更新日:2024.01.15
【苔の育て方】基本のお手入れ方法やパターン別の植えつけ方、増やし方
「苔を活かした庭園の雰囲気が好き」「苔むした森に行くと癒される」など、苔がお好きな方は、ご自宅で苔栽培にチャレンジしてみてはいかがですか。
苔玉や苔テラリウム、苔鉢など、苔栽培には幅広い楽しみ方があります。ぜひお好きな方法で苔を育ててみましょう。
今回は、苔栽培の楽しみ方や、基本的な育て方のポイント、植え方・増やし方など、さまざまな情報をご紹介します。
苔の特徴や主な種類
苔には「維管束がない」「根がない」など、一般的な草花とは異なる特徴を持ちます。まずは苔の特徴や主な種類などについてチェックしてみましょう。
苔の特徴
一般的にガーデニングで育てられる草花と苔では、さまざまな点が異なります。
苔は基本的に「コケ植物」のことを指しますが、コケ植物には維管束がありません。維管束とは植物が持つ組織のひとつで、水や養分が通る管のことです。
苔は葉の表面からそのまま水分や養分を取り込みます。そのため、湿気が多い環境では水分を多く取り込み、乾燥した環境では水分が不足しやすい点に留意が必要です。
草花のような根がないことも苔の特徴のひとつです。「仮根」と呼ばれる部分はありますが、水や養分を吸収することはありません。
仮根は、風で飛ばされたり、水で流されたりしないように苔を固定するための役割を果たします。
また、花を咲かせて増えるのではなく、胞子で増える点も苔の大きな特徴です。時期が来ると胞子体をつくり、胞子を飛散させて増えていきます。
苔の主な種類
コケ植物はセン類(蘚類)・タイ類(苔類)・ツノゴケ類などに大きく分けることができます。
世界各地で20,000近くの種類が見つかっており、それぞれ特徴が異なります。お気に入りの品種を探して育ててみましょう。
こちらでは、園芸におすすめの苔をいくつかご紹介します。
ハイゴケ
ハイゴケは園芸でよく育てられている苔のひとつです。茎から太い葉を出している形が特徴です。
這うように生長するため、鉢土を覆いたいときや、お庭を広く覆いたいときなどにも向いています。
シノブゴケ
ハイゴケと同じく這うように伸びることが特徴の苔です。湿った環境を好み、乾燥を苦手とします。茎は枝分かれして、細めの葉をつけます。
ヒノキゴケ
茎を上のほうに伸ばし、繊細な葉をたくさんつける苔です。ふさふさとした形から「イタチノシッポ」と呼ばれることもあります。
触り心地が柔らかいことも特徴のひとつ。乾燥に弱いため、テラリウムで楽しむことに向いています。
苔栽培の楽しみ方
苔はさまざまな育て方で楽しむことができます。こちらでは、苔栽培の主な楽しみ方をご紹介します。
苔玉をつくる
苔玉とは植物の根の部分を土で丸く覆い、その上から苔を巻きつけたものです。個性的でかわいらしい見た目から、インテリアとして飾って楽しむ方も多いようです。
苔玉を育てたい場合は園芸店や雑貨屋などで購入するほか、ご自分でつくることもできます。ご自宅で育てている植物を使って苔玉にアレンジすることも可能です。
苔玉には幅広い植物を使うことができます。観葉植物やシダ植物などが合わせやすいでしょう。
テラリウムをつくる
テラリウムとは、透明なガラス容器の中で動植物を育てることです。
苔やシダ、多肉植物などのテラリウムは人気で、ガラス容器の中に自分だけの小さな世界をつくって楽しむ人も少なくありません。
ガラス容器をデスクや棚などに飾る方法や、好きな場所にハンギングする方法などがあります。
苔鉢(苔盆栽)をつくる
苔を植木鉢に植えて、盆栽として育てる楽しみ方もおすすめです。
鉢土をすべて覆うように苔を育てることもできますが、砂利や小さな木、石などを配置して日本庭園風の鉢をつくることもできます。
盆栽の株元に植える
盆栽と苔の組み合わせは定番ともいえるものです。既に育てている盆栽がある場合は、株元に苔を植えることで、また違った風情を味わえるようになるでしょう。
苔庭をつくる
苔庭とは、文字通り苔をメインにつくられている庭を指します。庭全体に苔を植え、苔の絨毯をつくりだしていることもあれば、石灯籠や飛び石などを組み合わせていることもあります。
