サルナシの育て方| 剪定の方法など育て方についてご紹介します
「サルナシ」は古くから採れている山の恵みで、その香りと味わいに山の猿たちが誘惑されるといわれるほどの植物です。
日本国内では秋ごろの短い期間でのみ収穫されるため、実物を見たことがないという方もいるのではないでしょうか。
サルナシは寒さや暑さに強く、環境や土壌を選ばないことから比較的育てやすい植物といわれています。
今回は、サルナシの育て方を基本情報から挿し木の方法、剪定方法などを詳しく紹介します。
サルナシの基本情報
サルナシは、マタタビ科・マタタビ属に分類される雌雄異株の落葉性つる植物です。日本をはじめ、中国や朝鮮半島に自生しています。山地や荒れ地など、土地を選ばない環境適応力の高い植物として知られています。
サルナシは生長すると、白い花と小ぶりな果実を実らせます。特産品としても重宝されている果実で、あまりのおいしさに「サルが食べてなくなってしまう」という逸話があります。なお、サルナシの花言葉のなかには「誘惑」という意味もあります。
サルナシの特徴
サルナシは山地や低地の林などに自生し、木や岩などに長いつるを絡ませながら生い茂るように育ちます。非常に生長が早く、葉は5~10cm程度の先端がとがった楕円形に育ちます。
葉の縁は、ギザギザがつく鋸歯(きょし)という形状をしているのが特徴です。サルナシのつるは直径10~15cm、3~30m以上育つことから、昔は資材として用いられたほど長くて丈夫です。
サルナシの開花時期は5~7月とされ、5枚の花弁が垂れ下がるように咲きます。サルナシの実は秋ごろに熟し、柔らかく、強い甘みと微かな酸味のあるおいしい果実です。
果実はビタミンやポリフェノールなどを豊富に含み、健康栄養食としても注目されています。収穫の時期が短いため市場に出回りにくく、ご当地品としても人気があります。
サルナシの主な品種
サルナシは、マタタビ属に分類される雌雄異株・雑居性のつる植物です。東アジアを中心に、約40種類が分布しているとされています。日本では「マタタビ」、「シマサルナシ」、「ウラジロマタタビ」、「ミヤママタタビ」の4種類が主として挙げられます。
一般に流通しているサルナシは、野生樹実木から優良系統を選抜された品種を栽培化したものです。日本国内の主な品種には、「光香」、「峰香」、「蛇喰」、「花の井」、「昭和系」、「月山系」、「淡路系」、「平野系」などがあります。サルナシは自生株から交雑品種まで、さまざまな品種があります。
サルナシの実は「ベビーキウイ」とも呼ばれ、甘味と酸味を楽しめるおいしい果実です。そもそも市販に流通しているキウイフルーツは、中国産のオニマタタビを品種改良したものです。そのため、サルナシとキウイフルーツは緑の実と黒い種、香りや甘味と酸味でよく似ています。
サルナシの栽培スケジュール
サルナシは、植えつけ・植えかえの適期が11月~3月、種から育てる場合は4~5月が適期とされています。肥料は2月と10月に与えましょう。2月は寒肥を施します。
寒肥は冬季の休眠期を乗り越え、土壌改良と春の生育を促すために有機肥料と緩効性肥料を与えるのが一般的です。寒肥には堆肥と肥料成分がペレット状にひとつになった『土を豊かにする肥料』がおすすめです。
10月は果実収穫後の樹勢回復のために、お礼肥(追肥)として化成肥料を与えます。
追肥にはバラまくだけで肥料効果が約2~3カ月間持続する『プランティア花と野菜と果実の肥料』がおすすめです。
サルナシの開花は5~7月とされていますが、雄木と雌木、品種の個体差や気候の影響により時期がずれることもあります。開花時期にはサルナシの白い花弁が咲き、開花後3日間が受粉の適期です。
受粉が正常に行われて結実すると果実になり、はじめは硬い実がしばらくすると柔らかくなり甘い香りを漂わせます。サルナシの収穫時期は9月から10月の1か月程度と短く、果実の収穫量も限られています。
