【果樹栽培】ヘーゼルナッツの育て方|生長過程や栽培ポイントなど紹介
ヘーゼルナッツはミックスナッツやチョコレート、アイスなどの製菓にも使われており、食べる機会も多い人気のナッツのひとつです。
ナッツ類はヘルシーなおやつとして広く認識されているため、健康面に配慮して食べている方も多いのではないでしょうか。
今回はヘーゼルナッツの実がどのように育つのか、生長過程や育て方のポイントを紹介します。
- 目次
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- ヘーゼルナッツの基本情報
- ヘーゼルナッツの概要
- 市販されているヘーゼルナッツの実
- ヘーゼルナッツの食べ方
- ヘーゼルナッツの種類
- ヘーゼルナッツが生長する様子
- ヘーゼルナッツを収穫するための栽培ポイント
- ヘーゼルナッツは気長に育てる
- ヘーゼルナッツは2種以上の株を植えつけるのが確実
- ヘーゼルナッツは大木に育つため場所の確保が必要
- ヘーゼルナッツの花芽を剪定しないよう注意する
- ヘーゼルナッツの基本的な育て方
- ヘーゼルナッツの栽培スケジュール
- ヘーゼルナッツ栽培に最適な地域
- ヘーゼルナッツに必要な日当たり
- ヘーゼルナッツに適した用土
- ヘーゼルナッツの水やり
- ヘーゼルナッツの肥料
- ヘーゼルナッツの植えつけ
- 植えつけの時期
- 地植えの場合の植えつけ
- 鉢植えの場合の植えつけ
- ヘーゼルナッツの剪定方法
- 剪定の時期
- 剪定の方法
- ヘーゼルナッツの収穫
- ヘーゼルナッツの収穫時期
- ヘーゼルナッツを収穫後
- ヘーゼルナッツの増やし方
- ヘーゼルナッツの病害虫
- ヘーゼルナッツ栽培にチャレンジ
ヘーゼルナッツの基本情報
ヘーゼルナッツについて、実の食べ方や生長過程などを詳しく紹介します。
ヘーゼルナッツの概要
ヘーゼルナッツはカバノキ科ハシバミ属の植物で、学名「Corylus avellana」、英名は「Common Hazelnut」、「European Filbert」、「Common Filbert」と複数の呼び名があります。和名では「西洋ハシバミ」と呼ばれており、ヘーゼルナッツは果実の部分を指す別名です。
原産地はヨーロッパや北アフリカ、西アジアなど広く分布しています。日本でも九州北部から北海道にかけて広い範囲で自生し、日本の気候でも育てやすい植物といえます。
市販されているヘーゼルナッツの実
ヘーゼルナッツはアーモンドやカシューナッツとならび、「世界三大ナッツ」と称されるナッツです。日本で食べられるヘーゼルナッツはほとんど輸入品で、9割がトルコ産です。国産のヘーゼルナッツはほとんど市販されていないため、日本品種の栽培にチャレンジしてみてもよいかもしれません。
ヘーゼルナッツの食べ方
ヘーゼルナッツは固い殻で覆われており、殻をむいてローストして食べるのが一般的です。ナッツは噛み応えもあるため小腹がすいたときにおすすめで、味付けなどがされていない場合は健康的なおやつとしても食べられています。
ヘーゼルナッツはチョコレートやクッキーなど、製菓の材料としても相性がいいです。そのため、市販されているお菓子にもよく使われており馴染みのあるナッツです。
ナッツをペースト状にしてチョコレートと合わせた「ジャンドゥーヤ」は、ヘーゼルナッツまたはアーモンドが使われています。
ヘーゼルナッツは保存もきくため、収穫に成功すればローストしておやつで食べたりお菓子作りに活用したり、栽培以外の楽しみが増えるかもしれません。
ヘーゼルナッツの種類
