【果樹栽培】柿(カキ)の育て方とは?栽培に欠かせない作業や育て方の基礎知識などを紹介
柿は秋の味覚のひとつで、昔から育てられてきた果物です。
シャリシャリしてみずみずしい食感の柿を好きな方も多くいらっしゃいます。
そんな柿は育てるポイントをおさえれば、ご自宅の庭でも栽培できるのをご存じですか。庭で柿がなれば、秋がくるのがもっと楽しみになるはずです。
今回は、柿を育てる前の基礎知識や柿を育てる上で欠かせない作業をご紹介します。
柿(カキ)の育て方の基礎知識
柿は日本の気候に適した果物で育てやすく、あまり手がかからないといわれています。柿を育てる前に基本的な知識を身につけましょう。
柿(カキ)とは?
柿はカキノキ科カキノキ属で花や紅葉、新緑がきれいな木ですが、一年を待たずに葉が枯れてしまうのが特徴です。
東アジアの温帯から東南アジアの熱帯地域が原産国とされ、中国から柿の木が伝わり日本でも盛んに栽培されるようになりました。
柿は放置しても育ってくれる手間のかからない木で、2~5mくらいまで生長します。庭で育てるのであまり高くしたくない場合は、しっかり剪定すれば木の高さや形を管理できます。
柿は俳句の秋の季語として使用されています。有名なところでは、正岡子規の「柿くへば金がなるなり法隆寺」が知られています。
また「柿が赤くなれば医者が青くなる」ということわざにも使用されています。
柿(カキ)は栄養も豊富
柿は栄養が豊富なのも特徴です。ビタミンAやビタミンC、カリウム、ペクチン、タンニン、食物繊維といったさまざまな成分が含まれています。
ビタミンCはいちごと同じくらい含まれており、柿1つで1日に必要なビタミンCの量を補えます。
また、柿は利尿作用のあるカリウムの働きとビタミンCとタンニンの働きにより、血液の中のアルコールを体外に排出するので、二日酔いにも効くといわれています。
栄養豊富な柿ですが、60キロカロリーと低カロリーなのでダイエット中でも気にせずに食べられる果物といえます。
柿(カキ)の種類と品種
柿は甘柿と渋柿に大きく分類されます。
甘柿にするか渋柿にするかを決めてから柿栽培を始めるとスムーズです。
【甘柿】
甘柿で代表される柿には、日本各地で栽培されている富有柿、歯ごたえが特徴的な大玉の太柿、果汁が多く含まれる花御所、甘くておいしいすなみなどさまざまな種類があります。
【渋柿】
渋柿で代表される柿は、面長な形で実がなるのが速い大西城、まろやかできめ細かい果実の幸陽、病害虫に強い愛宕などがあります。渋柿にはタンニンと呼ばれる成分が含まれており、水に溶ける可溶性か水に溶けない不溶性かで渋さが決まります。
また柿といえば、庭先で干し柿を作るお家もよく見かける方もいるでしょう。干し柿を作るなら、たくさん実がなる市田柿や種があまりつかなくてカビにくい品種の夢西城が適しています。
柿(カキ)を育てるのに適した環境
柿の栽培には日当たりや水はけがいい場所を選びましょう。
柿は育てやすいとお話しましたが、環境が悪いと育つものも育たない可能性があります。
日当たりのよい場所で、なおかつ乾燥しないような土づくりをすることが求められますので、粘土質で腐植質が多くある場所がおすすめです。
水はけや水持ちが良くなるように土を作って、おいしい柿を育てましょう。
柿(カキ)の育て方
柿を栽培する上で必要な作業をご紹介します。
おいしい柿を育てるために大切な知識なので育てる前によく理解しておくと安心です。
植えつけ
柿の植えつけは、休眠期の12~2月に行います。
休眠期とは柿の葉が落ちて木の活動が休止する時期のことで、地域により時期がずれます。
暖かい地域は11月中旬~12月下旬、寒い地域では2月~3月下旬ごろに植えつけるのが一般的です。
【植えつけの手順】
- 30~50㎝の穴をスコップなどで掘ります。
