東京花散歩 新宿御苑2021開園 満開のサクラそして春の花たち
日中はポカポカ陽気で春本番を感じさせる3月下旬、東京のサクラの名所として知られる新宿御苑にサクラを見に行ってきました。新型コロナウイルス感染拡大の中、年始早々の緊急事態宣言を受けて年末年始の休苑が延長され、結果として今年初めて開苑できたのは、3月23日です。
神代植物公園など都の施設や昭和記念公園が臨時休園を延長し、代々木公園や上野公園でも、いつもとは違う規制のある中、感染防止対策として、事前予約制を取り入れ、入苑者を規制して、少しでも安心してサクラを楽しめるように配慮された新宿御苑でした。
23日の午前9~10時の事前予約を取り、さっそく入苑しサクラを観てきました。新宿御苑のサクラは改めてみると、たくさんの木があって見どころが多く、そして大木が多いのも特徴です。ソメイヨシノがもうすぐ満開というタイミングで、新型コロナウイルス禍の中でサクラを思うように観られない方々に申し訳ないくらいの素敵な景色を見せてもらいました。
この時期ばかりは、ヒマラヤシーダやメタセコイア、ラクウショウやユリノキ、ケヤキ、プラタナスといったソメイヨシノを凌駕する大木も、ソメイヨシノの前に全然目立ちません。それに入苑規制をしているせいか、昼近くになると確かに人は増えましたが、敷地が広いだけに人だらけというほどにはなっていませんでした。新宿門の外には順に入苑するための列ができていましたが。
この時期は、まだまだ満開には早い時期ですが、例年より1週間から10日早い開花で、ソメイヨシノやオオシマザクラ、ヤエベニシダレやタカトウコヒガンサクラやエドヒガンが満開近く、シダレザクラやヨウコウ(陽光)、ヨコハマヒザクラ(横浜緋桜)が終わりかけでした。
人々の関心も、母と子の森や日本庭園には薄く、大温室もあまり多くの方はいませんでした。もっとも、換気のためもあって各所で開放されている温室ですが、それでも中は暑いくらいでしたから、気持ちのよい屋外で過ごす方が気持ちよいのもあるでしょう。サクラを見ながら、ゆっくりと過ごす、それができるだけでも感謝しないといけませんね。
野草好きの私としては、サクラばかりに目を向けず、足元や林地などにも目を向けてきました。母と子の森や木々の根元、そして苑外になりますが、玉川上水・内藤新宿分水散策路などにも野草の類が見られました。スミレ、シャガ、ヒメオドリコソウ、ハコベなどあまり関心を持たれない野草たちにたくさん出会えました。
4月に入ると、サトザクラ系の華やかなサクラが咲き出します。カンザン(関山)、イチヨウ(一葉)、フゲンゾウ(普賢象)、そして緑の花が咲くギョイコウ(御衣黄)などです。ソメイヨシノとはまた違った素敵な景色が見られます。事前予約制もサクラに合わせて4月下旬まで続くようです。
昨年、今年と日本の春、サクラの春を思う存分楽しめない状況はまだまだ続きますが、感染防止を最優先にしながらも機会があればサクラを愛でてもよいと思います。日本の春はサクラなくしては始まらない、といっても過言ではないでしょう。
文・写真 出澤清明
園芸雑誌の元編集長。植物自由人、園芸普及家。長年関わってきた園芸や花の業界、植物の世界を、より多くの人に知って楽しんでもらいたいと思い、さまざまなイベントや花のあるところを訪れて、WEBサイトやSNSで発信している。