バラをもっと深く知る㊱やっぱりかわいい 白にピンク
30年以上にわたって長い人気を保ち、日本でいちばん育てられているつるバラ‘ピエール ドゥ ロンサール’。
気候条件によって淡いピンクで咲くこともあるが、きれいに紅色の覆輪が入って開花した花(横浜市アメリカ山公園)。
バラの花色にはさまざまありますが、誰もがかわいらしさや甘さを感じるのが、白とピンクのバラ。
花弁の周囲が縁取られる「覆輪(ふくりん)」花や、花の中央にピンクをさす品種があります。
白地にピンクの覆輪花だと、中大輪~大輪木立性なら‘コルデス パーフェクタ’(コルデス1957年)、‘衣笠(きぬがさ)’(京阪園芸1984年)、‘オーナー ドゥ バルザック’(メイアン1994年)など。
中輪FLなら‘ニコル’(コルデス1984年)や、‘ほのか’(京成バラ園芸2004年)などがあります。
剣弁高芯咲きの‘コルデス パーフェクタ’
白+ピンクの覆輪の大輪
中には長い人気を集めている品種があります。
いちばんよく知られるのが、“みんな大好き”‘ピエール ドゥ ロンサール’(メイアン1985年)。大輪のカップ咲き。
春一季咲きながら、その花の魅力で愛好者のみならず、一般にもよく知られているつるバラです。
気候条件により淡いピンクで咲く年もありますが、本来の花色は「クリーミーホワイトにカーマインローズ(ピンク)がかったカーマイン(洋紅色))の覆輪」(メイアン社の色表現)です。
‘ピエール ドゥ ロンサール’は、オベリスクやアーチより横に大きめに張らせる仕立てが最適。
壁面の前にパイプを建ててワイヤーを張って誘引し、大きな樹のかたちとしてあまりシュート更新せずに仕立てているバラの家実店舗の株
花弁の周囲に切れ込みが入ったとき(ながおか香りのばら園)
覆輪鮮やかに咲いたとき(神代植物公園)
同様に長い人気を保っているのが、モナコ公国公妃となった、女優の故グレース・ケリーに捧げられたHT‘プリンセス ドゥ モナコ’(メイアン1981年)です。
やわらかな気品がある大輪品種(京成バラ園芸)
みごとな半剣弁高芯に咲いたとき
赤坂プリンス クラシックハウスを背景に花茎を伸ばして咲く秋の花(KIOI ROSE GARDEN)
白+ピンクの覆輪 最近の品種
イングリッシュローズの‘ザ ミル オン ザ フロス’(オースチン2018年)は、宝珠弁のディープカップ咲き中輪。
よく繰り返し咲きます。甘いフルーツの中香。樹は大型のシュラブです。
‘ロクサーヌ’(ロサ オリエンティス プログレッシオ 2021年)は、中輪カップ咲きの花が横張りの木立性の株に咲きます。
ダマスク・ティーの中香。高温期や肥料が多いと花色は白く。
白に中央ピンク
覆輪ではないのですが、中央にピンクをさす花も人気。
まずシュラブですが、日本では枝がよく伸びるのでつる仕立てとした方がよいバラに‘クリスティアーナ’(コルデス2013年)があります。
中輪ディープカップ咲きの強香品種です。
小中輪シュラブでは‘クルール デ ラ ムール’(デルバール2021年)。カップ咲きでフルーツとフローラルの香りも。
2024年春に発表され注目を集めているのが‘桃心(もこ)’(大森プランツ)です。
花径3~4㎝のかわいらしい花(写真:大森プランツ)。
株はコンパクトで大房咲き
幅広い層に好まれる花色
「花色」は、バラを選ぶときの第一の基準。
いまはオレンジや黄色の品種が人気を集め、くすみカラーの品種も丈夫になった品種が多くなり、さらに「青バラ」や「赤の剣弁高芯咲き」も注目されています。
その中でも「白とピンク」のバラは、幅広い層に好感が持たれる花色。これからこの色のカテゴリーでも、新しい花型や育てやすい品種が登場してくることでしょう。
著者紹介
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玉置 一裕
バラの専門誌『New Roses』編集長。
『New Roses』の編集・執筆・アートディテクションを行うかたわら、ローズコーディネーターとしてバラ業界のコンサルティングやPRプランニング、関連イベントのコーディネート、バラの命名等に携わる。
また園芸・ガーデニング雑誌への執筆や講演を通じて、バラの「美」について語ると同時に、新しいバラの栽培法の研究も行っている。