最後のアンディ&ウイリアムス ボタニック ガーデン
2020年12月20日、多くの人に愛されたガーデンが閉園しました。群馬県太田市にあるアンディ&ウイリアムスボタニックガーデン(Andy&Williams Botanic Garden)です。ホームセンターを展開するジョイフル本田新田店に隣接する敷地に設けられたガーデンです。2002年4月に開園しました。
群馬県太田市というと、隣接する館林市や利根川の対岸埼玉県熊谷市と同様、夏は日本一暑いエリアに位置し、冬は上州名物空っ風にさらされる、植物的にも環境的にはかなり厳しい場所で、本格的イングリッシュガーデンの展開は難しいのではと言われていましたが、それをスタッフの並みならぬ管理によって克服してきたガーデンでもあります。
かなり前になりますが、ガーデンを訪れた際、園の名前にもなっているイギリスのガーデナー二人、アンディ(Andy McClure)とウイリアムス(William Wolf)
の二人が来園していたときで、ジョイフル本田の方を交えて話をする機会をいただきました。そのとき、二人が語っていたのは、最初はここの環境を知り驚いたこと、でもここでのチャレンジにとてもワクワクしたこと、そしてここで育てば多くの植物が、日本中どこででも育てられるだろうということでした。
ガーデンの本場イギリスのガーデナー二人がジョイフル本田とコラボする施設ということもあり、構造物をふんだんに使って、ビジュアルになる景色が園内至る所に展開されていました。平地にあるので、立体的な景色に乏しいことからの構造物の多様とも思われますが、それだけではなく、植物の性質を生かした育て方、見せ方をよく考えてガーデンをデザインしていたのだと思います。
特に樹木類は開園当初に比べより大きくなって、ガーデンはやはり年月を重ねていくことで進化していくのだということが、よくわかります。バラや宿根草、野菜やハーブ、そしてコニファーや樹木類など、多種多様な植物が、広いとはいえない敷地ながらも、数多く展開できているのも見どころになっていました。
この日もヘッドガーデナーの大田勲さんをはじめスタッフのみなさんはいつもと同様、園内の作業に従事していました。ただ、太田さんと話をしたところ、とにかく残念でしかないという思いをお聞きしました。私も残念でしかありません。
どのような理由からの閉園かはわかりませんが、もしかして新型コロナウイルスの感染拡大が閉園への引き金になったのかもしれません。パンデミックで大きく変容した世の中では、さまざまなところで影響が出ているのだと思います。
しかし、ガーデンそのものは感染リスクの少ない環境ですから今の時代に閉園はもったいない、そう思うとどこへこの寂しさ、残念さを持っていってよいのか。いや、ずっとガーデンの管理に携わってきた現場の方々が一番無念な気持ちでいっぱいになっているのではないかと感じました。
閉園日の午前9時、ガーデンの入り口に立ちました。入園料を払おうと思っていたら、最後の1週間は無料開放とのこと、ちょっとうれしくなりました。
ゆっくりとガーデンに歩を進めます。何度か、それも季節のよいときに来ていますが、冬に訪れるのは初めてでした。花が少なく緑も少ない季節ですが、本当はガーデンの四季すべてを味わってこそ、そのガーデンを知ったことになるのでは、と思うと、最後とはいえ冬のガーデンを体験できたのは幸いでした。
ハーブコーナーやキッチンガーデンなどさまざまなガーデンエリアを巡りました。そして、コニファーガーデンでは、大きく育った木々を見ていると、18年という歳月を感じました。見た目とはうらはらな厳しい環境を生き抜いてきた木々に思いをはせると、これらの木々、植物たちの行く末を思ってしまいます。
冬枯れでも雰囲気のある景色のウッドランド&レイクまで来て改めて気づいたのですが、園内は、花がらや枯れ枝、ゴミなどがなく、最後の日までスタッフのみなさんがいつものようにきれいなガーデンを見せようと努めていたことに、気持ちがぐっと来てしまいました。すばらしいガーデンに感謝です。ありがとうアンディ&ウイリアムボタニックガーデン!
取材・撮影 出澤清明
園芸雑誌の元編集長。植物自由人、園芸普及家。長年関わってきた園芸や花の業界、植物の世界を、より多くの人に知って楽しんでもらいたいと思い、さまざまなイベントや花のあるところを訪れて、WEBサイトやSNSで発信している。