12月~翌年2月は、サルナシの落葉期で剪定の適期です。芽を適宜残し、枝やつるが込みあった場所から剪定しましょう。つるは育ちやすいので短くして、根元を残すように切るのがポイントです。
サルナシの育て方のポイント
サルナシは暑さや寒さに耐性があり、病害虫にも強いとされている植物です。気候や環境にも強く通年で丈夫に育つ植物ですが、特性や好む環境を整えてあげるとサルナシは順調に育ちます。
サルナシを丈夫に育てるには、日光と水が育成に欠かせない要素となります。サルナシの育て方のポイントについて紹介します。
サルナシ栽培に最適な地域
サルナシはもともと山間部に自生し、日本全国に分布しているつる植物です。寒冷地や熱帯地域にも分布し、寒さや暑さにも比較的強くて荒地や傾斜地でも育ちます。育つ場所を選ばないサルナシですが、ご家庭で栽培するなら日光や水はけのよい環境がよいでしょう。
日本国内のサルナシは、東北地方や山間地や平野部で栽培されているケースが多いです。福島県や山形県などの東北地方から、香川県や沖縄県などの温暖な地域まで幅広く生産されています。
育て方や品種の特徴は地域や気候によって異なるため、それぞれの環境や品種の特性によって開花や収穫の時期も異なります。基本的に日当たりと水はけのよく、土に適度な湿度のある地域なら問題なく育てられます。
サルナシ栽培に適した用土
サルナシは丈夫なつる植物ですが、できるだけ乾燥や多湿からは避けて育てましょう。水はけがよく、保水性の高い用土を選び、土の表面が乾燥せずに水持ちがよい用土を選びます。サルナシは水はけと水持ちがよければ、土質を選ばないため、用土の種類はそれほど気にする必要がありません。
用土を用いる場合は、培養土や赤玉土や腐葉土など用意します。挿し木の場合は新しい清潔な用土を用い、赤玉土と腐葉土を使用する場合は7:3、8:2の割合で配合するとよいでしょう。
サルナシはしっかり土づくりをすることで生長を促すことができます。土づくりには、用土に堆肥や肥料を混ぜます。『土を豊かにする肥料』は、堆肥と肥料成分がペレット状になっているので、肥料効果と同時に土の中の微生物の働きをうながしますので、土づくりに最適です。
一般的に流通しているような市販の培養土を使用しても、サルナシを問題なく育てられます。
サルナシに必要な日当たり
サルナシは日当たりのよい場所を好みますが、半日陰でも育てることは可能です。どのような場所でも基本的に育ちますが、日光が当たる場所で、できるだけ地面が乾燥しないように注意しましょう。日光と水はけがよく栄養分を含んだ土壌を好むため、サルナシにはしっかりと日の当てるのが大切です。
サルナシは適地でなくても育ち、環境や土に大きく影響されることはありません。しかし、サルナシが好む日光や水はけのよい場所で育てれば、丈夫なつるとおいしい果実のなる健康な生長をみせてくれます。
注意点として、強い日差しは逆に生育を悪くさせる原因になりかねません。挿し木なら日差しが弱まるまで半日陰に置き、日照りが続く日は水やりを欠かさないように配慮しましょう。
サルナシの植えつけ
サルナシの植えつけは、11月から2月が適期とされています。シーズン的には寒い冬期ですが、サルナシは比較的寒さに強い植物なので時期は気にしなくて大丈夫です。サルナシを鉢植えで育てる場合は、切り戻しをしてから植えつけます。
サルナシの切り戻し
サルナシの切り戻しをする部分は、実が成った場所から先の枝を選びましょう。枝から残っている芽を3~5芽ほど残しておくと、翌年以降にサルナシが開花して実をつけられます。
その年に実が成らなかった箇所は、8~10芽くらいを多めに残しておくとよいでしょう。多めに芽を残すことで、残した芽からサルナシの実がつきやすくなります。
