【果樹栽培】梨の育て方とは?おいしい梨を栽培するコツや実を落さないポイントなどを紹介
秋に旬を迎える梨は、甘くてシャキシャキした食感からとても人気がある果物です。
好きな果物のランキングにも上位にランクインするほど子供から大人まで好きな人が多くいます。
梨の栽培は手間がかかるといわれていますが、市販で購入すると高いので自分で栽培できたらうれしいですよね。
今回は、梨の基本的な知識や育て方のポイントなどをご紹介します。
梨の基本的な知識
梨を栽培する前に梨の基本的な知識を覚えておきましょう。
梨の特徴
梨というと梨農家の方が棚で育てているイメージがある方も多いと思います。
棚で育てると大量に収穫でき、なおかつ高品質な梨に育てられるので梨農家の方は棚で栽培しています。
実は、梨は地植えでも鉢植えでも育てられる果物です。
地植えだと収穫までに3~4年、鉢植えだと2~3年ほどかかりますので、長い期間育ててやっと収穫できるころには愛着も湧いているはずです。
また、鉢植えのほうが地植えより早く収穫できるのは、根っこの範囲を制限されるためです。
早く収穫したい方は鉢植えで栽培するのをおすすめします。
梨の品種
梨にはたくさんの品種があり、日本各地でもいろいろな品種が栽培されています。
- 幸水:和梨の中でも生産量が多い品種で、人気も高いです。日持ちしないが、甘さとみずみずしい食感が魅力。丸い見た目とお尻のへこみが深いのが特徴です。
- 豊水:幸水の次の生産量が多い品種です。赤梨ともいい、甘みが強いが酸っぱさもあってやわらかい肉質と果汁が多いのが特徴で、350g~400gほど大きく生長します。
- 新甘泉(しんかんせん):鳥取県独自の品種で2008年に誕生しました。程よい硬さでシャキシャキした食感、糖度が高いので甘さが際立ちます。
- 南水(なんすい):長野県独自の品種です。350gくらいの中玉で、常温で1ヵ月以上保存可能です。甘めで酸っぱさは少なく、やわらかい肉質と果汁が豊富なのが特徴です。
- 彩玉(さいぎょく):豊水と新高を掛け合わせた品種で、埼玉県独自のものです。500gの大玉でやわらかい肉質とシャキシャキした食感が特徴です。
- にっこり:新高と豊水を掛け合わせた栃木県独自の品種です。酸っぱさは少なくて甘く、850gくらいの大玉に育ちます。冷蔵庫で3~4か月保存可能です。
- ラ・フランス:フランスが原産国の西洋梨です。大きさは200~250gほどで、やわらかい肉質と果汁が豊富なのが特徴で、山形県で主に栽培されています。
- ル・レクチェ:明治時代にフランスから新潟県に入ってきた西洋梨です。大きさは300gくらいあって、香り高い品種です。別名「西洋梨の貴婦人」ともいいます。
梨の品種を選ぶポイント
数ある梨の品種の多くは、「自家不和合性」と呼ばれる性質を持っています。
自家不和合性とは、1つの品種では受粉できないため実がならない性質を指し、実をつけるためにほかの相性のよい品種とともに育てる必要があります。
受粉させる2つの品種によっては、実がつかない場合もあるので、品種選びも大切です。
おすすめの梨の品種
育てたい品種にこだわりがないのであれば、「幸水」と「豊水」がおすすめです。梨は西洋梨と和梨に大きく分類され、湿気が多い日本では和梨が育てるのに適しているのです。
幸水と豊水はお互いの花粉で受粉する相性のよい品種で、どちらも梨の品種の中で人気があります。また、収穫の時期も幸水が終わったころに豊水の収穫の時期を向かえるので、長く梨を楽しめて収穫のタイミングもベストといえます。
しかし、2つの品種を栽培するとなると、場所をある程度確保しなければいけません。そのような方には、幸水と豊水を接ぎ木にした苗がおすすめです。
相性の悪い品種
下記が相性の悪い品種とされています。
- 幸水と新水