- 腐葉土や牛ふんなどの堆肥、有機質肥料、苦土石灰を適量混ぜておきます。
『土を豊かにする肥料』は、堆肥と肥料成分がペレット状でひとつになっていますのでおすすめです。
掘った穴にバケツ1杯くらいの水をいれて、水が引いたら肥料(土を豊かにする肥料)を混ぜた土を半分ほど埋め戻します。 - 柿の苗の根を広げて中央におき、深植えにならないように気をつけながら土を埋め戻します。接ぎ木されている部分に土をかぶせないようにしましょう。
- 支柱を立ててしっかり結んでおきます。
- 最後にたっぷり水を与えます。
【鉢植えの場合】
7号以上の鉢植えに1株を目安に、培養土で植えつけましょう。柿の木の高さは鉢植えの3倍くらいだと手入れしやすくなります。植えつけの際に緩効性肥料『プランティア花と野菜と果実の肥料』を土に混ぜ込みます。』
肥料
柿の肥料は、12月~1月、7月上旬、収穫後に与えることが一般的です。
庭で柿を栽培する場合、化成肥料と有機物の堆肥などを適切に与える方がいいとされています。
肥料過多になると、翌年に実がつきにくくなる「隔年結果」という状態を引き起こします場合があります。
元肥には、堆肥と肥料成分がペレット状でひとつになっている『土を豊かにする肥料』がおすすめです。』
追肥には、緩効性肥料『Plantia (プランティア)花と野菜と果実の肥料』を施しましょう。『Plantia (プランティア)花と野菜と果実の肥料』は、元肥・追肥に使用することができ、植物の生育に必要な成分をバランス良く配合した有機入り緩効性肥料です。
柿栽培では、7月中旬~8月中旬の暑い時期に実っている果実の数の調整、水やり、肥料を適量与えることが大切です。
この時期に柿の木の中で細胞の分化が起き、来年の花芽を作る準備をしているので、調整がうまくいかないと隔年結果が起こってしまうので注意が必要です。
ただ、実が全くならない、落果が目立つなら肥料を控えて様子を見ましょう。
水やり
【地植えの水やり】
地植えの場合は、あまり水やりを頻繁にする必要はありません。
夏の暑い時期や雨が全然降らなくて土が乾いているときのみ与えるようにします。
土の中では地下から水が上がってきて、保水されていますので、水の与えすぎは根腐れの原因になってしまいます。
また、真夏は気温が下がってきた朝晩に水を与え、お昼の暑い時間帯に水を与えると水が温まって柿の木が弱りますのでご注意ください。
【鉢植えの水やり】
鉢植えの場合は、生長して大きくなる5月~9月に一日2回しっかり水やりします。
このほかの時期は鉢植えの土が乾いたらたっぷり水やりしましょう。
夏の暑い時期は特に乾きやすくなるので、忘れないで与えることが大切です。地植えと同様に、真夏の暑い時間帯に水やりすると、温まった水で柿の木が弱りますので、気温が下がってきたら行うようにすることがポイントです。
水が不足すると、葉や若い枝が下がってきますので、鉢植えの底から水が流れるくらい与えましょう。
木の活動が休止する冬でも土が乾燥していたら水を与え、枯らさないようにする必要があります。
剪定の時期
【剪定の時期】
剪定の時期は葉が枯れて落ちる12月~2月と葉が茂ってくる7~8月が適期です。
枝が混みあっているところを間引く、古くなった枝などを切り落として風通しをよくし、日当たりを良くするために、生長しすぎた枝なども切り落として木のバランスを整えます。
植えつけてからしばらくは手入れしやすいように開心自然形に仕立てておき、4年目ごろからバランスの悪い枝は切り落とします。
【剪定の目的とは?】
新しく伸びた枝の先に花芽がつくので、切り落とす枝を間違えないように気をつけましょう。柿の木の形は、枝が横に伸びた横長がよいといわれています。木を剪定せずにいると、どんどん縦長の形になるので、木の中で最も太い主幹を切り落とし、横長の形にしていきます。
