スイセンの育て方|基本の栽培方法や増やす際のポイント 国内の名所をご紹介!
スイセンの見ごろは11月から4月にかけて訪れます。毎年、スイセンの開花を楽しみに待っている方も多いのではないでしょうか。
スイセンは栽培の手間がかかりにくく、育てやすい植物のひとつです。お好きな方は、ぜひご自宅に植えて育ててみましょう。
今回は、スイセンの基本的な育て方や増やし方をお伝えします。
また、数えきれないほどのスイセンを鑑賞できる国内の名所もご紹介するため、ぜひ参考にご覧ください。
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スイセンの育て方|花の魅力や特徴
スイセンは11月~4月にかけて花を咲かせる多年草です。開花した後は葉を枯らして、球根のみの状態で夏越しします。
涼しくなってきたら再び芽を出し、花を咲かせることが特徴です。
何年か植えっぱなしにしていても問題なく、お手入れの手間がかかりにくい点も魅力となります。
ニホンズイセンをはじめ、日本の気候に合う品種が揃っています。
原産地は地中海沿岸の地域といわれています。世界各地で古くから親しまれている花のひとつで、ギリシャ神話にもスイセンの花が登場しています。
スイセンの花の特徴
スイセンの花の中心には「副花冠(ふくかかん)」と呼ばれる部分があります。副花冠の色や形は品種によってさまざまです。
たとえば、よく見られるニホンズイセンの場合は花びらが白色で、副花冠は黄色です。
黄房スイセンは花びらが黄色で、副花冠は花びらよりも濃いオレンジ色をしています。
花びらと副花冠の色の組み合わせも豊富なため、お気に入りの品種をきっと見つけられるでしょう。
スイセンの主な種類
スイセンは大変品種が豊富です。それぞれ特徴が異なり、八重咲きスイセン、ラッパズイセン、房咲きスイセンなど、さまざまな系統に分けられています。
八重咲きスイセンは、花びらが重なった華やかな姿が特徴です。ゴージャスな花を楽しみたい方におすすめできます。
ラッパズイセンは花びらよりも副花冠のほうが長い、もしくは同じ程度の長さであることが特徴です。房咲きスイセンは、ひとつの花茎に花が房状につきます。
ほかにも、副花冠の縁が赤い口紅スイセンや、シクラメンのように下向きに咲くシクラメン咲きスイセンなど、多彩な種類があります。お好みの姿を持つ品種を探して育ててみましょう。
球根の毒
スイセンは毒性を持つ植物です。誤って食べてしまうと中毒症状を起こすことがあります。
特に気をつけたいのが、毒が多く含まれている球根部分の管理です。
家庭菜園をされている方が玉ねぎと間違えて食べたり、小さいお子様やペットなどが掘り起こして食べてしまったりする可能性もあります。
誤食には十分に気をつけましょう。
スイセンの香り
スイセンは香りの良さでも知られています。上品で透明感のある甘い香りを漂わせることが特徴で、香水の原料としても人気です。
スイセンは品種によって香りが異なるといわれています。
たとえば、甘い香りが強めのタイプもあれば、甘さのなかに爽やかなグリーン系の香りを持つタイプも見られます。
また、品種ごとに香りの強さも異なります。スイセンの香りがお好きな方は、芳香を楽しめる品種を探してみましょう。
スイセンの育て方|土づくりや苗選び、植えつけ
スイセンは丈夫で育てやすい植物です。球根や苗を入手して、お庭やベランダに植えて育てていきましょう。
こちらでは、スイセンの好む栽培環境や植えつけ方法などを解説します。
スイセンの好む栽培環境
スイセンの花をきれいに咲かせるためには、日光がよく当たる場所へ植えつけることが大切です。
日当たりの悪い場所では花つきが悪くなってしまうこともあるため気をつけましょう。
ただし、開花後に強い直射日光が当たるような場所では地温が高くなりすぎ、球根が肥大しにくくなることがあります。