- 新高と豊水
- 菊水と二十世紀
- 新興と新星
上記を一緒に栽培してしまうと、実がならない可能性が高いので注意しましょう。
梨の基本的な育て方
梨の栽培は作業工程が多いとされていますので、梨を育てる前にしっかり育て方を理解しておきましょう。
梨の植えつけ時期
梨の植えつけは11~3月の葉っぱが落ちる休眠期におこないます。
梨の栽培には日光が欠かせないので、庭に植える場所、鉢植えを置く場所は日当たりの良い場所がベストです。
植えつけ方法
【地植え】
- 石灰、堆肥、有機肥料を適量混ぜて、埋め戻す
- 深さと直径が50㎝くらいの穴を掘る
- 有機質肥料(土を豊かにする肥料)を土に混ぜ込む
- 苗の根を広げて浅めに植えつける
- 接ぎ木を50㎝ほど残して切る
- 水をたっぷり与える
【鉢植え】
浅めの鉢(7~10号で直径21~30㎝くらい)に苗1本が目安になります。
- 鉢底に鉢底石を敷き詰める
- 緩効性肥料(プランティア花と野菜と果実の肥料)を混ぜた土を鉢の半分くらいまで入れる(花木用の土7割と鹿沼土3割を混ぜる、もしくは野菜の培養土でも可能)
- 苗の根を広げて鉢の中心に置き、接ぎ木されている部分に土が被らないように土を上から入れる
- 接ぎ木の部分から30㎝上のところを切り取る
- 水をたっぷり与える
剪定の時期とポイント
梨の剪定は葉っぱが枯れる12~2月ごろに行います。
植えつけてからの2年間は梨の木の土台作りに専念することが求められます。
枝が混みあっているところや生長して伸びすぎた枝の先を切り落としていきます。
病気を予防するために、切り落とした枝の切り口に保護剤を塗布しておきましょう。
また、植えつけて1年目の梨の木には、美味しい実はならないので実ができても切り落とします。
1年目の若い枝の先を切っておくと、翌年に枝がたくさん伸びてきて、良い芽もたくさんつきます。
こうやってどんどん枝を生長させて良い芽をつけていくことで、美味しい梨の実が実ります。
手間はかかりますが剪定は大切な作業なのです。
人工授粉
梨は人工授粉させた方が実りやすい果物です。風で飛んだ花粉が自然に受粉したり、虫が花粉を運んで受粉させてくれたりすることもありますが、うまく受粉しない場合もあります。
また、虫が少ない都会の方ではそもそも受粉できない可能性もありますので、人の手で授粉させた方が確実です。
【人工授粉の手順】
雄しべの先にある葯(花粉の袋)が開いたら人工授粉を行います。花をつんで、別の品種の雄しべにこすりつけ、数日たったらまた同じ作業を繰り返し行います。晴れた日の朝だと作業しやすいです。
梨の摘果
摘果のベストタイミングは5月頃です。
甘くておいしい梨に育てるために摘果は重要なため、適期を見極めてしっかり摘果を行うことが大切です。摘果する時期が遅れたり、摘果しないままにしたりすると、栄養が分散してしまって甘さが少ない小さい梨に育ってしまいますので注意しましょう。
【摘果の手順】
摘果は2回にわけて行います。
1回目のタイミングは、梨の実がビー玉ほどのサイズになってきた頃です。花房1つに実1つが目安なので、形のおかしな実や小さい実は手で摘み取り、最も大きくてきれいになっている実を残します。
2回目は、1回目の摘果が終了して10〜20日後くらい経って実がピンポン玉くらいに生長した頃に行います。葉が25枚くらいの場所に実が1つあるのが理想です。摘果の後に袋掛けをするので、袋掛けしやすいように考えながら形の良い実を残して残りは切り落としましょう。
鉢植えで育てる場合は、1株に2~3個を目安にして実を選抜していきます。木の高さは鉢の約3倍に抑えるようにします。
袋掛け
梨の袋掛けはできるだけ早めに行うようにしましょう。梨の皮の傷や病害虫対策にも効果的です。