日本に自生しているヘーゼルナッツは、「ハシバミ」や「ツノハシバミ」です。そのうち「ハシバミ」は果樹として栽培されており、痩せた土地でも十分元気に育ちます。そのほかの品種は以下があります。
- ムラサキセイヨウハシバミ
紫がかった美しい葉色が特徴です。セイヨウハシバミとは別の品種である「マキシマ種」から作られた品種で、「セイヨウハシバミ・プルプレア」の名で流通しています。
- ロードゼラヌート
鑑賞用の樹としても楽しめる品種です。
- プルプレア
鑑賞用で鮮やかな葉色をしており、ヨーロッパや欧米ではカラーリーフとして人気です。
ヘーゼルナッツが生長する様子
ヘーゼルナッツは、雄花と雌花が別々になっている雌雄異花(しゆういか)です。
ヘーゼルナッツの雄花
大きい3〜8cmほどの棒状の穂が2〜3個のかたまりになって垂れ下がるようにつき、春になると花粉を放出します。雄花は芽を出してから冬を越すため、昨年から伸びた枝の先端あたりについています。
ヘーゼルナッツの雌花
雌花は小さな芽のような形状をしており、先端に赤く咲かせるのが雌しべです。雌花は春から伸びた短果枝の先端のあたりや、雄花がついた枝の基部につきます。
受粉した雌花
雌花が受粉すると、芽のように見える部分の表面が果実を包み込むように伸びます。実が緑色からだんだん茶色くなり、栗のような色味になります。
ヘーゼルナッツを収穫するための栽培ポイント
ヘーゼルナッツは、暖地や寒冷地を除いてほとんどのエリアで栽培が可能です。難しい管理はなく育てられますが、実の収穫をしたい場合は以下の点に注意しましょう。
ヘーゼルナッツは気長に育てる
ヘーゼルナッツの実がなるまでに、鉢植えの場合は4〜5年ほどかかります。地植えは株が十分に生長してから結実するため、場合によっては10〜15年ほどかかるといわれています。気長に育てるつもりで栽培にチャレンジする必要があります。
ヘーゼルナッツは2種以上の株を植えつけるのが確実
ヘーゼルナッツは、雄花と雌花が別々になっている雌雄異花です。しかし、それぞれの開花の時期がずれることもあり、受粉できず実がなりにくい場合があります。結実させるためには、2種以上の株を植えつけるほうが安定します。1本で育てる場合は、人工授粉をすると結実性を高めます。
ヘーゼルナッツは大木に育つため場所の確保が必要
ヘーゼルナッツは大きく育つことを想定して、ある程度の場所を確保する必要があります。鉢植えでも育てられ、剪定で樹高をキープさせることも可能です。実を収穫したい場合は、ある程度の大きさまで育てる必要があります。
ヘーゼルナッツの花芽を剪定しないよう注意する
剪定は受粉後に行うと花芽を切り落とさずに済みます。
ヘーゼルナッツは芽の先に赤く咲かせるのが雌花で、大きい棒状の穂が雄花です。雌花は春から伸びた短果枝の先端のあたりにつき、雄花は前年から長く伸びた枝の先端あたりについています。
開花時期は雄花がぶら下がり、下にある雌花に効率よく花粉をばらまけるようになっています。そのため、剪定で長い枝を切ると花を切り落として咲かなくなるため、注意してください。
ヘーゼルナッツの基本的な育て方
ヘーゼルナッツに適した栽培環境や、日頃のお手入れ方法を紹介します。
ヘーゼルナッツの栽培スケジュール
植えつけ時期:12月~2月(寒冷地の場合は春植え)
開花時期:2月~4月
剪定時期:12月~1月
ヘーゼルナッツ栽培に最適な地域
ヘーゼルナッツは日本の気候でも育てやすく、マイナス10度の耐寒性があるため多くの地域で冬越しできます。ただし、ヘーゼルナッツの実を多く収穫するにはマイナス10度を下回らないように注意が必要です。マイナス10度を下回ると冬を越す雄花が傷んでしまい、実がつかない可能性があります。