高さを抑えることで、農薬をまく時間が短縮できる、収穫が容易になるといったメリットがあります。
また、何度もいいますが柿の木を育てるには日光が必要不可欠のため、枝の密度が高いと日光が中まで届かなくなり、おいしい柿の実が出来ない可能性があります。
枝を適切に剪定して日当たりの良さを維持しておけば、おいしい柿が実るはずです。
人工授粉
柿は虫や風で自然に受粉する果物です。
ただ、品種により人工授粉した方が確実に結実するものもありますので、人工授粉の必要性を確認してから購入することが大切です。
また、実があまりならなかった場合も、次の年は人工授粉するとよく実がなるでしょう。
【受粉の必要がない品種】
- 平核無
- 刀根早生
- 次郎 など
【人工授粉の手順】
- 雄花と花びらを摘み取り、雄しべを出す
- ハケなどで雄花の花粉を雌しべにこすりつける
摘蕾・摘果
摘蕾とは柿の花が咲く前に蕾を摘む作業、摘果とは果実が出来過ぎるのを防ぐために果実の間引きのことです。
柿の木は新しい枝に5~7個の蕾がなりますので、新しい枝1本で蕾が1つになるように摘んでいきます。
枝の中央にある蕾、下を向いている蕾、虫がついていない蕾などを残し、葉が5枚に満たない枝の蕾は全部摘み取ります。
摘蕾が終わって実がついてきたらできるだけ早く摘果を行います。摘果が遅くなると、おいしい柿がならない可能性がありますので注意しましょう。
葉が15~20枚あたり果実1つになるように摘果していくことがポイントで、来年の花芽もできやすくなります。
【摘果・摘果の重要性】
摘蕾・摘果は大きくて甘い柿をならせるために重要な作業です。
柿は手入れしないと多くの実がなってしまい、摘果せずにいることで全体に栄養が行き渡らなくなった小ぶりの柿ばかりできてしまいます。
大きい柿に育てるために、摘蕾・摘果を行うことが重要になるのです。
また、来年の実つきをよくするためにも大切な作業なのでしっかり行いましょう。
柿(カキ)の病害虫対策
柿は、うどんこ病、炭疽病、落葉病、黒星病などの病気、カキクダアザミウマ、フジコナカイガラムシ、イラガなどの害虫に気をつけなければいけません。
たとえば葉に斑点ができるのが特徴の落葉病では、かかると早めに落葉してしまい、甘さのない柔らかい柿になってしまいます。
カメムシやアザミウマ類といった害虫も柿の質低下につながるため、適切な対策を講じることが大切です。
病害虫は、高温多湿、乾燥、低温多雨でつきやすくなりますが、柿の品種によってもつきやすくなる場合があります。
栽培している柿にどのような病害虫がついたのか適切に判断して、薬剤を活用しましょう。
【薬剤散布の時期】
薬剤散布の時期は、害虫が多く飛来し病害虫がつきやすくなる6月ごろと8月下旬ごろにまくのが一般的とされています。柿の実への被害を減らすためにも、この時期の薬剤散布は必ず行います。
柿(カキ)を収穫する時期
柿の収穫時期は、9月下旬~11月ごろです。柿には早生、中生、晩生などさまざまな品種があり、収穫の適期は各品種で違ってきますので、柿の皮の色や重さなどから収穫できるかどうか判断します。
たとえば、さえふじ、次郎、富有、蜂屋は橙色~朱色が熟したサインになり収穫でき、早秋は朱~紅色、平核無、刀根早生、太秋は黄色~橙色で収穫するとおいしい柿が味わえます。
熟す前に収穫した柿はあまりおいしさを感じないので、成熟してから収穫するようにしてください。収穫の適した時期になったら、はさみでへたの上の部分を切り取ると簡単に収穫できます。
【柿の保存方法】
柿のへたに濡らしたキッチンペーパーやティッシュをかぶせて、ラップでしっかり包みます。
何個かまとめて保存袋に入れて、野菜室に保管しましょう。また冷凍庫の場合、ラップに包んだ柿を保存袋に入れると、3ヵ月くらい持ちます。