2回目の摘果が終わったら、早めに薬剤を散布して、乾いたら袋掛けをしていきます。このとき、虫が袋の中に入らないように注意して、袋の口をしっかり止めて雨が入るのを防ぐことが大切です。
梨を大量に栽培する方は、袋掛けが手間で農薬を増やすとその分費用がかかります。自分の庭で少しの梨を育てる場合は、袋掛けしたほうが費用も抑えられて効率的といえます。
【袋掛けに使用する袋】
水をはじきやすい袋を使用しましょう。袋ならなんでもいいわけではなく、梨専用の果樹袋をネットなどで事前に購入しておくと安心です。説明書も付いているのでその通りに袋掛けを行うと、間違いありません。
梨を育てる肥料と水やり
梨を育てる時の肥料と水やりのポイントをご紹介します。
肥料
梨の肥料をまく時期は、2月、5月、10月の3回です。
梨の木の育ち具合や地域によって若干異なる場合もありますが、鉢植えと庭植えともおおよそこのくらいの時期に行うのが一般的とされています。
まず2月にゆっくりと効いていく有機質肥料を元肥としてまきます。
おすすめは、堆肥と肥料成分がひとつになった『土を豊かにする肥料』です。
『土を豊かにする肥料』は、肥料効果と同時に土の中の微生物の働きをうながします。
次に5月に追肥で化成肥料をまいて果実肥大を促進します。追肥にはバラまくだけで肥料効果が約2~3カ月間持続する『プランティア花と野菜と果実の肥料』がおすすめです。
そして10月になったらお礼肥として『土を豊かにする肥料』を与えて、栄養を失った木を回復させます。お礼肥を与えることで、来年に向けて木が栄養を蓄えてくれるので、必ず行いましょう。
鉢植えの場合は、植えつけの際に緩効性肥料『プランティア花と野菜と果実の肥料』をまいて、2~3ヵ月間隔で追肥を与えます。
水やり
【鉢植えの場合】
鉢の土が乾いて白くなってきたら水やりしましょう。
水の量は鉢の底から水が流れてくるくらいが目安です。ただし、水を与えすぎないように注意することが大切です。与えすぎると、根腐れを起こす可能性がありますので、必ず土が乾いたのを確認してから与えるようにしましょう。
【地植えの場合】
地植えであれば、雨で水やりは完了するので自分で行う必要はほぼありません。
土の中は適度に保水されており、梨の根は土の中で広がって水を吸収しています。
しかし、暑い夏に晴天が続いて土が乾いてしまう場合もあるため、雨が降らない日が続き土の状態を見て乾いてそうだったら水やりをしてください。
梨の収穫時期
梨の品種や地域などで収穫時期は異なりますが、緑がかった梨が色づいてきたら収穫の時期です。
収穫するときは、実を持って上に持ち上げると簡単に取れます。残った軸は先に切り落としておくと、ほかの梨を傷つける恐れはありません。
収穫した梨は、長持ちさせるために新聞紙などに包んで冷蔵庫の野菜室で保存すると、より長持ちします。
梨の病害虫に注意する
梨は病害虫に弱い果実なので、対策することが重要になります。
主な病害虫
- 赤星病
葉っぱや果実に赤褐色の斑点が現れる病気です。カイヅカイブキといったビャクシン類の植物に寄生しているので、この植物がある近くには梨を植えつけないようにしましょう。西洋梨にはほとんど現れません。
- 黒星病
葉、果実に黒い斑点が現れる病気で、放置すると枯れてしまい実や葉っぱが落ちていきます。始めは黒いススが現れて、次第に葉や果実に拡大していき、果実が割れてしまうこともあります。
- 害虫
梨につく害虫はシンクイムシ類、アブラムシ類、カイガラムシ類、カメムシなどがいます。これらが付くと、葉を食べられたり、樹液を吸われたりするので対策が必要になります。
上記のほかにも、黒斑病(木全体に黒い斑点が発生)、銅枯病(木の枝や幹が枯れる)、炭疽病(炭みたいな斑点が葉に現れる)、輪紋病(実に輪のような模様が発生する)、紋羽病(根がカビて腐ってしまう)といった病気があります。
