カリンの育て方|植えつけから収穫までの栽培のポイント

カリンの木を植えていると、春には可愛い花を、秋には芳香を放つ果実を楽しむことができます。
管理の手間がかかりにくい果樹のため、庭木としても人気です。お好きな方はぜひご自宅に植えて育ててみましょう。
今回は、カリンの基礎知識や育て方、お手入れ方法などをご紹介します。
カリンの育て方|特徴や魅力
カリンはバラ科の果樹であり、春に可愛い花を咲かせた後、良い香りのする実をつけます。花も実も楽しめるほか、丈夫な性質を持つため、園芸初心者にもおすすめの果樹です。
ここでは、カリンの特徴や、よく似たマルメロとの違いを解説します。
カリンの木の特徴
カリンは落葉性の中高木です。樹高は2m以上に育つことがありますが、盆栽として小さく育てることも可能です。盆栽のカリンにも花や実がつき、季節ごとの姿を楽しませてくれます。
花は可愛らしいピンク色で、同じバラ科のリンゴの花にも似ています。樹皮がうろこのように剥がれる独特の木肌も特徴です。
花後には小さな果実をつけます。実は徐々に大きくなって熟していき、10月~11月頃に収穫可能になります。
カリンの実について
カリンの実は香りの良さで知られています。薬用で使われてきた歴史があり、現在ものど飴の材料としてよく用いられています。
そのほか、カリン酒やはちみつ漬け、シロップなどの原料として人気です。カリン特有のフルーティな香りを堪能できます。
ただし、カリンの果実は非常に硬く渋みがあるため、生食は難しいとされています。味わう際は煮込んで柔らかくしたり、甘く味付けをしたりすることが基本です。
ご自宅で育てたカリンを収穫できたら、ぜひお好きな方法で調理して味わってみましょう。
マルメロとの違い
「マルメロ」はカリンと似ており、混同されやすい果樹です。実際、カリンジャムとして売られている製品の中には、よく似たマルメロの実を加工したものも見られます。
マルメロとカリンの違いは果実の形です。カリンの実は楕円形ですが、マルメロの実はゴツゴツとした形状をしています。カリンの実はつるつるとしており、マルメロの実には細かい毛が生えている点も異なります。
また、マルメロにはいくつかの品種がありますが、カリンには今のところ品種として認められたものはないといわれています。
カリンの育て方|栽培環境や用土、植えつけ

カリンをご自宅に植える際は、どんなポイントに気をつけたら良いのでしょうか。ここでは、カリンにとって好ましい環境や土づくり、植えつけのコツなどをご紹介します。
カリンの好む栽培環境
カリンの花や実をたくさんつけるためには、日光に当てることが重要です。日当たりの良い場所を選んで植えつけましょう。
また、カリンは冷涼で降雨量が比較的少ない環境を好みます。夏の暑さが心配な場合は鉢植えにして、季節に応じて移動させる育て方もおすすめです。
耐寒性は強いため、真冬でも屋外で問題なく冬越しさせられます。
土づくり
カリンは排水性・保水性の良い用土であれば、それほど土質を選びません。地植えする場合、腐葉土や堆肥などを加えて耕しておきましょう。
鉢植えの場合は小粒の赤玉土:腐葉土=7~8:3~2で混ぜたものがおすすめです。市販されている果樹用の培養土を活用しても良いでしょう。
苗木選び
カリンは受粉樹が必要ないため、1本植えるだけで実を収穫することが可能です。元気の良い苗木を選んで植えつけましょう。
苗木を直接見て選べるときは、株元や接ぎ木の部分がぐらついていないものを探すことがポイントです。病害虫被害の痕跡がなく、枝が間延びしていないものが良いでしょう。
植えつけ
カリンの植えつけ適期は落葉期となる12月~3月にかけてです。温暖な地域なら12月頃、寒さの厳しい地域なら3月頃の作業が適しているでしょう。
地植えの場合は、植えつけ予定地を掘り返して植え穴を掘り、苗木を入れて土を戻します。鉢植えの場合は根鉢より一回り大きな鉢へ植えつけましょう。
終わったら倒れないように支柱を立てます。水をたくさん与えておきましょう。
カリンの育て方|日頃のお手入れや収穫方法

