更新日:2020.09.11
家庭菜園やガーデニングに欠かせない!肥料の基礎知識
植物を育てる際に欠かせないのが肥料です。肥料は、植物が育つのに必要な栄養を補うために使われます。ただし、肥料にはさまざまな種類があるため、とくに初心者にとってはわかりにくい点も多いのではないでしょうか。今回は、肥料の基本的な知識を幅広くご紹介します。これからガーデニングや家庭菜園を始める方は、ぜひこちらの記事をお役立てください。
肥料に含まれる3要素
植物に与える肥料には、さまざまな成分が含まれています。その中でも、とくに重要とされるのが「チッソ」「リンサン」「カリ」の3つです。それぞれにはどういった特徴があるのでしょうか。まずは、肥料の3要素に関する知識をご紹介します。
チッソ(N)
チッソは元素記号Nで表される成分です。「葉肥え」と呼ばれることもあります。植物の茎や葉を伸ばすために使われる成分ですが、適量を超えて与えてしまうと徒長の原因にもなります。
リンサン(P)
リンサンは元素記号Pで表される成分です。「花肥え」や「実肥え」と呼ばれることもあります。花や実を充実させるために使われます。
カリ(K)
カリは元素記号Kで表される成分です。「根肥え」と呼ばれることもあります。カリを与えて根をしっかりと育てることで、植物全体が元気になります。
単肥と複合肥料の違い
肥料は、含まれる成分によって「単肥」と「複合肥料」に分けられます。単肥とは、主に「チッソ」「リンサン」「カリ」のうち、ひとつだけ含まれている肥料を指します。それぞれの特性に合わせて単肥のみを施すことはもちろん、自分で肥料を配合する場合にも使われるのが特徴です。
複合肥料とは、「チッソ」「リンサン」「カリ」のうち、2種類以上が含まれている肥料のことです。ガーデニングや家庭菜園では、複合肥料を使う機会が多くなります。単肥は調整が難しく、与え方によっては植物を弱らせてしまうこともあるためです。とくに初心者の場合は、バランス良く成分が配合された複合肥料を使うのがおすすめです。
化成肥料の基礎知識
化成肥料とは、単肥や肥料の原料、複合肥料などを化学的に製造した肥料のことです。ただ成分を混ぜるだけでなく、粒や液体、粉などに成形する加工を施しています。こちらでは、化成肥料に関する知識をご紹介します。
原料となる物質
肥料は化学合成の副産物、純度の高いものを原料としていますが、リン鉱石などの自然界に存在する物質から原料としている肥料もあります。
普通化成肥料と高度化成肥料の違い
化成肥料には、「普通化成肥料」と「高度化成肥料」の2種類があります。違いは肥料に含まれる成分の配合量です。
・普通化成肥料
普通化成肥料とは、「チッソ」「リンサン」「カリ」の3要素の配合量が、全体の10~30%におさまるものを指します。よく見られるのが、それぞれを8%ずつ配合した肥料です。
元肥としても追肥としても使いやすく、幅広い植物に施肥されています。ガーデニングや家庭菜園なら、普通化成肥料を使うことが多いでしょう。
・高度化成肥料
高度化成肥料とは、「チッソ」「リンサン」「カリ」の3要素の配合量が全体の30%以上になる化成肥料のことです。それぞれ14%ずつ含まれているタイプが多く見られます。肥料となる成分量が多いことから、家庭菜園よりも農家や果樹園などで使われます。
メリット
化成肥料には以下のようなメリットがあります。
・安価で購入しやすい
大量生産可能な化成肥料は、ホームセンターや通販などで安価で購入できます。幅広い方が手に取りやすい点がメリットです。
・初心者でも使いやすい
化成肥料は肥料の3要素がバランス良く配合されているものが多く見られます。初心者にとって単肥をご自分で配合するのはハードルが高いため、こういった化成肥料を使うのがおすすめです。
また、化成肥料は一つひとつの粒や粉に、成分が均等に含まれています。一部だけに偏らず、土全体に施肥しやすい点もメリットです。
・ニオイが少ない
化成肥料は後述の有機肥料と異なり、ニオイがほとんどなく安心して扱えます。
デメリット
