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バラをもっと深く知る㊲ 春と秋では装いが変わる

バラをもっと深く知る㊲ 春と秋では装いが変わる

芳香大輪種の‘ジョリー メロディー’(メイアン)。

春花(左)は、花弁の裏側がバイカラーのように少し薄くなるが、秋花(右)は単色で咲く。

「今年は秋花があまり咲かなかった…」。

「本やネットで書いてあったり、言っていた通り9月5日前後に夏剪定したら、10月中旬に咲いた。しかし花は小さめの“夏の花”だった…」。

「夏剪定時期はまだ暑かったので、9月20日過ぎに剪定したら、10月末~11月はじめにようやく秋花らしい花が咲いてきた」。

「夏剪定をぜす、葉のキープを心掛けたら、11月下旬~末によい花が咲いた」。

今年2024年は気温が30℃超えの日が長く、プロでも夏剪定の時期は迷ったもの。もう師走になって2023年とは違って少し落ち着いたものの、こんなに暑い時期が長いと植物の管理方法もセオリー通りにはいきません。

植物をよく観察しながらのケアが大切ですが、強烈な日差しの中に庭に出て作業をするのは身体に負担が重く心理的にも避けたいところ。

ヒトが少し心地よいくらいになってからからケアを始めた方が、秋にもよい花が咲くようです。

秋花は色濃く、抱えて咲く

さていまのバラの多くは四季咲き。四季咲きといっても観賞価値がある花を咲かせるのは、春一番花(平地部ではいまはGW明けから5月中旬)、6月末~7月上旬の二番花、そして秋花。

いま秋花、イヤ初冬の花が盛り。一般論として花と秋花は、次の通り咲く花色と咲く姿が違います。まず、その姿と良さを知っておかないと、きれいに咲いても「色や咲き方が違い、ラベル通りに花が咲かなかった」ということになります。

〇春に比べて花数は少ないが、一つの花が大き目に咲く

〇春花より秋花の方が色濃く咲く

〇春にはロゼット咲きでも秋は抱えてカップ咲きに。カップ咲きの花はさらに抱えて咲く

〇秋花は春花よりうつむき加減に咲く

これを実例でみてみましょう。

シャリマー(ロサ オリエンティス プログレッシオ)

淡いピンクにアイボリーの宝珠弁咲き中輪。ダマスク+ティー+ハーブの中香。樹はとても丈夫なシュラブ。

春花(上)は明るく平たいロゼット状に。秋花(下)は、ふんわり伸ばした枝先にカップ型となって外側の花びらを広げて咲きます。

ノヴァーリス(コルデス)

「ブライトヴァイオレット」色のカップ咲き大輪。コルデスの‘ノヴァーリス’は“丈夫な青バラ”のはしり。

春は木立性の株の上の方に房になってうつむき加減に咲き(上)。秋花は少し枝を伸ばした先により抱えて(下)。弁先のとがった宝珠弁の表情がよくわかります。

ヒーリング(コマツガーデン)

明るいピンクにライラックがのる波状弁咲き中大輪・木立性の‘ヒーリング’(コマツガーデン)。ティー+ミルラの芳香。

春花は比較的上を向いて咲き(上)、秋花はあまり咲き方は変わらず、色濃くうつむき加減に(下)。

真宙(まそら)(ガーデンナーセリーYOSHIIKE)

アプリコットオレンジの中輪カップ咲き。樹は直立気味に伸びる枝先に咲き、フルーティな香りを漂わせます。

春花(上)は浅めのカップ、秋花(下)は深く抱えて。

フィネス(京阪園芸F&Gローズ)

ワインカラーのような濃いめのピンクの中輪。ダマスク系の香りにスミレやレモンバームなどが溶けこむ芳香。樹は横張り気味に育つ木立性。

春花(上)は明るめに。波状弁が良く分かります。下は、青みが強く深く抱えて咲く2023年のクリスマスイブの花。

まさに“クリスマスローズ”です。

バラをよく観察し対処

春花は明るい日差しを浴びて。秋花はしっとりとして空気の中で。咲く花色や姿は多少変わっても同じバラ。それぞれの良さがあり、変わることにおもしろさがあります。

気候変動による地球温暖化は他人事ではなく、目の前に咲くバラにストレートに影響しています。

こういった気候下だからこそ、栽培は原則論とセオリーを理解した上で、バラをよく観察し対処していくことが、いまの時代とても大切なことになってきているでしょう。

困ったら、園芸店などのアドバイザーにご相談を。

来年こそは、春はたくさんの花を、秋はよい姿の花を咲かせたいものです。

著者紹介

玉置 一裕

バラの専門誌『New Roses』編集長。

『New Roses』の編集・執筆・アートディテクションを行うかたわら、ローズコーディネーターとしてバラ業界のコンサルティングやPRプランニング、関連イベントのコーディネート、バラの命名等に携わる。

また園芸・ガーデニング雑誌への執筆や講演を通じて、バラの「美」について語ると同時に、新しいバラの栽培法の研究も行っている。

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