バラをもっと深く知る㉗ 誘引しない「つるバラ」仕立て=「つるバラ」の木立仕立て
いま「つるバラ」と一言で言っても仕立て方はさまざま。
冬に伸びた枝を横に寝かせて誘というのは、従来のつるバラ仕立ての基本とされた方法です。
加えて最近発表のバラはみなシュラブで先端しか花が咲かない品種が多いので段階剪定でと言われます。
さらに品種によっては誘引せず、構造物で支えるだけで咲かせるような仕立て方もあります。
頭上からバラの花が降ってくるような景色をつくりたい~狭い庭を立体的に見せるたいときや、周囲やポイントへの「つるバラ」の利用は欠かせません。
そうでなくても枝が目線や背丈を超えるようになったら、どうしても「つるバラ」として仕立てたくなるものです。
「つるバラ」仕立てには大きく二つの方法があります。
1.横に寝かせて短枝を出す
従来からのつるバラ仕立て基本とされる方法です。まず秋までに長く伸びた枝はそのま
ま支柱に縛って立てておきます。そして枝を整えます(「整枝」)。12月になったら枝先のやわらかい部分を少し切り、古い枝から出た細い枝は2~3芽(人によっては5~6芽)を残して切ります。咲かなくなった古枝は元から。葉はすべて取り除きます。
次は「誘引」です。そしてフェンスなら斜めに枝を寝かせ枝と枝との感覚は拳一つくらいあけ、て結束バンドやシュロナワで8字にして枝を構造物に固定していきます。太い枝からはじめ、その上に細い枝をまんべんなく重ねていきます。
こうすると、翌春には構造物の上から下までビッシリと花が咲き、立体的な花の面ができあがります。
2.段階剪定で高さを変えて
ところがこのように誘引しても枝先にしか花が咲かない「つるバラ」が登場してきました。いわゆる「シュラブのつるバラ」と呼ばれ、長く伸びた枝を生かして、つる仕立てにしようとするものです。
このようなタイプは、「段差剪定(段差剪定、段切り)」という方法を用いて、高さを変えて剪定し、その枝を構造物に誘引して、株の下から上まで花を咲かせます。
シュラブのつるバラは従来の一季咲きのつるバラと違い、「返り咲き」または「四季咲き」。バラは伸ばした枝の先に花を咲かせるので、春にびっしり張り付けたり巻いたりした株はどうしても枝が暴れます。段差剪定は、株姿を暴れさせずにきれいに保ちながら花を観賞しやすい方法でもあります。
誘引しない「つるバラ」仕立て
中にはつるバラとして仕立てられ、また「つるバラ」と表示されているけれど、枝がしっかりしていて、大きめの自立した木立として仕立てられる品種があります。
1.枝が太く硬い品種
その一つが‘ルージュ ピエール ドゥ ロンサール’(メイアン)。
太い枝が出て50~60㎝伸び、中大輪・抱え咲きの芳香花を房咲きに咲かせます。
株元から横に広げての誘引は可能ですが、枝が硬いため巻き付けるような細かい誘引には向いていません。そこで大きめの木立仕立てとします。
剪定方法は、木立性の大輪品種と同じ。
冬剪定で伸びた枝の元から2~3芽を残してばっさりスパッと切ります。
夏剪定も同様で、秋にも立派な花が房咲きに。
枝が伸びるので「つるバラ」とされながらも、枝が硬く大きめの花を咲かせるほかの品種にも、この方法は有効でしょう。
株の上部を揃えて剪定することでなく、段差剪定で株の下の方からも花をつけることは可能です。
2.細い枝にも花を咲かせる品種
もう一つが‘シャトー ドゥ シュベルニー’(デルバール)。
細い枝先にも、株元からもさわやかなレモン色の芳香花を咲かせます。
冬剪定では枝先を10~20㎝カットするだけ。葉が丈夫なADR認証品種でもあります。
花数は少なくなるものの、夏剪定によって秋にも開花します。花色はしっとりとしたアプリコットのトーンに。
支柱は必ずする
こういった仕立て方、海外では時折見かけます。行っておいた方が良いのは、主幹をオベリスクやフェンス・支柱などに止めておくこと。そうしないと花が咲いたときの重みや風雨で幹ごと倒れることもあります。
つるバラの製枝・誘引作業はどうしても手間がかかります。
細かい作業をするために手袋をせず素手で行うと、どこかにトゲが刺さっていることも。
楽しんでやっているうちはイイのですが、「やらなければならない」となると、心理的負担も増します。高い所へ誘引するのに脚立に乗るのが不安という場合もあるでしょう。
最近の「つるバラ」はさまざまな仕立てに対応できるようになってきて、丈夫になってきました。「“つるバラ”だからフェンスやアーチに“誘引”しなければならない」とこだわらず、庭の花木として自由に楽しむことが大切です。
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玉置 一裕
バラの専門誌『New Roses』編集長。
『New Roses』の編集・執筆・アートディテクションを行うかたわら、ローズコーディネーターとしてバラ業界のコンサルティングやPRプランニング、関連イベントのコーディネート、バラの命名等に携わる。
また園芸・ガーデニング雑誌への執筆や講演を通じて、バラの「美」について語ると同時に、新しいバラの栽培法の研究も行っている。