木漏れ日の当たる落葉樹の下などが適しているでしょう。
球根の選び方
球根を見て選べるときは、なるべく大きいものを探しましょう。しっかりと肥大したスイセンの球根は丸みを帯び、電球のような形をしています。
あまり肥大しておらず細長い形をしている球根は、植えつけても花がつかない可能性があるため気をつけましょう。
また、傷がついていないか、腐ったり病気にかかったりしていないかも確かめます。
持ったときに軽く感じるものより、ずっしりと重いものを選びましょう。
苗の選び方
スイセンは秋の球根からでも気軽に育てられますが、苗を購入して植えつけすることも可能です。
その後の育てやすさを考慮し、元気な苗を選ぶのが大切です。
スイセンの苗は、1月ごろから販売されはじめます。ホームセンターや園芸店などで、苗を直接見て選びましょう。
まず、虫がついている、葉が変色しているなど、ひとめ見てわかるような異常がある苗は避けるのが基本です。
同時に売られている苗を見比べて、茎や葉の色があせているものも除外します。
また、株がぐらつくことなくしっかりと立っており、徒長していないかも調べます。
良さそうな苗を見つけたら、最後に葉の裏や茎をよく見て、虫がついていないかを確認し、購入しましょう。
土づくり
スイセンは水はけのよい土を好みます。排水性の悪い用土では軟腐病を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
鉢植えの場合は元肥として緩効性肥料マグァンプKが配合されている『ハイポネックス培養土 鉢・プランター用』がおすすめです。
水はけが悪いと感じたときは砂やパーライトを足すことで改善されることがあります。「球根用」と書かれた培養土もあります。
地植えの場合には日当たりと水はけのよい場所を選び、あらかじめ堆肥や腐葉土をすき込んで耕しておきます。
水はけが悪いときは、川砂も加えて水はけを良くしてください。あらかじめ元肥として『マグァンプK中粒』を施しておきましょう。
植えつけ
スイセンの球根の植えつけ適期は10月~11月にかけてです。ニホンズイセンは開花時期が早めなため、9月下旬~10月上旬に植えつけることがおすすめです。
あまり遅くなると地温が低くなり、発根しにくくなるため気をつけましょう。苗を植える場合は、入手したらすぐに花壇や鉢などへ植えつけます。
スイセンは土の中で分球して増えていきます。複数株を植える場合は株間をしっかりとあけておきましょう。
株間は10cm~15cm程度ですが、大きめの球根であれば20cmほどとることがポイントです。
また、球根のサイズによって植えつける深さも異なります。小さめの球根には6cm~7cmほど、大きめの球根には10cmほど土をかぶせましょう。
水耕栽培
スイセンは土を使わない水耕栽培(水栽培)で育てることもできます。部屋の空いたスペースで少しだけ育てたい場合などにおすすめです。
水耕栽培を始めるときは、水をためられる容器に球根をセットします。このとき、底の部分がわずかに水につく程度に調整することが大切です。
水が濁らないようにこまめに取り替えながら管理していくと、徐々に根が伸びてきます。
根が長く伸びた後は、球根の底が空気に触れるように水位を調整します。順調にいけば2カ月~3カ月ほどで花芽がつくでしょう。
水耕栽培の肥料には液体肥料『微粉ハイポネックス』がおすすめです。
植物の株を丈夫にするカリ成分を多く含み、また、カルシウムの働きにより強健な植物に育てます。
スイセンの育て方|日々の管理について
スイセンを植えつけたら、水や肥料を与えながら育てていきます。スイセンの性質に合わせたやり方でお手入れを続けましょう。
ここでは、日々の管理のポイントについてご紹介します。
水やり
スイセンは過湿を嫌う植物です。水を過剰にあげてしまうと、球根が腐ってしまう可能性があります。適切な頻度と量を守って水やりしましょう。
