ナデシコ(ダイアンサス)の育て方|主な品種や栽培方法、増やし方
ナデシコは日本にも昔から自生しており、幅広い地域で愛されている花です。
可憐な印象ですが丈夫な性質を持ち、栽培が手軽なのも魅力となります。お好みの品種を見つけてお庭やベランダなどに植えてみましょう。
今回は、ナデシコの基礎知識や主な品種、基本的な育て方をご紹介します。また、日頃のお手入れ方法や増やし方なども解説するので、ぜひ参考にご覧ください。
ナデシコの育て方|可愛らしい花の魅力
ナデシコはナデシコ科ナデシコ属(ダイアンサス属)の植物を指す総称です。「ダイアンサス」と呼ばれることも少なくありません。
園芸店に置かれている種や苗は、基本的に「ナデシコ」もしくは「ダイアンサス」の名前で販売されています。ただし、「カーネーション」も同じナデシコ属の植物ですが、ナデシコとして販売されるケースは多くありません。
ナデシコは小さな花をたくさん咲かせる多年草で、花の色は赤やピンク、白、黄、黒、複色などです。原産地はヨーロッパや北アメリカ、南アフリカ、アジアなどで、日本に自生している品種もあります。
ハギ・ススキ・クズ・オミナエシ・フジバカマ・キキョウと一緒に秋の七草に数えられ、古くから親しまれてきました。
ナデシコは園芸品種が豊富で、花の形や草丈、色などさまざまです。主な開花時期は4月~8月ですが、四季咲き品種であれば一年を通して観賞できます。
ナデシコの花は丈夫で育てやすく、ガーデニング初心者にもおすすめです。品種によりますが基本的に耐暑性があり、耐寒性も強いので管理の手間がかかりにくいメリットがあります。
洋風のお庭にも和風のお庭にも合わせやすい雰囲気のため、お好きな方はぜひご自宅に植えてみましょう。
ナデシコの育て方|主な品種
ナデシコには多くの品種があり、それぞれ異なる特徴を持ちます。こちらでは、ナデシコの主な品種をご紹介します。
カワラナデシコ
日本のさまざまなエリアに自生しているナデシコです。日本で古くから愛されてきたナデシコといえば、一般的にこちらの品種を指します。
花びらに切れ込みの入った姿が大きな特徴で、柔らかく優しげな雰囲気を持ちます。
ヒゲナデシコ
ヒゲナデシコは複数の呼び名で親しまれている品種です。苞の先端が細かく伸びており、ヒゲのように見えることからこの名前がついたと考えられています。
また、美しい花が咲くことから「美女なでしこ(ビジョナデシコ)」の別名もつけられています。「アメリカナデシコ」とも呼ばれますが、原産地はヨーロッパといわれています。
ヒゲナデシコには切り花向けの高性種や、ガーデニング向きの矮性種が見られます。お好みの草丈で選びましょう。
ヒメナデシコ
ナデシコのなかでも小型の、ヨーロッパ原産品種です。繊細な印象の小さな花をたくさん咲かせます。花壇の縁をカバーするように植えるのもおすすめです。
タツタナデシコ
ヨーロッパ原産の品種です。花の中心部に濃い色が入り、蛇の目模様になるのが特徴となります。葉の色が白みを帯びた緑色であることも特徴のひとつです。
フォトンシリーズ
カワラナデシコとヒゲナデシコの交雑で誕生した品種です。四季咲き性があり、条件が合えばさまざまな季節に開花します。
草丈は80cmほどと高く、ガーデニング用はもちろん切り花にしたいときにも向いています。花の色は淡いピンクや白、濃いめのローズピンクなどです。
ベルフィーシリーズ
鉢植えでコンパクトに育てたいときにもおすすめの矮性品種です。四季咲き性で、直径4cmほどの花をたくさんつけます。花びらの色は鮮やかな赤色や朱色に近いピンク、紫色、白色、複色などがあります。
テルスター系
中国原産の石竹(セキチク)とヒゲナデシコとの交雑で生まれた品種です。草丈15cm~20cmの矮性品種であり、花径は2.5cm~3cm程度となります。
花の色が豊富なのも特徴のひとつです。赤色や白色、紫色などの単色のほか、白と紫、赤と白の複色なども見られます。
スープラ系
カワラナデシコのように花びらに細かい切れ込みの入った品種です。フリルのような花には可憐な雰囲気があります。
草丈は25cm~30cmほど、花の大きさは3cm~4cmほどです。矮性の四季咲き品種で、赤色やピンク色、白色、紫色などのカラーが見られます。
