見ても楽しい、やっても楽しい “落ち葉アート”に夢中!
広場に色とりどりに落ち葉が落ちていたら、通路にイチョウの黄葉がたくさん落ちていたら。木の根元に赤い花びらがいっぱい落ちていたら。
普通は、掃除をしなければならないし、大変だとしか思わないでしょう。でも、少しの時間、その落ち葉で遊んでみる人もいます。恒久的に残るものでもなく、いや、あっという間に消えてしまう一瞬の造形ですが、そこを切り取れば「落ち葉アート」と呼んでもよいくらい、見るものを楽しませてくれます。
落ち葉アートをつくる柵山直之さん
「芽だしから青葉、そして紅葉、最後は落葉して土に還る。そんな自然の循環の鎖の途中、紅葉から落葉の時期、私たちの生活空間では掃き掃除という手間が生まれます。その手間をちょっとだけアートに変換して、晩秋から初冬の一瞬を楽しむ、そして できればその際、自然の循環を少し考えてみる、そんな思いでやっています」と語るのは、三重県菰野町を拠点に東海地域でガーデンデザインや園芸活動をしている、メイガーデンズの柵山直之さんです。柵山さんは、荷台を庭にしたトラックガーデンやリニモの車内を緑で飾ったグリーン車の製作など、ユニークな園芸活動も行っています。
実際にはじめたきっかけを教えてください。
「特に商業施設など、街中では毎日、落ち葉をきれいにクリーンスタッフさんが掃除をしているのですが、園芸に携わる者としては、以前から秋は落ち葉の雰囲気がいいのになあ、と少し残念な気持ちがありました。しかも、本来落ち葉はその地で土に還りまたその木に吸収されていくもの。落ち葉アートというものがあるのは知っていましたが、それを表現するために、大きなケヤキに感謝を込めてその株元に小さなハートをつくってみたのです。そうしたら、通行人やその施設のお店の人などがとても喜んでくれました。その反響にびっくりしたと共に、うれしくて……。それからというもの、仕事の合間にいたるところでつくり続けるという、秋の楽しい日々がはじまりました(笑)」
実践して、それを見た方の反響などはどうですか。
「通りがかるすべての人が落ち葉アートに反応するわけではないのですが、ただ、反応してくれた方の喜び方がすごいんです。興奮気味に『感動です!』や『初めてこんなの見ました!』とか、『ほっこりする』とか『コストがかかっていないという点にいろいろ考えさせられる』とウルウルする方もいます。パブリックな場で制作をするので、さまざまな方との落ち葉を介した触れ合いがたまらなく楽しいです。特に日本人には、もともと秋の紅葉を楽しむという文化が根づいていることも故のものだと感じています」
アート仕立てにするポイントとかはありますか。
「僕は、落ちた葉の色や形状はもちろん、その場の持つ雰囲気から受けたインスピレーションでつくるようにしています。そこが醍醐味でもあります。それがより深く秋を感じることに繋がります。そして、インスタ映えではありませんが、写真の撮り方でも捉え方が大きく変わりますね。その場でつくる楽しみと写真作品として楽しむこと、その2通りのつくり方ができます。アートとしては、まだまだ可能性を感じていて、さらに開発中です。ただ、シンプルに子どもたちの好きな動物などをつくるのもいいと思います」
制作の際に注意している点とかお教えください。
「基本的なところで、パブリックな空間では歩行者の邪魔にならないようといったことはあります。あと、大事なことなのですが、落ち葉が一面に落ちているだけでも僕は美しいと思います。そう感じる方もいるでしょう。だから、本来ある落ち葉の自然で美しい景色は残しながら、隅っこや吹き溜まりや人気のない公園などで ちょっと粋な形で感動を生むようなことをしたいなと思っています」
自然と触れあいながら楽しむ落ち葉アート。そこには、植物に対する敬愛や愛情が感じられます。けっして、単なるアート制作というようなものではない、柵山さんのお話を聞いて感じたことです。
落ち葉アートを楽しめるのも、晩秋から初冬のほんのわずかの期間です。でも、一瞬の喜びを記憶に収めて秋を送り、冬を迎える。落ち葉の掃き掃除も少しだけ楽しみになってきました。来年のこの時期にはどんな作品が生まれるのでしょう。さらなる楽しみは一年後です。
(構成・文 Deru)
(写真提供=柵山直之)