化成肥料のデメリットには以下のようなものがあります。
・土壌改良の効果が少ない
化成肥料は有機肥料と違い、土を改良する効果はあまり期待できません。土壌改良も行いたい場合は、有機肥料を併用する必要があります。
・たくさん与えすぎることがある
化成肥料は有機肥料と比較して、過剰に与えすぎてしまうケースが多く見られます。場合によっては植物が傷んでしまうことも。適量を守って使うようにしましょう。
有機肥料(有機質肥料)の基礎知識
有機肥料(有機質肥料)は、動物性もしくは植物性の原料を使用した肥料のことです。化成肥料と比べて扱いが難しいこともありますが、土壌の改良ができ、長期間効果が持続する点がメリットです。こちらでは、有機肥料に関する知識をご紹介します。
主な有機肥料の種類
有機肥料にはさまざまな種類があります。こちらでは、主な有機肥料の種類をご紹介します。
・油かす
油かすは、植物性の有機肥料です。菜種油や大豆油などを搾った残りかすを肥料として使います。原料によって異なるものの、基本的にはチッソを多く含みます。茎や葉を大きく茂らせたいときにおすすめです。使用時はガスや虫の発生に気をつけましょう。
・魚粉
魚粉は、魚を乾燥させてつくった肥料です。3要素の中では、チッソとリンサンを多く含みます。とくにチッソの速効性が高く、元肥のほか追肥としても使えます。使用する際は土の中へ混ぜ込んでおかないと、動物や虫が食べてしまうことがあるため注意が必要です。
・鶏糞
ニワトリの糞からつくられた肥料です。3要素をまんべんなく含んでいますが、とくにリンサンが多く、速効性もあるのが特徴です。アンモニア臭が気になるかもしれません。
・骨粉
ニワトリやブタなど、動物の骨を原料とした肥料です。リンサンの含まれる量が多く、じわじわと効果が長続きします。元肥として土に混ぜ込んでおくのが一般的です。
・草木灰
草や木の灰を利用した、植物性の有機肥料です。カリが多いものの、リンサンや石灰なども含まれています。土の酸度を調整するのにも使われます。風で飛んでいかないよう、土にしっかりと混ぜましょう。また、アルカリ性が強い商品が多く、化成肥料や有機肥料と混ぜるとアンモニアガスが発生する可能性があるため注意が必要です。
メリット
有機肥料には以下のようなメリットがあります。
・土壌が改良できる
有機肥料は土壌を改良できる効果が期待できます。肥料に含まれる成分が、地中の微生物のエサとなるためです。混ぜ込むことで土の通気性などが高まり、ふかふかとした感触になるでしょう。
・効果が持続しやすい
有機肥料は効果が長期間続くものが多く見られます。速効性を重視せず、少しずつ栄養を与えたいときにおすすめです。
デメリット
有機肥料のデメリットは以下の通りです。
・高価になりやすい
有機肥料は化成肥料と比べて高価なものが多くなります。肥料が完成するまでに手間とコストがかかり、化成肥料のように大量生産ができないためです。
・ニオイやガスが出ることがある
有機肥料を使うと、ニオイやガスなどが発生することがあります。肥料そのもののニオイも強いものがあるため、人によっては気になる場合もあるでしょう。
速効性肥料・緩効性肥料・遅効性肥料の違い
肥料は、効果があらわれるスピードや、持続する期間によって「速効性肥料」「緩効性肥料」「遅効性肥料」に分けられます。こちらでは、緩効性肥料と速効性肥料、遅効性肥料の違いをご紹介します。
効き方の違い
・速効性肥料
速効性肥料は、施肥の後からすぐに効果が見られる肥料です。そのかわり効果は長く持続せず、1週間ほどで切れてしまうものもあります。すぐに効果が欲しいときに利用するため、追肥やお礼肥として用いられます。
・緩効性肥料
緩効性肥料は、施肥の直後から一定期間効果が持続する肥料のことです。速効性肥料よりも長く持続します。肥料の種類により、3要素がまんべんなく効き続けるものもあれば、特定の要素のみが長く効くものもあります。緩効性肥料は元肥としても追肥としても使えます。化成肥料が多いため、含まれる成分もバランス良く配合されているものが多く見られます。初心者でも使いやすい肥料のひとつです。