ナデシコの育て方|栽培を始めるときに知っておきたいポイント
ナデシコは種からでも苗からでも育てやすい植物です。適切な環境を用意し、ご自宅に植えて育てていきましょう。ここでは、ナデシコの栽培環境や植えつけまでの方法を解説します。
ナデシコの好む栽培環境
ナデシコは全体的に乾燥に強く、水はけの良い場所を好みます。傾斜地や砂利の混じった場所、石垣の上などでも栽培可能です。
日陰だと花つきが悪くなってしまうことがあるため、日なたを選んで植えましょう。最低でも半日以上は日差しの当たる場所がおすすめです。
土づくり
ナデシコを育てる際は排水性の高い用土を準備します。地植えの場合は苦土石灰を混ぜた後、堆肥や腐葉土などを加えて耕しましょう。
鉢植えの場合は赤玉土と腐葉土を7:3で混ぜたものや、市販されている草花用培養土など『ハイポネックス培養土 鉢・プランター用』がおすすめです。鹿沼土や山砂などを3割程度加えると良いでしょう。
種まき、育苗
ナデシコの種まき適期は春もしくは秋です。発芽適温は20℃前後のため、暑すぎず寒すぎない時期にまきましょう。
土に細い溝をつくって条まきにするか、ばらまきにして、土は5mmほどかぶせます。種が水で流されないように注意しながら土を湿らせましょう。
順調にいけば、5日から1週間程度で発芽します。元気なものを残して間引いていきましょう。本葉が3枚~5枚ほどついたら植えつけ可能です。秋に種まきした場合は苗が霜の影響を受けないように霜よけをしましょう。
植えつけ
ナデシコの植えつけ適期は3月~5月、9月~10月です。
地植えの場合、排水性を高めるために土を10cm~15cmほど盛ったところへ植えつけるのがおすすめです。株間は15cm~20cm程度とりましょう。
鉢やプランターに植えつける場合は、鉢底石を入れると水はけを良くできます。深植えは避け、ウォータースペースができるように調整して土を入れましょう。
植えつけ終えたらたっぷりと水を与えます。
ナデシコの育て方|日頃のお世話のコツ
ナデシコは管理の手間がかかりにくい植物ですが、水のあげすぎや肥料切れなどには注意が必要です。ここでは、ナデシコの日々のお手入れ方法をご紹介します。
水やり
ナデシコは過湿を嫌うため、つねに土が湿ったような状態にするのは避けましょう。地植えの場合は降雨に任せて問題ありません。雨が降らない日が続いた場合は、水切れしないように水をあげましょう。
鉢植えの場合は土の表面が乾燥してからたっぷりと水やりします。花や葉に水がかからないよう、株元に優しくそそぎましょう。
また、ナデシコは乾燥に強いものの、株を生長させてたくさん開花させるためには水をしっかり与えることが重要です。
とくに葉の幅が広く、それほど厚みのない品種は、水不足になると下葉が枯れてしまいやすいため注意が必要です。土の状態をこまめに確認しましょう。
肥料
ナデシコはたくさん花を咲かせるため、肥料切れしないように管理する必要があります。植えつけ時には元肥として緩効性肥料『マグァンプK中粒』を与えましょう。
その後は、生育期間中に月に1回の頻度で緩効性肥料『Plantia花と野菜と果実の肥料』を、もしくは10日に1回程度の頻度で速効性肥料『ハイポネックス原液』を追肥します。
四季咲き性品種はとくに肥料切れに気をつけましょう。肥料不足になったら花つきが悪くなってしまいます。
病害虫対策
ナデシコ栽培で気をつけたい病害虫のひとつがアブラムシです。大変小さな虫ですが、対処が遅れるとどんどん増えて手がつけられなくなることがあります。
株が弱って枯れる原因になるので、見つけたらすぐに駆除しましょう。
アブラムシを予防するためには日当たりと風通しの良い環境を保つことも大事です。湿気がこもりやすい場所や水はけの悪い場所は避け、株間をしっかりと設けて植えましょう。
また、防除可能な薬剤を使用するのもひとつの方法です。ナデシコを長く栽培していくためにも対策しておくと良いでしょう。
ナデシコの育て方|状況に応じたお手入れ方法
ナデシコを可能な限り長く楽しむためには、状況に応じた適切な方法でお世話することも大切です。
