ステキなオープンガーデン 追憶のベルスーズイングリッシュガーデン 山梨県山中湖村
コロナ禍の2020年、多くののオープンガーデンがこれまでのように開催できず、お庭を見て歩く楽しみも自粛になってしまいました。まだまだ感染拡大が思うように収まらない中、今年は感染拡大への対策を前提に実施されるオープンガーデンもありそうです。コロナ禍以前のような自由な観覧が実施されるのは難しいかもしれませんが、どんな条件でもステキな庭が見られるのであれば、私も十分な感染対策の上に見に行きたいと思いますが、すでにいくつものオープンガーデンが今年も公開中止にもなっているのも事実です。ここでは、これまで私が見てきたステキなオープンガーデンをご紹介し、まずはWebで楽しんでいただこうと思います。
- 目次
今回は、今ではもうなくなってしまったガーデン、山梨県山中湖村にあった「ベルスーズイングリッシュガーデン 馨る庭」を振りかえってみたいと思います。このガーデン、個人邸ではありませんが、佐藤順子さんというたぐい稀な方がいたことで、チャリティー・オープンガーデンガーデンとして初夏の一時公開されてきました。
その歩みは、かつてあった大乗淑徳学園の研修センターの管理人として、佐藤さんが住みはじめたことからはじまります。最初は、広大な敷地の中にある自然を、研修にやってくる子どもたちに、その心地よさを知ってもらうために散歩道をつくるところからはじまったそうです。
そして、その散歩道の傍らに自然の景色と馴染む季節の花を植えはじめたことがガーデンのはじまりになりました。佐藤さんが生まれ育ったのは北海道旭川、子どものころに見た花のある景色をイメージした庭づくりだったといいます。標高1100メートルにある山中湖の環境は、意外に共通するところもあったのでしょう。
また、花好きのお母さまのDNAがそれをさせたのかもしれません。2000坪という広い敷地を、毎年毎年コツコツと手を入れていき、本格的なガーデンに変貌していきました。そして、イギリスで生まれた庭園福祉活動に関心があったという佐藤さん、2000年から一番の花盛りの6月の後半、チャリティー・オープンガーデンとして公開をはじめました。後に、近隣の中村さんのガーデンと塚原さんのガーデンを交えて、3ガーデン共通の入園券を発行して、その収益をユニセフなどに寄付を続けました。まさに、景色だけではなく精神そのものも本物のイングリッシュガーデンに値する庭でした。
私も、公開されたガーデンへ何度か通いました。初夏の山中湖は、梅雨ではありますが、雨さえ降らなければ気持ちのよい、まさに北海道のような気候でもあります。緑と空気が素晴らしい中に、ナチュラルに咲く花々がとても心地よい景観をつくっていました。散歩道を歩いたり、庭を眺めながらお茶とお菓子を頂いたり、花好きの方々との交流も楽しいものでした。ガーデンの素晴らしさだけではなく、花を愛でながら過ごす時を楽しむ、まさに花のある生活の素晴らしさを体感させてくれるガーデンでした。
それに、何より人気だったのが、ガーデンを切り盛りする佐藤さん自身でした。まさに、ベルスーズイングリッシュガーデンにいる庭の妖精そのものでした。その姿は移り住んだ旭川でも、今も健在です。そして、ご存じでしょうか、佐藤さんの姪御さんが、あの上野ファームの上野砂由紀さんなのです。上野さんのお母さまが佐藤さんのお姉さまなのです。
残念ながら、研修センターの廃止とともに10年あまり続いたガーデンの公開も終了し、佐藤さんが北海道へ移り住むことで、お庭もなくなってしまいました。でも、訪れたことのある方々の脳裏には、ガーデンの素敵な光景と、妖精のような佐藤さんの姿が、今もステキな記憶として残っているのではないでしょうか。追憶の中に残る「ベルスーズ・イングリッシュガーデン馨る庭」です。
取材・写真 出澤清明
園芸雑誌の元編集長。植物自由人、園芸普及家。長年関わってきた園芸や花の業界、植物の世界を、より多くの人に知って楽しんでもらいたいと思い、さまざまなイベントや花のあるところを訪れて、WEBサイトやSNSで発信している。
記事カテゴリから探す
Garden Tourから探す
HYPONeXSmileから探す
タグから探す
記事カテゴリから探す
Garden Tourから探す
HYPONeXSmileから探す
- タグから探す