全国各地に苔を活かした日本庭園があるため、ぜひお近くの苔庭を探して観賞してみましょう。
【苔の育て方】基本的なお手入れのポイント
苔栽培を始めたいと思っても、どういう風にお世話をすれば良いか、いまいちイメージがわかないという方も多いかもしれません。
こちらでは、苔栽培における基本のお手入れ方法をご紹介します。
苔の好む栽培環境
苔は薄暗い日陰の森林などに生えているイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。苔の種類によっては、日なたを好むものもあれば日陰を好むものもあります。
たとえば、スナゴケやスギゴケなどは日なたを好むため、半日以上は日の当たる場所に植えることがおすすめです。ハイゴケは半日陰、シノブゴケはやや暗めの日陰が良いでしょう。
ヒノキゴケは日陰で育てることに向いています。栽培する苔の性質を調べておき、適切な環境を整えてあげましょう。
水やり
苔の水やり頻度は、育て方や環境、苔の品種など、さまざまな条件によって異なります。苔玉の場合は2日~3日に1回は水をあげるのが目安です。
蓋つきの容器で苔テラリウムを育てている場合は湿度を保てるため、2週間~3週間に1回の水やりで問題ないでしょう。
苔庭などは降雨に任せますが、乾燥しやすい夏の時期は朝夕に散水することもあります。小さな鉢の苔盆栽は乾きやすいため、毎日水やりが必要な場合があります。
このように、苔にどの程度の水をあげれば良いかは条件次第で大きく変わってきます。育てている苔の状態をこまめに見ながら、乾燥しすぎないように水やり頻度を調整しましょう。
肥料
苔はそれほど多くの肥料を必要としない植物です。過剰に肥料を施してしまうと、変色や傷みの原因になることもあるため必ず適量を与えるようにしましょう。
苔玉や盆栽などは、植わっている植物の生長を助けるために施肥が必要になります。その場合は薄めた液体肥料を施すと良いでしょう。
室内で管理している苔テラリウムなども、元気がなくなった場合は希釈した液体肥料を吹き付けることで施肥することができます。
『ハイポネックス原液』は、植物の健全な生育に必要な15種類の栄養素をバランス良く配合しています。
【苔の育て方】パターン別の苔の植え方
こちらでは、苔のテラリウムや苔玉、苔鉢の植えつけ方をご紹介します。
これから苔栽培を始める方はぜひ参考にしてみてください。
テラリウム
【準備するもの】
- 苔
- 容器
- テラリウム用の用土
- ハサミ
- ピンセット
- スプーン
- 霧吹き など
苔のテラリウムで使われる容器は、クローズドタイプ・セミオープンタイプ・オープンタイプなどに分けることができます。
クローズドタイプの容器は蓋をしめたままで管理するため、湿度の高い場所を好む苔が向いています。
セミオープンタイプの容器は蓋がしまるものの少し隙間があいており、オープンタイプは蓋がなく風通しの良さを保ちやすいことが特徴です。
容器を選んだら、深さ5分の1から4分の1程度のところまで、スプーンを使って用土を入れます。
用土は専用品を購入すると手軽です。口の細い容器に土を入れる場合は漏斗を活用すると良いでしょう。
飾り用の石を入れる場合はこの段階で配置しておきます。配置が決まったら水をそそいで用土を固めましょう。
苔を植えつけるときはピンセットでひとつずつつまみ、土に挿していきます。用土に対して垂直になるよう、まっすぐ挿しましょう。
仕上げに化粧砂を入れたり、動物の小さなフィギュアなどを飾りとして入れたりすることもおすすめです。自分好みのレイアウトでテラリウムを作り上げましょう。
苔玉
【準備するもの】
- 苔
- 用土
- 植え込む植物
- 植物用の培養土
- 元肥(緩効性肥料)
- テグス など
苔玉におすすめなのは、這うように伸びるハイゴケやシノブゴケなどです。事前に水を含ませておきましょう。
苔玉は「ケト土」と呼ばれる粘り気のある土と赤玉土を7:3で混ぜてつくります。その際に元肥として、肥料期間が約2年間持続する緩効性肥料『マグァンプK大粒』 を土に混ぜ込みます。
水を入れながらこねていき、丸い形をつくっていきましょう。玉ができたら中心をへこませて、その中に植物の苗を入れます。
