北海道帯広発! 紅葉美術館 カエデの紅葉はまるでアート
北海道の紅葉(黄葉も含む、以下同)は平地でもすでに終わりましたが、その色の妙は見る者を感動させてくれます。しかし、紅葉というと景色で見るか、せいぜい木単位でみることがほとんど、1枚1枚の葉をじっくりと眺めることは、案外ないと思います。
今回、北海道帯広市にある真鍋庭園の真鍋憲太郎さんから、カエデの種類ごとの紅葉の違いが素晴らしいと話を聞き、写真を提供してもらいました。
いかがですか、まるでアートの世界へ入り込んだような気になりませんか。この色と形の多様性、自然が生んだ種類ばかりではなく、品種改良から生まれたものも含まれていますが、それでも私はただただ感動してしまいました。まずは、カエデの葉一つひとつの紅葉の魅力をじっくりとご覧ください。
春のモミジの芽だしの鮮やかな多様性に、日本人は江戸の昔からたくさんの品種を作出し、愛でてきました。しかし、同じ仲間でもそれとも違うカエデのいろいろ、イタヤカエデなどの日本のカエデだけではなく、ノルウエーカエデやネグンドカエデなど、西洋カエデも含めてその多様性にあらためて感心してしまいました。
さて、そもそも紅葉って何でしょう。Wikipediaによれば、主に落葉広葉樹が落葉の前に葉の色が変わる現象、のことです。単なる落葉前の葉の変化でしかありません。ではなぜ、緑の葉が、いきなり茶色く枯れずに私たちが見て美しいと思える色に変化するのでしょう。真鍋憲太郎さんに紅葉についていろいろと教えてもらいました。
紅葉のメカニズム
一般に、植物には葉緑素=クロロフィルがあって、そこで光合成をして成長のエネルギーに変えています。春から夏にかけては、その光合成が盛んに行われ植物体が成長しています。ところが、秋が近づくと成長期を終え、木々の自己防衛として、落葉の準備を始めます。
そして、それまで吸い上げていた水分は根から下がり、葉っぱの表面にある気孔からも水分が蒸散し、葉緑素が分解されてしまいます。そうなると元からある黄色い色素=カロチノイドが目に付くようになります。さらに寒さが厳しくなって寒さに当たる頃になると、それまで光合成で溜め込んだ赤い色素=アントシアニンが葉に出てくるようになり、鮮やかな紅葉になります。しかし、この赤色が来る前に水分が抜けきってしまうと茶色のカサカサだけが残ってしまいます。台風や強風、潮風などの影響でダメージを受けるとよい紅葉にならずに茶色の枯葉へとなってしまうこともあります。
紅葉のよしあし
よくその年の気候が紅葉のよしあしを決めるといいますが、そう簡単ではありません。実は紅葉が気候に左右されやすいタイプAと、されにくいタイプBがあります。日本でよく知られるイロハカエデ、ヤマモミジは、北米のサトウカエデやギンカエデと同様、タイプAです。逆に、黄色にしかならないエゾイタヤとか赤紫にしかならないメグスリノキのような原種、サンゴカクのような黄葉になるもの、赤~朱色にしかならないベニカエデの品種のほとんどなどはタイプBになります。
気候に左右されやすいタイプAは,夏にどれだけ光合成ができたか、水分の抜けるスピード、寒さに当たってアントシアニンがどれだけ生成されたかなどの条件で、紅葉の度合いが変わります。例えば、緑色のまま赤色が載ると、緑~紫~赤で暗い紅葉度合いになります。逆に、黄色になってから赤色が載ると、黄~橙~赤で見た目の鮮やかな紅葉になります。緑、黄色のうちに茶色になると、美しい紅葉が望めないという結果になります。
そして、気候に左右されにくいタイプBは、水分の抜ける速度によって紅葉の期間の長短はありますが、色は安定して変わらないのです。ことほど左様に、カエデと一口にいっても色だけでなく、紅葉の度合いも同じではありません。
家庭で楽しめる紅葉
一般のご家庭では、わい性や枝垂れ性の種類をおすすめします。スペースを大きくとることなく紅葉を楽しめます。樹木の導入では、最終的な樹高や樹幅をよく確認してから植えてください。北欧米産や生育の早い種類、樹液の甘い種類は、落葉期に根元から1メートルの高さぐらいまで、石灰硫黄合剤の塗布をおすすめします。ただし、硫黄の匂いが2日くらいは漂うので、周りへの配慮は必要です。虫害の可能性もあるので、単幹ではなく株立ちになる種類を選ぶのもおすすめです。
そして、きれいな紅葉を期待しての選択ならば、気候や環境に左右されにくいタイプが関東地方以西の平地ではおすすめです。北海道や高地で美しく紅葉する種類は、環境で左右されるタイプですと平地では期待するような紅葉にならない可能性があります。
真鍋庭園
60年以上前から収集し植栽している、樹木を主にした数千品種のコレクションを楽しめるガーデンです。北海道ガーデン街道の一つとして、春から秋まで多くの人が樹木の魅力を楽しんでいます。紅葉は、毎年9月下旬から11月上旬まで、さまざまな種類の木々が楽しめます。来年はぜひ、カエデの葉の紅葉アートを楽しみに行ってみてください。
(写真提供:真鍋憲太郎、構成・文 Deru)