地植えしている場合は降雨に任せ、ほとんど水やりしなくても問題ありません。
ただし、雨が降らない日が続いて極端に乾燥しそうなときは水をあげましょう。
鉢植えの場合は、土の表面が乾いてから水を与えます。鉢底から流れ出るくらいたっぷりと与えましょう。
肥料
スイセンが花を咲かせるためには、球根が十分に肥大していることが求められます。
日光に当てたり水を与えたりするのと同時に、肥料を施して球根を肥大させましょう。
植えつけの際は元肥として緩効性肥料『マグァンプK中粒』を土に混ぜ込みます。
発芽後は追肥として速効性の液体肥料『ハイポネックス原液』を1週間~10日に1回の頻度であたえます。
花後にもお礼肥として液体肥料『ハイポネックス原液』を施します。
また、植えつけ直後からチッソの多い肥料を与えると、花つきが悪くなってしまう可能性があります。
チッソ・リンサン・カリがバランスよく含まれた肥料『ハイポネックス原液』を使うことがポイントです。
アブラムシ対策
スイセンを育てているとウイルスが原因となるモザイク病が生じることがあります。
主にアブラムシがウイルスを媒介するため、予防のためにはアブラムシ対策をしっかりと行うことが大切です。
アブラムシはごく小さな虫で、柔らかい葉や芽などに大量発生することがあります。
見つけたらすぐに駆除しましょう。防除効果のある薬剤を使うこともおすすめです。
また、アブラムシは日当たりや風通しの悪い場所でも発生しやすいといわれています。
密植を避け、日当たりと風通しの良いところを選んで植えつけましょう。
『虫を予防するマグァンプD』は肥料やり+害虫の予防・退治が同時にできるのでおすすめです。
花後の手入れ
スイセンは冬から春にかけて花を咲かせ、夏になると枯れていきます。
見た目が悪くなるため、花後に葉をすべて切り取ってしまいたくなる方も多いのではないでしょうか。
ただし、スイセンは花が終わってからしばらくの間、葉で光合成をして球根に栄養をためていきます。
すぐに葉を切ってしまうと光合成ができないため、枯れていない葉はカットしないようにしましょう。
また、ニホンスイセンのように結実しない品種もありますが、放置していると種をつくりはじめる品種もあります。
そのままにしておくと球根を肥大させるためのエネルギーがとられてしまいます。
種を採らない場合、咲き終わった花がらは摘み取っておきましょう。
植え替え
スイセンはしばらく植えっぱなしでも問題ない植物ですが、球根が増えてくると土の中が混雑します。
地植えの場合、3年~4年に1回は掘り上げて球根を分けましょう。
鉢植えの場合は毎年植え替えることがおすすめです。葉が枯れた後に球根を掘り上げましょう。分球していたら手で割り、別々に植えつけます。
スイセンの育て方|増やし方について
スイセンは基本的に球根をつくる植物で、ご自宅でも簡単に増やせます。ぜひ丁寧に管理して増やし、たくさんのスイセンを楽しみましょう。
ここでは、スイセンの増やし方をご紹介します。
球根を掘り上げるまでの手入れ
スイセンを増やすときは、球根に十分な栄養を与える必要があります。
花が終わってからも、茎や葉が枯れるまでは変わらずに水やりを続け、日に当ててあげましょう。
その際に1週間~10日に1回、液体肥料『ハイポネックス原液』を与えて、球根を成長させましょう。
枯れてきた葉は切り取ってかまいません。
基本的に、スイセンは植えっぱなしにしておいても子球をつくって増えていきます。
花壇や鉢に植えたまま放置しておいても、翌シーズンに再び開花するスイセンを楽しめるでしょう。
ただし、植えてから3年~4年たつと、土の中に球根が増えすぎて株どうしの間隔が狭くなってしまいます。
密植状態になると球根も十分に大きくなれないため、植え替えが必要です。
球根の分球