サルナシのつるは非常に育ちやすいため、低い場所だと育ったつるが込み合う場合があります。植えつけの際に通気をよくし、根詰まりを防ぎながらつるの剪定も行いましょう。
サルナシの植えかえの目安
植えかえは基本的に2年に1回の頻度を目安に、一回り大きいサイズの鉢植えがあれば十分です。サルナシの生育具合や鉢植えのサイズをみて、状況に応じて植えかえをしてください。植えかえの際、根や枝に傷をつけると病害虫や病気のリスクが高くなるので慎重に行いましょう。
サルナシの水やり
サルナシは乾燥にある程度の耐性はありますが、日照りには弱いので夏期の水やりには十分注意してください。水やりの量は多くなくても十分なので、土が乾かないように水を与えましょう。
夏場の水やり
夏場など日差しの強い日が続く場合は、土の表面が乾燥しないように水やりをします。鉢植えの場合は、受け皿に水が溜まると根腐れを起こすおそれがあります。こまめに受け皿の水を捨て、枯れないように気をつけましょう。
冬場の水やり
サルナシは、冬に入ると葉を落として休眠状態に入ります。休眠に入ると水を吸いにくくなるため、秋の終わりごろから冬の時期にかけては水やりを控えても大丈夫です。
休眠状態で水やりが多いと、サルナシの根腐れや生育に悪影響を与える可能性があります。冬期の水やりでは、土表面の状態は少し乾燥している程度の量で十分です。
サルナシの肥料
サルナシに与えるタイミングは、10月と2月が一般的とされています。品種や気候により時期が異なりますが、大体は秋ごろと冬期の休眠前後に肥料を与えましょう。
10月の肥料
10月の肥料は果実を収穫した後、お礼肥(追肥)として化成肥料を与えます。化成肥料は効き目が早く、花や果実をつけ終わって落葉期に入るサルナシに適しているためです。『プランティア花と野菜と果実の肥料』は、バラまくだけで肥料効果が約2~3カ月間持続するのでおすすめです。
2月の肥料
年を越した2月には、春に新芽をつけるための寒肥を与えます。休眠期に肥料を与えることで、春に合わせて生育を促すのが目的です。春までじっくりと育てるため、有機肥料と緩効性の肥料を与えましょう。寒肥には堆肥と肥料成分がペレット状になっている『土を豊かにする肥料』がおすすめです。
『土を豊かにする肥料』は、肥料効果と同時に土の中の微生物の働きをうながします。
緩効性肥料は効果を持続させ、長期にわたって栄養を供給します。肥料を与える時期によって、速効性と緩効性を使い分けて健康な生育を促しましょう。
サルナシの剪定や時期や方法について
サルナシのつるは非常に丈夫で、30m以上も生長するケースがあるなど土壌や気候を選ばずよく育ちます。剪定は、落葉期となる10~2月が適期です。
花や実をつけ終わり、伸びすぎて余分なつるを減らしていきましょう。不要なつるや枝を剪定し、風通しをよくすることで湿気がこもりにくく、効率よく日光に当てられます。
切り戻しをする場合は、茎を長めに剪定するのがポイントです。サルナシは、花が咲いた部分からは新芽が出ません。切り戻しの際は、発芽した個所と新芽が出ていない場所をチェックしましょう。
仕立てのやり方
サルナシの仕立ては、支柱と棚を立てて「棚仕立て」にするのが一般的です。サルナシはつる性の植物のため、伸びたつるが支柱と棚を這うように絡んでいく特性を利用します。
棚仕立ては、ブドウやバラなどの同じつる性植物にも用いられている技法です。それぞれの栽培方法と同じ、仕立て方をサルナシに応用できる方法です。サルナシのつるはとても長く生長するため、ほかの植物の生育を阻害しないように効率よく仕立てと剪定する必要があります。
棚仕立てのやり方は、支柱を1~2本立ててその上に天井を作ります。天井部分はワイヤーなどで固定させ、サルナシのつるを支柱に絡ませ、そのまま棚の上につるを誘引します。棚の上でサルナシのつるが育つため、通気性や日当たりがよくなるように定期的に剪定しましょう。
