那須ヒロガーデン店長 高木大輔のバラ栽培は面白い! 3月のバラの管理方法② ~3月はギリギリ準備が間に合います~
3月はバラ長尺苗を植えて誘引すれば、ぎりぎり今春の開花に間に合う!
つるバラの長尺苗というものをご存知でしょうか。大苗や新苗を半年以上育てて1mくらい(もしくは、それ以上)伸びた枝をそのまま支柱に縛った状態で販売する苗のことで、一般的には良く伸びるつるバラやシュラブローズをこの規格で販売しています。
大苗や新苗より大きく育っているので、早めに開花を楽しむことができる規格です。
ところで、つるバラを目的の構造物に添わせて開花させるためには、誘引という作業が必要です。
この作業は、関東以西基準では、12~2月の寒い時期の作業となります。
それは暖かくなって新芽が動き出す前に誘引を完了しないと、花数が減ってしまう(頂芽優勢という性質があり、適期に誘引したほうが花数が増える)し、なにより誘引作業で新芽をもいでしまうからです。
このつるバラの長尺苗ですが、販売店でいちばん売れるのは何といっても5~6月の開花シーズンです。開花した花を見て購入できるからですね。
ところが、5~6月に購入してすぐにばっちり構造物に誘引できるかというと、なかなか困難で、5~6月の購入の場合、購入後、葉も枝も花蕾も育っていますからすぐに誘引できず、目的の構造物の近くに植えて、縛っていた枝を解いて仮誘引(枝を少し広げて、構造物に軽く添わせる程度)をします。
その後、翌冬までしっかりシュートを伸ばして、そのシュートを構造物に誘引することになりますので、その構造物で見応えのある景色を作るのは翌春になります。
では、『今年の5~6月に目的の構造物にきれいに開花させるにはどうしたらいい?』となりますね。
前述したように、12~2月に誘引したいので、つるバラ長尺苗の購入~植え付けは、前年の9~11月(できるだけ暖かい時期に植え付けるとその場所で根を張って冬を迎えるので冬越ししやすくなる)がおすすめですが、それから実は、3月もギリギリ購入のチャンスということになります!
3月はまだ新芽が出始めなので、新芽が出る前に、もしくはなるべく新芽をもがないように誘引することが可能だからです。
もし、『今春こそこの場所でバラをきれいに咲かせたい!』とイメージできていたら、ぜひ早めにバラ専門店にご来店ください。 バラ専門店でしたら通年で在庫陳列しているお店が多いです!冬の寒さが底をついた2月下旬~3月上旬頃につるバラ長尺苗を植え付けして、新芽がなるべくもげないように誘引すれば、まだ今年の5~6月の開花に間に合いますよ!
動画でわかりやすく バラ栽培を解説します
3月のバラ栽培(芽吹きの時期の作業)
2月までに、木立のバラの剪定、つるバラの誘引や鉢栽培のバラの植え替えは終わりましたか?(関東以西基準)
まだ作業していないよ!という方、剪定、誘引は今からでもまだギリギリ間に合います。
なにもやらないで春を迎えるよりは、少しでも細枝を切って枝を整理したり、高さを整えたりするだけでも違いますので、ぜひ早めの作業を!
鉢バラの植え替えは、3月になったらなるべく早めに。もし新芽が出始めて白根(新しい根)が動き出していたら、根鉢を崩して植え替えをすると、その後の生育に影響してしまう可能性があるので、根鉢を崩さずに、これまでより少し大きめの鉢に植え替えがおすすめです。
3月といえば、これまで寒さ対策で、軒下や風が防げる屋内にしまっていた鉢バラもそろそろ日の当たる場所に移動させたいですね。
2月までは乾いたときだけで良かった水やりの頻度も少しずつ増やしていきましょう。
具体的には鉢の表土が乾いてきたらたっぷりと。3月の芽出しの時期は、水切れすると新芽が傷んでしまう恐れもありますので、乾かしすぎないようにご注意ください。
さて、ここからは、3月のバラ栽培について、以下のトピックスで説明していきます。
肥料について
地植えのバラは、冬の間に寒肥を施していますでしょうか。(このコーナーでもいずれ寒肥についてお話したいと思います。)『何もやっていないよ!』という方は、今からでしたら、少し株元の硬くなっている表土を耕して(中耕して)、追肥を株元も撒くようにしてください。最低限これだけはやっておきたいところです。
鉢植えのバラは、3月の芽吹きの時期が追肥のスタートです。芽が1cmになる程度までに最初の追肥(芽出し肥)を施しましょう。
バラの花数、花の大きさや花の色は、芽吹きの時期の肥料で決まります。4月5月に入ってから店舗で『そろそろ蕾ができたので肥料あげたほうがいいかしら?』とお問い合わせを頂きます。
もちろん4月でも肥料は必要ですが、芽吹きの時期の肥料で、どんな花がどれくらい咲くかどうかが決まりますので、3月の新芽が出てくるころまでに、お手持ちのバラ専用の有機質肥料 ブリリアントガーデン バラのまくだけ肥料を施してくださいね。
芽かきについて
3月になると、1ヶ所から2本(もしくは3本のことも)の新芽が出てくることがあります。芽かきというのは、その後の栄養を1本の新芽にしっかり届けて健全な枝にするために、貧弱なほうの1本は取り除いてしまう作業です。
さて、この作業について正直にお話しますと…、理屈はわかるのですが、せっかく出てきた芽を取ってしまう作業は正直やりたくないなぁ…!と、ちょっと抵抗がありませんか?(笑)。私はいつもとても抵抗があるので、個人的には実は必須の作業とはしていません!