植物用の培養土を入れてから玉を閉じましょう。この上から苔を巻きつけます。苔が剥がれ落ちないよう、テグスや木綿糸などを巻いて固定しましょう。
苔鉢(苔盆栽)
【準備するもの】
- 苔
- 用土
- 鉢
- ピンセット
- ハサミ
- 霧吹き など
苔鉢の鉢はお好きなものを準備します。一般的な植木鉢を使っても良いですが、穴のあいていない容器を使うこともできます。
穴のない容器を使う場合は、水やりの際に水がたまってしまう点に留意が必要です。水やりをした後は容器の水を切り、水がたまりすぎないように管理しましょう。
用土の種類に決まりはありません。赤玉土や市販の山野草用土などを活用すると良いでしょう。
保水性を高めたい場合は少量の水ゴケを混ぜます。植えつけ前に苔には水を含ませておきましょう。
準備ができたら、容器に用土を入れていきます。縁の1cmほど下あたりまで敷き詰めましょう。土を入れたら水で湿らせ、その上から苔を貼りつけていきます。
全体に貼る場合、隅のほうから少しずつ貼っていくことがおすすめです。細かい部分はピンセットを使って苔を挿します。
苔を貼り終えたら、全体を湿らせてから軽く手で押さえ、土と密着させましょう。
【苔の育て方】主な増やし方
苔は胞子をつくって増えますが、それ以外にもさまざまな方法で増やすことができます。最後に、苔の主な植えつけ方や増やし方をご紹介します。
貼り苔法
貼り苔法とは、苔を剥がして別の場所へ貼りつけて増やす方法です。短時間で多くの苔を植えつけたいときにおすすめできます。
シート状になって売られている苔もあるため、そういったものも貼り苔法で植えていきます。なるべく元の形を崩さないように気をつけながら植えれば、美しい見た目を保てるでしょう。
苔を庭一面に貼りたいときなどは、地面の除草を済ませておきましょう。防草シートを敷いておくことで、後々の管理の手間も軽減できます。
植えつけ場所の準備が整ったら、苔を貼りつけていきます。土の上に置いたらコテやスコップなどで押さえて密着させましょう。
その後に目土を入れていきます。苔が3分の1ほど隠れる程度に、薄めに入れましょう。終わったらたっぷりと水を与えます。
移植法
移植法は、苔の小さな塊を植えつけて増やす方法のことです。鉢の一部に植えつけたいときや、面積の狭い場所へ植えつけたいときなどに向いています。
たとえば、庭で育てている苔を鉢に移して苔鉢をつくりたいときや、苔テラリウムにしたいときなどにおすすめです。
加えて、移植法は仮根が発達し、まっすぐ生えるタイプの苔に適した方法といえます。主なものがスギゴケやヤマゴケ、ヒノキゴケなどです。
移植法ではピンセットを使って苔を植えつけます。用土に小さな穴をあけておき、そこに仮根を差し込みましょう。土を戻したら水を与えます。
まき苔法
苔はとても生命力が強く、たとえ葉1枚になっても芽を出し、増えていくことができます。まき苔法とは、小さくバラバラにした苔を土にまいて増やす方法のことです。
まき苔をする際は、苔を手でほぐしたり、ふるいにかけたりして細かくしていきます。少量の場合はハサミを使って少しずつカットしても良いでしょう。
最終的には広い場所に植えたい場合も、まずは鉢やトレーなどに苔をまいて管理します。庭に直接まくこともできますが、風雨の影響でうまく定着しないことがあるため避けたほうが無難です。
苔をまく用土は排水性と保水性を兼ね備えたものがおすすめです。赤玉土や黒土、川砂、ピートモスなどを混ぜると良いでしょう。
苔を用土にまいたら軽く押さえ、上からキッチンペーパーなどをかぶせて湿らせます。その後、水を与えながら1カ月ほど管理すると、苔の芽が出てくるはずです。
まき苔法で注意したいのが、苔の増えるスピードです。苔の生長はそれほどはやくないため、急いでたくさんの苔が欲しい場合は新しいものを購入したほうが良いかもしれません。
じっくりと苔が増えるのを楽しみたい場合はまき苔法がおすすめです。
おわりに
苔栽培は、苔玉やテラリウム、苔鉢、苔庭など、さまざまな方法で楽しむことができます。
園芸でよく使われるハイゴケやシノブゴケなどは管理しやすく、育てやすいこともメリットです。
苔独特の魅力に癒されたい方は、ぜひお好きな方法で栽培にチャレンジしてみましょう。