開園20周年 気軽に高山植物を楽しむ、白馬五竜高山植物園
北アルプスを望む白馬村神城、ここに登山やトレッキングの装備がなくても手軽に本格的な高山植物を楽しめるスポットがあります。白馬五竜高山植物園です。今年、開園20周年を迎え、これまで多くの人々に高山植物の魅力を伝えてきました。
東京での新型コロナウイルス感染拡大の影響等で、私は行くことができませんでしたが、2018年に訪れたときの様子をご紹介しながら、高山植物の魅力をお伝えしたいと思います。
1950年に神城スキー場として誕生し、標高1515メートル超えにあるアルプス平ゲレンデを、夏の間、高山植物園として活用すべく植栽を始め、2000年に「五竜アルプス山野草園」として開園、2010年に「白馬五竜高山植物園」へと改称し、さまざまな植物エリアを造成しながら今に至ります。
北アルプスを背景に花を楽しむ
3,000メートル級の山々が連なる北アルプスですが、そこに自生する高山植物を見るためには、基本登山装備、あるいは場所によってですが、少なくともトレッキングの装備くらいは必要なところがほとんどです。しかし、ここ白馬五竜高山植物園の整備された園路であれば、年齢や格好を問わず、誰でも園内を巡ることが可能です。
ここで見られる高山植物は6月から10月にかけて、300種以上200万株に上ります。さっそくどんな高山植物に出会えるのかご紹介しましょう。
山麓のエスカルプラザから五竜テレキャビンに乗って1515メートルにあるアルプス平へと向かいます。キャビンを降りれば目の前には、五竜岳、唐松岳、白馬三山が迫り、ゲレンデは高山植物の宝庫であることがわかります。
ここでは、自然のままの草原の花畑を眺めたり、大規模なロックガーデンには、スイス・アルプスやヒマラヤ、そして日本の貴重な高山植物たちが花を咲かせています。
また、ロックガーデンの上部にある白馬連峰高山植物生態圈は、信州大学名誉教授土田勝義氏監修の元、白馬岳(しろうまだけ)付近で見られる高山植物が植栽され、登山せずとも貴重な種類を見ることができます。
さらに、自生の姿を手軽に体験できる、アルプス平自然遊歩道や、それなりの装備が必要ですが、さらなる自然を体感できる小遠見トレッキングなど、高山植物について、さまざまなことが自分の五感で学べる植物園です。
ヒマラヤの青いケシやコマクサに注目
特に注目は、地植えで咲くヒマラヤの青いケシ、メコノプシスと、ロックガーデンで群生するコマクサです。メコノプシスは栽培が難しく、わが国でも地植えで数多くの花を咲かせる場所はそう多くはありません。
コマクサは高山植物の女王とも言われる、人気のある花です。しかし、野生のコマクサが見られるスポットは、登山やトレッキングが必要なところばかりなので、植栽とはいえ、自生に近い姿をこの規模で見られるのは、私は他に知りません。
園内を目一杯歩き尽くせば、かなりの数の高山植物を知ることができます。とは言っても、季節によって花の種類は異なります。6月下旬から7月半ばはメコノプシスやコマクサが咲き花のピークですが、ウルップソウやクロユリ、チングルマの咲く初夏や、オヤマリンドウやマツムシソウの咲く初秋、そして紅葉など、季節ごとに訪れると楽しみも倍増します。
これらの高山植物、平地でも鉢栽培や一部露地でも花は見られますが、やはり北アルプスの自然の中で見る姿は格別なものがあります。新型コロナウイルス感染拡大が続きますが、万全の感染症対策をとった上で、今年の秋、そして来年こそは、大きな大きな自然の中に身を置いて、高山植物と戯れるのも素敵な時間だと思います。
21年目を迎え、さらなる進化を遂げる日本を代表する高山植物園「白馬五竜高山植物園」に期待したいと思います。
白馬五竜高山植物園
https://www.hakubaescal.com/shokubutsuen/about/
写真提供:*印 坪井勇人(白馬五竜高山植物園)
取材・構成・文・撮影 出澤清明
園芸雑誌の元編集長。植物自由人、園芸普及家。長年関わってきた園芸や花の業界、植物の世界を、より多くの人に知って楽しんでもらいたいと思い、さまざまなイベントや花のあるところを訪れて、WEBサイトやSNSで発信している。