剪定のやり方
サルナシを剪定する場合は、落葉期や休眠期の12月から2月が適期です。伸びすぎたつるや節、花が咲いて実がなった部分を剪定しましょう。芽と芽の間にハサミを入れ、新芽を傷つけないように行うのがポイントです。
棚仕立ての場合は、低い位置に伸びているつるや細枝なども剪定します。できる限り余分なつるや枝を切り取り、込み合った場所を減らしましょう。
サルナシは花が咲いた部分からは新芽が出ないため、実をつけたい場合はそこから先の芽を5つほど残して切り戻します。前年に実が出なかった枝の場合は、芽を5~10ほど残すと実がつきやすくなります。
サルナシの収穫
サルナシの収穫時期は9~10月とされ、およそ1か月半と収穫時期は長くありません。品種や地域によって収穫時期が異なり、一般的にサルナシ(ベビーキウイ)と呼ばれているものが9~10月の時期に収穫されています。サルナシは実が硬い9月に収穫し、1~2週間ほど追熟させます。
収穫直後の実は硬く強い酸味がありますが、熟すと柔らかい実と甘い香りが美味な「山の珍果」と重宝されている木の実です。皮にしわが寄っていれば完熟していて食べごろとされ、硬さが少し残った状態だと爽やかな酸味が楽しめます。
サルナシは2~3cm程度の大きさで、表面に毛がないキウイフルーツといった感じです。皮のまま食べられて、ジャムや果実酒などの加工食品としても人気があります。
サルナシの増やし方と時期
サルナシを増やす方法は、挿し木と種や苗の方法があります。種や苗は発芽までの時間や手間がかかり、実がなるまで約2~3年かかります。その点、挿し木は難しい技術が不要で増やしやすいためおすすめです。
挿し木をするタイミングはどのシーズンでも可能ですが、休眠期の2~3月がよいとされています。直接用土に挿し木するか、水差しから発根させる方法があります。どちらの方法を選んでもとくに問題はないため、好みで選びましょう。
挿し木のやり方
サルナシは丈夫な植物なため、それほど神経質に扱う必要はありません。挿し木をする場合は、よく伸びた枝から採取します。時期はとくにこだわらず、1芽ごと8~12cm程度の長さに切りそろえましょう。
たくさんの実をつけたい場合は、2~3節分もう少し長めにしてもよいでしょう。切った枝からは樹液が流れ出ますが、固まるまで待つか新品の赤玉土などの清潔な用土に挿しましょう。
挿し木が終わったら、日光に当てながら表面の土が乾かないように水やりをします。夏場などの気温が高いと早く発根する場合もあるため、挿し木の周辺環境によっては想定とは異なる生育状態になる場合があります。
一般的な栽培スケジュール通りに進めていれば、大きな問題はないので正しい手順で剪定や水やりを行いましょう。
サルナシ栽培で気をつけたい病害虫
サルナシは、環境や病害虫にも強い頼もしい植物です。そのため、とくに大きな問題となる病害虫などもなく、無農薬栽培が可能です。しかし、すべての病害虫に無敵というわけではありません。
たとえば、キウイフルーツに寄生するカイガラムシや農作物や果物を食い荒らすカメムシなどが挙げられます。また、コガネムシからの若い葉や苗木への食害もう注意すべきでしょう。
ほかにも、病害虫以外にも「キウイフルーツかいよう病」のように、枝や葉・花びらから細菌が感染する場合があります。このような病気は用具や道具などを介し、サルナシの傷に感染することもあるため、挿し木や剪定やなど枝や葉に傷をつけないように慎重に行いましょう。
まとめ
サルナシは非常に丈夫で寒冷や暑さにも耐性があり、比較的楽に育てられる落葉性のつる植物です。実はとてもおいしく、一部の特産品として珍重されています。
育てること自体はとくに難しくありませんが、油断するとすぐにつるが生い茂ってしまうため注意が必要です。生育が旺盛でおいしいサルナシは、植物をはじめて育てる方にもおすすめです。