ランの世界を楽しむ 世界らん展2021 ―花と緑の祭典―から
毎年2月に開催されていた「世界らん展」、今年は会場を東京ドームから隣の後楽園プリズムホールへと変更して、3月25日~31日に開催されました。入場は事前予約制となり、徹底した感染防止対策を施しての開催でした。実際、会場が人で埋まるようなこともなく、ゆったりと受賞花や展示花を観賞することが出来ました。主な受賞花やらん展の様子をお伝えします。
- 目次
その前に、「世界らん展」がどんなイベントなのか、おさらいしておきましょう。1987年に日本で開催された「第12回世界蘭会議」、この展示部門が向ヶ丘遊園で開催され、40万の来場者を数え大成功したことを起点に、1989年東京ドームで現在の世界らん展のはじまりである、「Japan Prize 蘭 International Orchid Show’89」が開催され、以降、毎年2月に東京ドームで「世界らん展―日本大賞」として親しまれてきました。洋ランだけではなく、シュンラン、カンラン、エビネ、セッコクなどの和蘭や野生蘭などを一堂に集めて楽しめるイベントは、世界に類はなく、フレグランス部門を審査に取り入れたのもこのイベントがはじまりなど、国際的にも知られる質の高い大規模なランの展覧会として歩んできています。
さて、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、開催時期が3月になったということで、今までの長いらん展の歴史の中でも初めての試みとして、「スプリング“蘭”ウェイ~春色“えびね”」と題して、エビネがフューチャーされていました。大量のエビネの開花を早めることは2月では厳しかったのですが3月なら大丈夫、ということで入り口を入ると通路の両側に、品種改良を重ねたエビネが咲き乱れていました。日本のラン・エビネをこれだけたくさん観賞できる機会はそうありません。そして、エビネの花の多様性を十分に見せてくれました。
エビネのコーナーを抜けると、受賞花が並んでいました。部門賞の日本大賞、優秀賞、優良賞、奨励賞、トロフィー賞の各花です。どの花もみなさんが手塩にかけて育ててきた花々です。厳正な審査を経て、結果、賞には差がでてしまいますが、どの賞に限らず、きれいに咲いているランの姿は美しいものです。まずは、大賞、優秀賞、優良賞です。
上位受賞花以外、奨励賞やトロフィー賞にも魅力的なランがたくさんありました。その中には、私たちが普段見慣れているランとは違った、個性的なランもあり、ランという植物の多様性を、実際に見せてくれました。
また、受賞花だけではなく、カテゴリー別にたくさんの花が展示されていました。カトレアやパフィオペディラム、シンビジュームといった馴染みのある洋ラン類から、エビネ、シュンラン(春蘭)、セッコク(石斛)といった日本のランまで、原種からさまざまな品種が展示されていました。そして、出品者が自信をもって出している素晴らしい株ばかりです。
販売スペースでは、海外からの出店はありませんでしたが、国内で名前を聞いたことのあるお店がいくつも出ていました。知り合いに話を聞くと、好きな人は規模や開催概要に関係なく、展覧会に来て植物を買っていくとのこと。浮動的な来場者は減っても、好事家は足を運んでいて、売り上げもそうひどく落ちていないようです。ジャパンフラワーセレクションといった、ランではない花の紹介コーナーもあり、今年は基本ランに特化しているとはいえ、それでも幅広く楽しめました。
来年はどうなるか、新型コロナウイルスの状況等でまったく何一つ確定できることなどないとは思いますが、30年以上続く、日本で最大の花のイベントです。コロナ禍が収束していつものように東京ドームでの開催が期待されます。そして、世界から人や花も参加して、これまでのような国際展覧会として復活してほしいと願っています。
ご紹介
文・写真 出澤清明
園芸雑誌の元編集長。植物自由人、園芸普及家。長年関わってきた園芸や花の業界、植物の世界を、より多くの人に知って楽しんでもらいたいと思い、さまざまなイベントや花のあるところを訪れて、WEBサイトやSNSで発信している。