食べるときは、少し解凍してシャリシャリしたアイスのような食感の柿を楽しめます。
柿は常温で保存した場合、5日くらいで熟れてしまい柔らかくなります。冷蔵庫や冷凍庫で保存することで、長く柿を味わえますのでぜひお試しください。
柿(カキ)の実が落ちる原因
せっかく手をかけて育てた柿の実が落ちてしまわないように、落ちる原因を理解しておきましょう。
肥料が多すぎる
植物なら何にでもいえますが、肥料を与えすぎると木や葉が大きくなろうとする方に栄養を持っていかれます。
木に栄養を持っていかれると、花や実に栄養が行き渡らなくなり、実が落ちてしまう恐れがあります。
肥料を必要以上に与えないように気をつけたり、柿の木の近くに畑や花壇があると、そちらの肥料を吸収したりすることがありますので、ご注意ください。
日当たりが悪い
雨が多くなる梅雨の時期は、日光不足に陥りやすく、柿が生理落果することが多くなります。
また、枝が必要以上に生い茂ると、日当たりが悪くなって実が落ちる原因になりますので、剪定をしっかり行うことが必要です。
病害虫によるもの
カキノヘタムシガ(通称ヘタムシ)やカメムシなどの害虫、9月下旬~10月上旬ごろに実に黒い斑点ができる炭疽病などで柿の実が落果する場合があります。
これらを防除するために、農薬散布は適期に必ず行いましょう。庭で栽培する方は、6月下旬ごろに摘果することで落果対策になるでしょう。
柿(カキ)の植えかえ
【地植え】
庭の土にしっかり柿の木の根が根付き、何も問題なく生長しているならそのままで問題ありません。
【鉢植え】
鉢植えで柿を栽培している方は、2~3年ごとに植えかえする必要があります。
植えかえないでそのままにすると、根詰まりしてしまいます。植えかえする前に、鉢の中の土を乾燥させたいので水やりを控えてもらい、乾燥して取り出しやすくなったら柿の木を抜きます。
大きくなり過ぎた根っこは切り取り、根鉢をほぐしながら徐々に崩していきましょう。
また同じ鉢で栽培しても問題ありませんが、もう少し大きく育てたいなら植えかえる前の鉢より大きな鉢に植えかえます。
渋抜きの方法
渋抜きの方法は下記のようにいろいろありますので、やりやすい方法でお試しください。
【焼酎で渋抜きする】
- 渋柿についた汚れを拭く
- 渋柿1個あたり焼酎大さじ3をボウルに入れて、柿のへたを下にして軽くくぐらせる
- ポリ袋などに入れて閉じておき、小さい柿なら1週間、大きい柿なら2週間ほどそのままにしておく
※焼酎の代わりにアルコール度数が30度以上のお酒でも渋抜き可能です。
【冷凍で渋抜きする】
- 渋柿を洗い、皮をむく
- ラップで包んで3日くらい冷凍庫に入れる
※食べやすい大きさに切ってから冷凍すると、食べるのが楽になります。食べるときは、冷蔵庫にいれて1日かけてゆっくり解凍しましょう
【ドライアイスで渋抜きする】
- ドライアイスと柿を袋に入れて口をしっかり閉じる
- 4日ほど置く
【木になったまま渋抜きする】
8月下旬以降に、ポリ袋に固形アルコールを入れて包みます。このとき、へたは袋の中に入れないようにします。
2日後に袋から固形アルコールを出して収穫時期を迎えたら収穫すると、渋柿だったのが甘柿になっているので驚きです。
まとめ
今回は柿の基礎的な知識から育て方のポイント、渋抜きの仕方などをご紹介しました。
柿は手間のかからない果物といわれていますが、剪定や摘蕾・摘果などをしっかり行って手をかけて育てることで大きくて甘い柿が実ります。
また、もっと手軽に栽培したい方は鉢植えで柿を育てるのがおすすめです。
はじめて柿を栽培する方は、庭で柿を育てるのは難易度が高そうと感じるかもしれません。
実際育ててみると、意外に初めてでも簡単に出来ます。日本の気候でも育てやすい柿を庭で育てれば、秋がくるのが楽しみになるはずです。