飾られていたバラ盆栽、これぞ達人の技と言えるような、素晴らしい作品が展示されていました。栽培歴30年、数々のコンテストでの受賞歴を誇る達人、印藤澄之さんの作品です。2027年に横浜で開催が予定されている「横浜国際園芸博覧会」では、ぜひこの達人の技を世界に紹介してほしいと思います。
ジャパンフラワーセレクションから
さて、次は2021F&Gジャパンセレクション&ジャパンフラワーセレクションかです。厳選された出品花の中で、特にわたしが目を留めたのは、アジサイの品種の数々でした。また、クレマチスやペチュニアも複数の興味を引く品種が並んでいました。品種名と作出者だけですが、セレクトして上げていきます。このセレクトは受賞結果とは関係ありません。
アジサイ(ハイドランジア)
ペチュニア
クレマチス
いかがでしたか。横浜で出会った新品種たち、会場にはまだまだたくさんの新品種がありましたが、わたしのチョイスで一部をご紹介しました。新品種に出会うチャンスはまだまだ少ないかもしれませんが、花との出会いも一期一会、気に入った品種と出会ったら、ぜひ入手して育ててみてください。きっと、あなたの園芸世界がまた一つ広がることと思います。
(取材・文、写真/出澤清明)
出澤清明
園芸雑誌の元編集長。植物自由人、園芸普及家。長年関わってきた園芸や花の業界、植物の世界を、より多くの人に知って楽しんでもらいたいと思い、さまざまなイベントや花のあるところを訪れて、WEBサイトやSNSで発信している。