・遅効性肥料
遅効性肥料は、施肥後ある程度の期間を経てから効果が出る肥料です。有機肥料が代表的な遅効性肥料で、効果が見られるまで1カ月ほどかかることもあります。そのため、元肥や寒肥などとして使うことが大半です。効果は長く持続します。
形状の違い
・速効性肥料
速効性肥料は、吸収の良い液体肥料としてつくられているものが多く見られます。液体の場合、水やりによって流れてしまうことが多いため、効果が切れるのがはやくなることがあります。何度も与える必要があるものの、施肥量の調整がしやすい点はメリットです。必要に応じて薄めて使いましょう。
★ハイポネックス原液
・緩効性肥料
緩効性肥料は、成分がすぐに溶けださないように表面をコーティングした粒状の化成肥料が多く見られます。土に混ぜるタイプや土の上に置くタイプなどがあるため、植物の種類や施肥の目的によって使い分けましょう。
★マグァンプK中粒
・遅効性肥料
遅効性肥料の多くは有機肥料です。粉や粒など、種類によって形は異なります。また、遅効性肥料には、成分が溶けにくい化成肥料も含まれます。こちらも製品によって形は異なります。
肥料を施すタイミング
肥料は一度にたくさん与えると、かえって植物の生長を阻害することがあります。そのため、数回に分けて施肥するのが基本です。
施肥はタイミングによって呼び方が変わります。最後に、肥料を施すタイミングについてご紹介します。
元肥(もとごえ)
元肥は、植物の植えつけ前に与える肥料のことです。「基肥(きひ)」や「原肥(げんぴ)」と表記することもあります。
元肥には土を改良する有機肥料や、効き目がゆっくりの緩効性肥料を使います。それぞれの肥料によって、土に加えるタイミングが異なります。ものによっては、植えつけの1カ月前から準備するものもあるため、はやめに調べておきましょう。
また、元肥をたくさん与えてしまうと、根が傷んでうまく育たない可能性があります。最初から栄養を過剰に与えないよう注意し、適量を施すように意識しましょう。
元肥といえば、マグァンプK !
追肥(ついひ)
元肥を施しても、植物が生長するにしたがって肥料が足りなくなることがあります。このときに行われるのが追肥です。追肥のタイミングや適した肥料は、植物によって変わります。例えば、花をたくさんつける植物に開花時期に速効性肥料を頻繁に与えると、花を長く楽しめることがあります。ほかにも、茎や葉の生長が悪いときに適量を追肥することでしっかりとした株に育つことがあります。
また、速効性肥料だけでなく、緩効性肥料も追肥として使われます。生育期の生長を助けるため、適切な時期を調べて追肥を行いましょう。
お礼肥(おれいごえ)
お礼肥も追肥の一種ですが、施すタイミングは開花後や実の収穫の後です。多年草の花や樹木などに用いられます。お礼肥は基本的に、開花や結実で弱った株に栄養を与えるために行います。植物へのお礼の気持ちを込めるとともに、来シーズンへ向けての栄養を蓄えるため、お礼肥が必要とされています。
寒肥(かんごえ、かんぴ)
寒肥は、文字通り12月~2月の寒い時期に与える肥料です。この時期は休眠期に入り生育が停滞している植物が多いため、肥料要求も落ちていますので速効性肥料も十分に吸収することができません。そのため、寒肥には遅効性肥料がよく使われています。施肥のタイミングが遅くなった場合は、緩効性肥料が用いられることもあるようです。寒肥は、植物にゆっくりと栄養を与え続ける目的があります。寒肥を与えておくことで、春になって生育期に入るころの生長に違いが出るはずです。とくに樹木を育てているときは、寒肥も忘れずに与えましょう。
おわりに
ご紹介した以外にも、肥料にはさまざまな種類があります。園芸初心者の方は、とくに使い方がわからないことも多いのではないでしょうか。
植物によって、適している肥料や施肥のタイミングは異なります。植物を栽培すると決めたら、どういった肥料が必要か調べるのが大切です。それぞれに合った肥料をあげて、植物を長く元気に育てていきましょう。