【News】 18品種めの「殿堂入り」のバラは、フラワーカーペットローズ ピンク
2022年10月開催の第19回世界バラ会議アデレード大会(オーストラリア)で、ドイツ・ノアックローゼン社のフラワーカーペットローズ ピンクが「殿堂入りのバラ」(ROSE HALL OF FAME)に選ばれました。
フラワーカーペットローズ ピンク(写真協力:ハクサン 以下同)
世界バラ会議は世界バラ会連合The World Federation of Rose Societies略称WFRS)が3年に一回に開催するもので、全世界のバラ会から愛好家が集うバラに関する国際会議。第一回は1971年の第一回ニュージーランド・ハミルトン大会です。
「殿堂入りのバラ」(「栄誉殿堂入りのバラ」)は、各国のバラ会から推薦された品種をもとに「世界中のどの環境でも育てやすい」、「国や性別を超えて誰が見ても美しいと感じる」、「たくさんの国で長く愛されている」といった基準から「世界中で愛されている名花」として投票によって決められ、大会で発表されています。第3回の1976年イギリス・オックスフォード大会で‘ピース’が選ばれて以来今大会まで、18品種が「殿堂入り」しています。
今回殿堂入りしたのは、フラワーカーペットローズのシリーズのうち‘ピンク’。フラワーカーペットはドイツのノアックローゼン社育種で、カーマインピンク色の‘ピンク’(NOAtraum)は1988年に作出されています。ローズペイザージュ(修景バラ、ランドスケープローズ、景観をつくるバラ)の先駆けとして知られ、1990年にADR認証を受け、1995年に販売を開始、ヨーロッパはじめアメリカ、オーストラリア中心に広まりました。多くの育種家が交配にも利用しているといいます。
フラワーカーペットシリーズは国際コンクールで30以上の賞を受賞。いずれも丸弁の半八重~平咲きで花径は3~6㎝、一房に10輪前後の房咲き・四季咲き。株は横張り性のシュラブで高さ60~80㎝×幅約1.0m。照り葉を持ちうどんこ病や黒星病に対する耐病性に優れ、乾燥に強く、ローメンテナンスで次々と花が咲き続けます。
日本では2010年以来、PWなど丈夫な草花苗の紹介で知られる種苗会社・ハクサンより苗を提供。2023年秋のシーズンに、ピンクをはじめ、スカーレット、アップルブロッサム、ゴールド、ピンクスプラッシュ5品種の販売が予定されています。
小さめの花がたくさん咲く光景は、ヨーロッパの街ではおなじみの光景。四季を通じて咲き続けるので、日本でも小輪・小中輪シュラブのバラ園で最近利用が増えてきました。ローズペイザージュとして広い場所で同一品種を群植したり、草花と混植して植栽されてもいます。さらに家庭での利用も進みつつあります。
今回のフラワーカーペットローズ‘ピンク’は、木立性の‘ノック アウト’が2018年に続いての連続してのローズペイザージュ用途のバラの殿堂入り。バラに花そのものだけでなく丈夫さ・多花性を求める、世界的な時代の流れなのでしょう。
これら品種は株全体に咲く花で“色の面”をつくるので、株元や横に株丈が低めで株全体を花で覆うような四季咲きの草花を、色数をおさえてスパッと合わせると、ヨーロッパのような、すっきりといていながら明るい庭やコーナーができそうです。鉢植えにしてフワッとあふれるように咲かせて、好みの草花と寄せ鉢にして気軽に楽しんでもよいでしょう。
次回の世界バラ会議は、2025年に広島県福山市で開催される「ふくやま大会」。どんなバラが殿堂入りに選ばれるのでしょう。
【これまで「殿堂入り」した品種~モダンローズ】
ピース(仏メイアン)1976年第3回オックスフォード大会(イギリス)
クィーン エリザベス(米ラマーツ)1978年第4回プレトリア大会(南アフリカ)
フレグラント クラウド(ドゥフト ボルケ)(独タンタウ)1981年第5回エルサレム大会(イスラエル)
アイズバーグ(独コルデス)1983年第6回バーデンバーデン大会(ドイツ)
ダブル ディライト(米スイム)1985年第7回トロント大会(カナダ)
パパ メイアン(仏メイアン)1988年第8回シドニー大会(オーストラリア)
パスカリ(ベルギー レンズ)1991年第9回ベルファースト大会(イギリス)
ジャスト ジョーイ(英カント)1994年第10回クライストチャーチ大会(ニュージーランド)
ニュー ドーン(米アメリカ ドリール/サマーセット・ナーセリー)1997年第11回 ベネルクス三国大会
イングリット バーグマン(デンマーク ポールセン)2000年第12回ヒューストン大会(アメリカ)
ボニカ‘82(仏メイアン)2003年第13回グラスゴー大会(イギリス)
エリナ(英ディクソン)2006年第14回大阪大会(日本)
ピエール ドゥ ロンサール(仏メイアン)2006年第14回大阪大会(日本)
グラハム トーマス(英オースチン)2009年第15回バンクーバー大会(カナダ)
サリー ホルムズ(英ホルムズ)2012年第16回ヨハネスブルグ大会(南アフリカ)
カクテル(仏メイアン)2015年第17回リヨン大会(フランス)
ノック アウト(米ラドラー)2018年第18回コペンハーゲン大会(デンマーク)
玉置一裕
Profile
バラの専門誌『New Roses』編集長。
『New Roses』の編集・執筆・アートディテクションを行うかたわら、ローズコーディネーターとしてバラ業界のコンサルティングやPRプランニング、関連イベントのコーディネート、バラの命名等に携わる。
また園芸・ガーデニング雑誌への執筆や講演を通じて、バラの「美」について語ると同時に、新しいバラの栽培法の研究も行っている。