ヘーゼルナッツに必要な日当たり
ヘーゼルナッツは、日向から半日陰くらいの日当たりがベストです。乾燥しすぎた環境は弱いため、あまりに強い日差しが株元まで当たるのは避けます。
ヘーゼルナッツに適した用土
ヘーゼルナッツは、水はけがよく保湿性のよい土が適しています。腐葉土を多めにするのがポイントです。地植えの場合は、掘り起こした土に腐葉土と元肥『マグァンプK 大粒』を混ぜ合わせます。鉢植えの場合は、赤玉土(小粒)7:腐葉土3の割合で作るか、市販されている果樹用の土でもかまいません。
『ハイポネックス培養土 鉢・プランター用』は元肥として緩効性肥料マグァンプKが配合された鉢栽培、プランター栽培に最適な培養土です。
ヘーゼルナッツの水やり
【地植えの場合】
植えつけ時はたっぷりと水やりしますが、その後は降雨のみで育ってくれます。日照りが続くようであれば乾燥に強くないため、様子を見ながら水やりしてください。
【鉢植えの場合】
鉢の土が乾いたらたっぷりと水やりします。秋が終わり段々寒くなってきたら、水やりを控えます。乾燥気味にすることで耐寒性が増し冬越しできます。春になると芽が出始めるため、水やりを徐々に戻していきます。
ヘーゼルナッツの肥料
地植えの場合は、元肥に堆肥や腐葉土、緩効性肥料『マグァンプK 大粒』を混ぜ合わせておきます。『土を豊かにする肥料』は、堆肥と肥料成分がペレット状になっているので、肥料効果と同時に土の中の微生物の働きをうながしますので、土づくりに最適です。
また、12月~2月に土壌改良と春に芽を出させて葉や株を充実させるための栄養を兼ねて寒肥を施します。
寒肥には堆肥と肥料成分がペレット状にひとつになった『土を豊かにする肥料』がおすすめです。
『土を豊かにする肥料』は、肥料効果と同時に土の中の微生物の働きをうながします。
鉢植えの場合は、花を咲かせるため3月と収穫後に有機入り緩効性肥料『Plantia(プランティア)花と野菜と果実の肥料』をあたえます。
ヘーゼルナッツの植えつけ
ヘーゼルナッツを植えつける時期や、地植えと鉢植えの植えつけ方法を紹介します。
植えつけの時期
植えつけ時期は、12月〜2月ごろです。寒冷地の場合は春植えをします。芽吹いたあとのタイミングで植えつけする場合は、根を崩さないよう注意します。
地植えの場合の植えつけ
- ヘーゼルナッツを複数植えつける場合は、2〜3mくらいの間隔を空けます。
- 直径50〜60cm、深さ40cmほどの穴を掘ります。
- 掘り起こした土に腐葉土と元肥として肥料期間が2年間持続する緩効性肥料『マグァンプK 大粒』を土に混ぜ込みます。
- 苗の根が広がるようにして植えつけます。
- 支柱を立てて苗を固定させます。
- 植えつけ後はたっぷりと水やりします。その際に根の活着促進のため植物用活力液『リキダス』を1000倍に希釈してたっぷり与えます。
- 防寒のためわらを巻きます。わらがなければ4〜5枚重ねた新聞紙でも代用できます。
- 土が乾燥する場合は継続して水やりします。
鉢植えの場合の植えつけ
- 10号サイズの鉢を用意して植えつけます。
- 鉢底ネットと鉢底石を入れます。
- 苗木を入れてすき間に『ハイポネックス培養土 鉢・プランター用』を被せます。元肥として緩効性肥料マグァンプKが配合された鉢栽培、プランター栽培に最適な培養土です。
植えつけ後はたっぷりと水やりします。その際に根の活着促進のため植物用活力液『リキダス』をたっぷり与えます。
ヘーゼルナッツの剪定方法
ヘーゼルナッツは、生育旺盛で放置していると樹高は10mくらいに生長します。ヘーゼルナッツは実が殻に覆われているため落下したものを収穫できますが、大木になりすぎると病害虫の防除などの管理が難しくなります。