カリンを植えつけたら、水や肥料をあげながら大切にお手入れを続けていきましょう。こちらでは、カリンのお手入れ方法や収穫のコツを解説します。
水やり
地植えのカリンが根づいた後は、基本的に降雨に任せます。乾燥しやすい夏の時期、雨が降らない期間が続いたら水をあげましょう。
鉢植えの場合は土が乾燥しやすいため、鉢土の表面が白く乾いたら水を与えるようにします。鉢底から流れ出るくらいたっぷりとあげましょう。
肥料
植えつけの際には元肥として緩効性肥料『マグァンプK大粒』を施しておきます。
2月と10月に追肥をあたえます。追肥にはバラまくだけで肥料効果が約2~3ヵ月間持続する『Plantia(プランティア)花と野菜と果実の肥料』又は、速効性の液体肥料『ハイポネックス原液』を1週間~10日に1回の頻度であたえます。
鉢植えは地植えよりも肥料切れしやすいため、5月頃にも追肥として緩効性肥料『錠剤肥料シリーズ かんきつ・果樹用』を施しておきます。
『錠剤肥料シリーズ かんきつ・果樹用』は、早く効く成分とゆっくり効く有機質を配合していますので、安定した効果が約1~2ヵ月間持続します
病害虫対策
カリンは病害虫被害を受けにくい果樹のひとつです。ただし、実がなったときにはシンクイムシに注意しましょう。
シンクイムシは実を食い荒らしてしまうため、被害を受けると収穫量が減ってしまいます。果実に袋がけをして対策しましょう。
また、新梢や芽などにアブラムシが発生することがあります。アブラムシはとても小さな虫であり、放置しているとどんどん増えてしまいます。見つけたらすぐに駆除することが大切です。
風通し・日当たりの悪い場所で生じやすいため、予防のためも植えつけ場所の環境には気をつけましょう。定期的な剪定によって株の風通しや日当たりを良くすることもポイントです。
収穫
春にカリンの花が咲き終わった後、5月~6月頃に小さな実がなります。実は次第に熟して黄色くなり、10月~11月頃には収穫可能です。この時期になるとカリンの実はとても良い香りを放ちます。
収穫の際は手でもぎ取ることもできますが、果実を傷つけないためにハサミを使うと安心です。
収穫後はお好きな方法で加工して味わいましょう。また、果実をいくつか部屋に置いておき、香りを楽しむのもおすすめです。
カリンの育て方|剪定や植えかえのポイント
カリンを長く育てていくためには、剪定や植えかえといったお手入れも必要です。ここでは、カリンの剪定や植えかえ方法をご紹介します。
剪定
カリンの実は短い枝につきやすいため、収穫できる量を増やしたい場合は定期的な剪定を行いましょう。適期は12月~2月と7月頃です。
冬の剪定では不要な枝を間引きます。混雑した部分の枝をカットし、風通しと日当たりを良くしましょう。徒長した枝や垂れ下がった枝なども切り落とします。
冬の頃になると、枝の基部近くから伸びている短枝の先端に花芽がついています。この枝を切り落とすと翌年の実がつかなくなるため気をつけましょう。
長く伸びすぎた枝は芽を残し、3分の1程度に切り詰めます。短く切りすぎると、花芽のついた枝まで落としてしまうため注意が必要です。
また、枝が伸びすぎた部分は夏の剪定でカットして整えます。不要な枝が伸びていた場合も切り落としましょう。
植えかえ
鉢植えの場合、2年~3年に1回の頻度で植えかえることがおすすめです。植えっぱなしにしていると根詰まりし、生育が停滞してしまうこともあるため気をつけましょう。
植えかえの適期は、植えつけと同じ12月~3月です。新しい用土を準備して植えかえてあげましょう。
地植えの場合は、根が成長を始める2~3月までに、枝先の下あたりに寒肥を施します。寒肥には堆肥と肥料成分がペレット状にひとつになった『土を豊かにする肥料』がおすすめです。
おわりに
カリンは花と実の観賞を楽しめるほか、香りの良さも堪能できる果樹です。耐暑性・耐寒性が強く、果樹栽培初心者にもおすすめできます。ぜひご自宅に植えて育て、きれいな花や香り高い実を堪能しましょう。
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