球根を掘り上げて保管しておきたい場合は、花が終わってもしばらく植えたままにしておき、栄養を蓄えましょう。
掘り上げるタイミングは、土から出ている葉や茎が枯れはじめたときです。
球根を掘り上げたら土を落とし、親球についた子球を取り分けて分球します。自然に割れそうな部分を手で分けるのがおすすめです。
小さすぎる子球は、植えてから花が咲くまで数年かかることがあるため気をつけましょう。
分球したら、次の植えつけまでは風通しの良い日陰で保管します。球根をしっかりと乾かし、余計な葉を取ってから、ネットに入れて保管しましょう。
種の採取
スイセンには「ナルキッスス・バルボコディウム」をはじめとして、種をつくって増えるものがあります。
種を採取したら、すぐに同じ用土にまく「とりまき」を行いましょう。
ただし、種まきしたスイセンは、発芽が翌年の秋~冬、開花にいたっては3年以上かかるのが基本です。
育てるのに根気が必要なため、できるだけ早く花を増やしたい方には向いていません。
じっくりと育てたスイセンを開花させる感動を味わいたい方は、ぜひ試してみましょう。
日本の主なスイセンの名所
スイセンの見ごろは11月~4月にかけてです。日本では各地にスイセン畑があり、花の季節になると、咲き誇るスイセンの姿を鑑賞できます。
スイセンの季節になったら名所を巡って、美しい花畑を堪能してみましょう。ここからは、日本各地にあるスイセンの名所をご紹介します。
葛西臨海公園
東京都近辺にお住まいの方におすすめなのが、「葛西臨海公園」です。公園では、毎年20万輪のスイセンが敷地内に植えられます。
スイセン畑の広さは、東京都23区最大の規模となるそうです。
公園内には大きな観覧車や水族園などもあるため、ご家族でのお出かけにもおすすめです。
また、「葛西臨海公園」では毎年1月~2月に「水仙まつり」が行われます。期間中はさまざまなイベントがあるため、お花の鑑賞と併せて楽しみましょう。
野比海岸 水仙ロード
野比海岸は、横須賀市の北下浦にあります。海岸沿いの歩道にあるのが「水仙ロード」です。
200万株のスイセンが歩道沿いに植えられており、爽快な海の景色と共に花の姿を鑑賞できます。
毎年1月中旬になると「水仙ウォーク」や「水仙まつり」などのイベントも行われるため、お近くの方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
下田爪木崎
伊豆の青く澄んだ海と砂浜、そして300万本のスイセンの花が楽しめる「下田爪木崎」は、静岡県でも人気の観光スポットです。
高台から全景を眺めるもよし、海の近くまで降りて花を間近で鑑賞するもよし。色鮮やかな海とスイセンのコントラストが味わえます。
毎年12月の下旬から「水仙まつり」が始まりますが、見ごろは1月になってからです。
また、同時期にはアロエの花も咲き誇ります。お出かけの際は、ぜひふたつの花を堪能してみましょう。
男木島灯台
「男木島灯台」は、香川県高松市の男木港にあります。1895年に点灯された、歴史ある石造りの灯台です。
瀬戸内海を見渡すようにたたずむ灯台の姿は、それだけでも絵になりますが、さらに圧巻の光景をつくりだしているのが1100万本のスイセンです。
遊歩道沿いに植えられたスイセンを眺めながら、男木島散策をしてみてはいかがでしょうか。
おわりに
冬から春にかけて花を咲かせるスイセン。たくさんの品種があり、さまざまな色や形の花を楽しめることが魅力のひとつです。
育てやすい植物のため、ガーデニング初心者の方にもおすすめできます。管理方法に気をつけて増やし、ぜひたくさんの花を楽しみましょう。
また、各地のスイセン畑へ行き、広々とした空間で育つスイセンの花を楽しむのもおすすめです。スイセンの季節を存分に楽しみましょう。
公開:2019.12.13
更新:2021.02.19
更新:2024.07.01