そのため、剪定をしながら2〜5mほどのサイズをキープして剪定や管理をしやすくしましょう。
剪定の時期
12月〜1月ごろが適期です。
剪定の方法
枝が伸びやすいため切り戻しや間引き剪定を行い、管理しやすい大きさに維持する必要があります。
間引き剪定
葉が込み合って木の内部が日当たり不足になってしまうため、枝を根本から剪定します。
低い樹高にするための剪定
主幹を切り、主枝を3〜5本くらいにして整えるのがポイントです。
木の根本から伸びる枝を剪定
夏場はひこばえといわれる地下茎から伸びる枝がよく伸びて広がるため、絶えず剪定する必要があります。そのままにしておくと栄養分がとられてしまいます。
ヘーゼルナッツの収穫
ヘーゼルナッツの実は成熟すると自然と落下するため、落ちた実を拾うだけの簡単な収穫作業です。落下した実の殻をむけば中のヘーゼルナッツの実が入っています。殻は固いため、ペンチなどを使って割ります。
ヘーゼルナッツの収穫時期
ヘーゼルナッツの成熟期は、品種や地域によっても異なりますが8月〜9月ごろです。殻に割れ目が入ったら収穫のサインです。
ヘーゼルナッツを収穫後
ヘーゼルナッツの実は、ローストしてから食べます。収穫してから1〜2日完熟させるのがポイントで、ローストすると香ばしさが感じられます。
フライパンなどで10〜20分ほど煎るか、そのまま紙に包んでレンジで加熱する方法でもローストできます。
実の周りについている薄い皮は、ローストすると簡単にとれます。
ヘーゼルナッツの増やし方
ヘーゼルナッツは挿し木や種まきで増やせますが、挿し木のほうが簡単でおすすめです。
【挿し木で増やす方法】
6月〜7月ごろが挿し木の適期です。
- 挿し木用の枝を2〜3節残るように斜めに切り落とします。
- 枝の繊維をつぶさないように、よく切れるナイフで切ってください。
- 土に挿すほうの節の葉は取り除き、残った葉を半分ほど切り落とします。
- 水にしばらく浸け水分を吸収させます。
- 赤玉土などに挿して水切れしないように注意し、明るい日陰で管理します。
【種まきで増やす方法】
ヘーゼルナッツは種まきでも増やせますが、時間がかかる方法です。種まきは10月〜12月に行います。
- 種を水につけて冷蔵庫で3日間保管します。水は12時間おきに交換します。
- 種まき用の鉢やポット、柔らかい土を用意します。
- 3cmほどの深さに種を埋めます。並べて種を埋める場合は4cmほど間隔を空けます。
- 半年ほどで新芽が出てきます。
- 10cmほどに生長したら、大きめの鉢に移します。
- 土の表面が乾いたら水やりします。
- 20cmほどになるまでは室内管理します。
ヘーゼルナッツの病害虫
ヘーゼルナッツはとても丈夫なため、とくに問題となる病害虫はありません。剪定をせずに放置すると風通しが悪くなり、うどんこ病などが発生する恐れがあります。内部の枝が茂りすぎないように、適切に剪定することが予防につながります。
ヘーゼルナッツにつきやすい害虫は、カミキリムシやコガネムシがあります。カミキリムシは幹を食害し、コガネムシは葉を食害するため、発見したら早めに駆除し薬剤を散布します。
ヘーゼルナッツ栽培にチャレンジ
ヘーゼルナッツは生育が旺盛なため、適切に枝を剪定してあげる必要があります。
しかし、果樹のような摘果や袋がけといったこまめな管理は必要なく、日本の気候にも合いやすいため育てやすさがあります。
鉢植えでも育てられますが、植えつけるスペースや実の収穫までじっくり待つという点に問題がなければ、ぜひ地植えでの栽培にもチャレンジしてみてください。