弊店での芽かき作業をばらしてしまうと、芽かきを行っているのは実はハイブリットティ(大輪)系のバラのみです。理由は簡単で、ハイブリットティ(大輪)系のバラは、しっかり太い枝を1本出したほうが、花もきれいになる(大きく発色も良くなる)し、なにより大輪系は、花枝が重くなるので、2本、3本残しておくと、新芽の出てきた元の枝が重さに耐えられなくなり、株姿が乱れてしまうからです。芽かきをしたほうが、花後の剪定もしっかり太った1本のみを剪定するので悩まないで済みます。
一方で、フロリバンダ(中輪)系やシュラブローズ、ミニバラでは実はほとんど芽かきをしていません。枝数が増えすぎた場合は、花後の剪定で調整しています.
例外としては、枝全体でたくさん新芽が出てきた場合、重なりそうな内向きの芽などを少し間引いて、全体の芽数を少し減らします。そのほうが残った枝の生長を促しますし、風通しや日当たりが良くなり、結果的に病気になりにくくなります。
もうひとつ例外として、分枝が良いので新芽をたくさん出してかつ、細枝にも花芽をつけやすい品種は優先して芽かきをしています。
具体的に最近の人気品種だと、ボレロ(フランス;メイアン)、縁(ゆかり)(イギリス:ハークネス)やソワイユ(日本:京阪園芸)などです。
これらの品種は、分枝が良く細枝にも花を付けやすいので、芽かきをしないでいても見事な満開になりますが、そのぶん枝が育たず、花後の剪定の時に細枝ばかりたくさん残ってしまうからです。
こういった品種はあらかじめ芽かきを行い、育てたい新芽を限定しておくのがいいと思います。
もしこの芽かき作業をやる場合は、新芽がある程度大きくなると1本なのか2本なのか、見分けが付けにくくなる(枝が込み合っている状態)し、指で簡単にもげるのも芽出しの時期だけなので、芽が出てきたらなるべく早く実施したいですね。
薬剤散布を始める時期はいつ?
『病気の出る時期には殺菌剤を散布しているのだけど、全然病気が止まりません。』と開花シーズンによく尋ねられます。すでに病気が出ている人にお伝えするには心苦しいのですが、今はまだ3月ですから病気が出ている人はおそらくいないだろうと思いますので、はっきりとお伝えします(笑)。殺菌剤散布の基本は予防散布です。
バラ栽培は、病気を出さないように予防の薬剤散布をすることが重要です。3月になると、芽が出て葉が展開してきます。この芽出しの時期に、病害虫防除のための薬剤散布をすると前年から越冬した病害虫が活動を開始する前に先手を打てますので、春先の病害虫の発生を抑える(遅らせる)ことに繋がります。結果的に、春以降の薬剤散布の回数を減らせることに繋がり手間を省けるのでおすすめです。ブリリアントガーデンフローラガードALなど、気軽に使用できるハンドスプレーがご自宅に1本あると安心ですね。
暖かくなり、バラの新芽が動き出す3月はバラの生命力の強さを感じることのできるワクワクの季節です。
私の住んでいる那須は寒いので、残念ながら寒さが凍みて枯れてしまうバラもあり、新芽が吹いてくると一安心できる時期でもあります。
ですが同時に、春を待っていた病害虫も動き出します。3月は、うどんこ病やアブラムシに注意してくださいね。
ぜひ今春も(今春こそ?)健康な株に育てて、春を迎えましょう!
那須ヒロガーデン店長 高木 大輔
大手種苗メーカー営業担当の後、那須ヒロガーデンにて勤務
バラの8号鉢植えの開花株を中心に年間6,000株以上を提供。
バラの新品種の研究に余念がなく多くの品種を実際に栽培し、特性を見極め販売されている。
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