黄色い花が咲く早春の花木類
今、早春の花木が花ざかりになってきました。ウメやツバキ、カンザクラやカワヅザクラなどが目につきますが、これらの花木のほとんどが赤、紅から桃、白の花色です。しかし、この時期、美しい景色を見せてくれるのは、案外、黄色の花を咲かせる花木類かもしれません。そんな、黄色い花を咲かせる花木類を見ていきましょう。
ロウバイ 蝋梅 ロウバイ科ロウバイ属
中国原産の落葉花木です。関東の平地ではおおかた花が終わりましたが、早ければ1月半ばから花が楽しめるのがロウバイです。ロウバイは花の芯が茶褐色ですが、芯まで黄色いソシンロウバイが花つきもよく人気です。ロウのような質感のある花弁が黄色い花色を引き立てます。
マンサク 満作、万作 マンサク科マンサク属
日本に自生する落葉花木です。ひと目見てわかる細い紐状になる花弁が独特の姿を醸し出します。私は、秋の落葉ですべての葉が落ちずに、枯れた葉がついたままの木に花が咲いた景色が好きです。です。園芸品種には赤い花をつけるものがあります。
サンシュユ 山茱萸 ミズキ科ミズキ属
中国産の落葉小低木です。ロウバイ~マンサク~サンシュユとバトンが受け継がれて花が咲いていくような開花時期です。小さな花が集まって、花序をつくり、それが無数に枝に咲くというのは、なかなかの景色です。
トサミズキ 土佐水木、マンサク科トサミズキ属
日本原産で特に四国・高知県に多く分布します。花序となって咲く花は独特な姿で、鈴なりに咲く景色は春爛漫といった景色です。
ヒュウガミズキ 日向水木 マンサク科トサミズキ属
小さなベル型のような花が、枝いっぱいに咲きます。
落葉小低木で、庭木としての利用が結構あります。日本各地に自生しますが、宮崎県に自生するところからヒュウガとついたのでしょうか。
レンギョウ 連翹 モクセイ科レンギョウ属
3月になるとレンギョウの花が咲き出します。中国・朝鮮半島原産です。シナレンギョウやチョウセンレンギョウとして、レンギョウと区別することもありますが、一般にはこれらも含めてレンギョウと言っています。春、モモやサクラなどとの混植では、黄色い花が景色のポイントになって、桃や赤、白だけの景色に比べてより春らしい締まった景色になるように思います。
ナニワズ ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属
この時期、庭木としてジンチョウゲもよく見ますが、やはり花色は赤から白です。しかし、同じ科のナニワズは、落葉低木ですが、開花前に落ちた葉がふたたび出て、葉があって花が咲きます。緑の葉と黄色い花のコントラストはなかなかの見かけです。名前の由来は、長野県で使われる仲間の木オニシバリの方言名からという説を牧野富太郎が唱えているそうです。現代なら、キバナジンチョウゲとでも名づけたかもしれませんね。
ミツマタ 三椏 ジンチョウゲ科ミツマタ属
落葉低木で枝先が三つに分かれることからミツマタと呼ばれています。和紙の原料としても知られていて、 日本原産ではありませんが、すでに万葉の時代に歌われるほど古代から親しまれている花木です。ボンボリのような花が落葉中の枝にびっしりと咲く姿はなかなか個性的で、存在感があります。
ホソバテンジクメギ 細葉天竺目木 メギ科メギ属
早春の花木では珍しい常緑低木で、葉のついた状態で黄色い花が咲きます。葉の細さと存在感のある花の取り合わせがすてきです。
キブシ 木五倍子 キブシ科キブシ属
日本原産の落葉樹で固有種です。枝から伸びた葉腋に花がつき花序となりまず。そして花が鈴なりに咲く様子はちょっと変わった風景です。は早春の花木の中でも一番個性的かもしれません。
ヤマブキ 山吹 バラ科ヤマブキ属
早春というより、春本番になるとあちらこちらで咲くのがヤマブキです。日本各地に自生します。黄色というより山吹色の花が、しなやかに枝垂れる枝にたわわに咲く様子は、まさに春本番を感じさせてくれます。
ギンヨウアカシア マメ科アカシア属
ミモザと呼ばれ親しまれています。ただし、ミモザとは本来オジギソウを指す言葉だそうです。オーストラリア原産の常緑高木で、房状に黄色の花が咲きます。名前の通り、銀色を帯びる葉も美しい花木です。
いかがでしたか。見慣れた花木ばかりかもしれませんが、ウメやサクラ、ツバキなど主役級の花たちにも負けず劣らずの花ばかりだと思います。あるとき脇役で、あるときは主役でとマルチタレントでもある、黄色い花が咲く早春の花木たち。マイガーデンに一つ入れてもいいかもしれません
アンギョウカンザクラとヒュウガミズキ(埼玉県花と緑の振興センター)
✿黄色い花木が楽しめる主なおすすめスポット(首都圏)
東京都薬用植物園(東京都小平市)
赤塚植物園(東京都板橋区
埼玉県花と緑の新興センター(埼玉県川口市)
神代植物公園(東京都調布市)
小石川植物園(東京都文京区)
武蔵丘陵森林公園(埼玉県滑川町)
大柿花山(栃木県栃木市)
他多数
取材・構成 出澤清明
園芸雑誌の元編集長。植物自由人、園芸普及家。長年関わってきた園芸や花の業界、植物の世界を、より多くの人に知って楽しんでもらいたいと思い、さまざまなイベントや花のあるところを訪れて、WEBサイトやSNSで発信している。