ここでは、花がら摘みや切り戻し、植えかえなどのポイントをご紹介します。
花がら摘み
ナデシコは開花期間になると次々と花を咲かせていきます。咲き終わった花がらをそのままにしておくと種をつくり始め、次の開花に向けてのエネルギーを取られてしまいます。
できるだけ長く花を楽しみたい場合は花がら摘みを行いましょう。しおれた花を摘み取っておくと見栄えが良くなるだけではなく、病害虫の予防にもつながります。
切り戻し
ナデシコは高温多湿を苦手とするため、梅雨や夏が来る前に切り戻しをしておくことがおすすめです。株をすっきりとさせておくことで、風通しが良い状態を保ちやすくなります。春の開花が一段落したら切り戻してみましょう。
草丈が高い品種は下葉を残して株元近くを、低い品種は半分あたりの位置を切り戻します。ただし、品種によっては切り戻しが適さない場合もあるため、種や苗の説明書をよく読んでおきましょう。
四季咲き性品種の場合は秋の開花後にも切り戻しをすると良いでしょう。カットしておくと春からの勢いが良くなり、枝数を増やせます。
植えかえ
ナデシコは細根をたくさん伸ばします。鉢植えは根詰まりしやすくなるため、1年に1回は植えかえたほうが良いでしょう。適期は植えつけと同じく春もしくは秋です。
植えかえは古い土を使わず、新しい用土を準備しておきます。根を掘り上げたら崩して植え直しましょう。
ナデシコの育て方|増やし方や注意点
ナデシコは多年草であり、一回植えると何年も育てていくことができます。ただし、数年経つと生育が停滞して勢いがなくなってくることがあります。
また、古株は耐暑性も弱まってしまうことがあるので、株を更新していくことがおすすめです。挿し芽や株分け、種まきなどで栽培中のナデシコを増やしてみましょう。
ここでは、ナデシコの主な増やし方や注意点をご紹介します。
挿し芽
挿し芽とは植物の茎や枝などを切り取って土に挿し、発根させて新たな株を増やす方法です。ナデシコは挿し芽で手軽に増やすことができます。挿し芽のメリットは親株と同じ性質を持つ株を増やせることです。
ナデシコの挿し芽の適期は4月~6月、9月~10月頃となります。新しく伸びた若い茎で、まだ花芽がついていないものを選んで挿し穂としましょう。
先端から3節程度の位置でカットし、水を吸い上げやすいように切り口を斜めにします。しばらく吸水させてから挿し木用土へ挿しましょう。
挿し木用土は肥料が含まれていない清潔なものを使います。市販の挿し木用土を使うと手軽です。
用土は湿らせたまま水切れしないように管理していきます。発根するまでは直射日光の当たらない場所へ置いておきましょう。新芽が動き始めたら鉢へ植えかえて栽培します。
株分け
地際からたくさん芽吹いており、株張りが良いものなら株分けでも増やせます。株分けとは、植物を分割して増やす方法です。
挿し木と同じく、親株と同じ性質を持つ株を増やせるのがメリットとなります。
親株を掘り上げたら、芽が数本ずつ残るようにして株を分割しましょう。あまり細かく分けると大きく生長するのに時間がかかってしまうため注意が必要です。
分けた株は別々に植えつけて、水やりをして日に当てながら同じように育てていきます。
種まき
ナデシコは種を採取してまくことでも増やせます。ただし、挿し芽や株分けとは異なり、親株と異なる性質になる可能性がある点に留意が必要です。
確実に同じ花を咲かせたい場合は市販の種を購入したほうが良いでしょう。
種を採取したい場合は花がら摘みをストップしてしばらく放置します。結実したら種を採り、乾燥させてから紙袋などに入れて保管しておきましょう。保管場所は風通しの良い冷暗所がおすすめです。
採取した種は適期となる春もしくは秋に種まきします。寒さの厳しい地域の場合は苗が小さなうちに冬越しするのを避けるため、春に種まきすると良いでしょう。
おわりに
可憐な花を咲かせるナデシコは丈夫で育てやすく、適切にお手入れしていけば何年か花を楽しめます。乾燥に強いためロックガーデンに植えるのにも適しています。
ご紹介したように、ナデシコにはさまざまな品種があります。ぜひお好きな品種を見つけてご自宅に植え、たくさんの花を咲かせて毎年の観賞を楽しみましょう。