病害虫対策
湿気が多い環境だと病気になりやすい傾向があります。
そのため、湿気がたまらないように剪定をしっかり行って風通しを良くし、日当たりを良くすることが大切です。
赤星病や黒星病が発生する場合がありますので、4月から殺菌剤を定期的に散布して病気を予防しましょう。
また、害虫がついている場合は見つけ次第すぐに適用登録のある殺虫剤をまいて駆除してください。
梨を育てるときのトラブル
梨を育てるときに起こりやすいトラブルとその対処法をご紹介します。
梨の実がならない
梨の実がならない原因のひとつに日当たりの悪さが挙げられます。
日光を当てないと花芽もつきにくくなるので、庭植えの場合は日影を作らないようにしっかり剪定することが大切です。
生長した太い枝は切り落として若い枝が生えてくるようにすることも必要です。
また、土に有機物が足りない場合も実がならない原因になるので、堆肥や腐葉土を木の周りにまいて土の質をよくしましょう。
相性の悪い品種同士の可能性
はじめにお話ししましたが、相性の悪い品種同士で授粉させても実がつきません。
梨を育てる前に相性をしっかり確認してよい組み合わせの品種同士を選びましょう。1種類だけで梨を育てても実はならないのでご注意ください。
実が大きくならない
実が多くなりすぎていることが原因の可能性があります。
実をたくさんつけたいと考える方も多いですが、実が多くなると栄養が梨の実全体に行き渡らなくなって、小さい実ばかりができてしまいます。
これを防ぐには、上記でもご紹介した摘果が重要になります。大きい実がなるように適度に形の悪い実などを切り取ってしまいましょう。
花が咲かない
花が咲かないのは、剪定のしすぎや過剰に肥料を与えるなどが原因のひとつに考えられます。
過剰な肥料や剪定をしすぎると、枝や葉が生長するために栄養を持っていかれるので、花が咲きにくくなるのです。
剪定は日当たりが悪くなっている部分を軽く間引き、追肥も与えすぎに注意しながら適量を与えることが大切です。土がいい状態であれば、1~2年くらい肥料を与えない場合もあります。
また、若い木の水はけが悪いときは、根元60~70㎝くらい掘って根っこの太い部分を2~3本ほど切ると水はけがよくなります。
梨の増やし方
梨を増やすには、接ぎ木が必要です。接ぎ木とは、土台となる台木に違う品種の木の枝である穂木を繋げる作業を指します。
接ぎ木は3~4月頃が適しているとされていますが、いつの時期でも行える作業になっています。
台木に切り込みを入れて、もう1本の品種の枝の皮を削って差し込みます。そして、ずれないようにしっかり接ぎ木用のテープで留めていき、その上からポリ袋をかぶせて乾燥させないようにしましょう。
接ぎ木すると、速くて3年、遅くて5年ほどで収穫できるようになります。大きな実がなるようにしっかり育てていくことが大切です。
梨の植えかえ
梨の植えかえは、11月~3月頃が適しています。
庭植えなら植えてから年数が経ち梨の実の収穫量が減少してきたら植えかえに適した時期といえます。
鉢植えの場合は、2~3年ごとに1回は植えかえることが必要になります。生長しすぎると根詰まりを起こしますので、適期になったら古い根を3分の1くらい切り落とし、植えかえる前の鉢より大きな鉢に新しい土とともに植えかえます。
植えかえすることで通気も良くなります。
まとめ
梨の基本的な知識や梨の栽培に関わる作業をご紹介しました。
梨は収穫できるまで3~4年ほどかかるので、長い期間手間のかかる作業を行わなければいけません。
しかし、ひとつひとつの工程を適期にしっかり行うことで、数年後には大きくて甘い梨が収穫できます。
梨を育てる前に今回ご紹介した知識を頭に入れてから、梨栽培に挑戦するとより上手に育てられるはずです。