バラをもっと深く知る㉛ 目を惹くオレンジ色
バラの好みは時代によって変わります。とくに花色は最初の選択ポイント。
最近人気のある花色がオレンジ色です。
(写真はオレンジ色に朱色がのる禅ローズの小輪つるバラ‘珠玉’(しゅぎょく、2007年河合伸志。コピスガーデンで)
淡い色から濃い色へ
オレンジ色の花のバラが人気を集めています。かつての淡いアプリコットやピンク色から、最近は花色の濃度が高いバラが好まれるようになってきました。
海外のバラでは‘ディズニーランド ローズ’(2003年)、‘イージー タイム’(2006年)、‘スーパー トローパー’(2009年)、‘レディ オブ シャーロット’(同)、‘コルデス オランジュリー’(2015年)など、日本のバラでは‘万葉(まんよう)’(1988年)などがありますが、ここでは2010年以降に発表された主な日本のバラについて見てみましょう。
オレンジ色は黄色と紅色の色素が混じり、淡くなるとアプリコット、濃くなると朱色に近い色になってきます。
西洋と違って日本では四季に花を観賞するため、一つの花だけでなく季節による色の変化も併せて観賞されるので、色表現はさまざまです。
杏奈(あんな)
まず京成バラ園芸の‘杏奈(あんな)’(2012年)。同社ガーデンセンターで人気です。
花色表現は「オレンジピンク~アプリコット」「明るい杏色」。中輪房咲き。株丈0.7mの半横張り性のFLです。株を覆うように咲く春の満開時の姿には、つい引き寄せられます。
コンフィチュール
2020年発表当初から人気。花色は「アプリコットオレンジに淡いピンク色が混じる」カップ咲き(写真上)。
秋花はアプリコットのトーン(写真下)。フルーティーな強く甘い香りにティーの香りも混じり、2023年第16回国営越後丘陵公園「国際香りのバラ新品種コンクール」でS銅賞を受賞したのが‘コンフィチュール’。
河本バラ園ローズ ドゥ メルスリーです。中輪・四季咲き。出芽の銅葉が花を引き立てます。
樹は高さ0.9~1.0mのシュラブで枝は最初はまっすぐ斜上。“おいしそう”な花名と花容・香りのイメージが際立っています。
ロビン
花色は開花にしたがいオレンジ色からアプリコット、淡いアプリコットへと変化する中輪カップ咲き(写真上)。
四季咲きで季節によってはピンク味が強くも咲きます。房咲き。
フルーツにティーとグリーンの強香は、第17回国営越後丘陵公園「国際香りのばら新品種コンクール」でS銀賞を受賞、「フルーティ~上品な紅茶葉様の香りに明るく親しみのあるアプリコット、アップル、オレンジのフルーツが広がる香り」と評されました。
こちらも花色と香りのイメージが合致し、株の元気さもポイントです。樹は高さ1.2×幅1.0mの木立性で樹勢が強く、枝はまっすぐ斜上します(写真下)。
耐病性が高く年に5回の剪定後ごとの殺菌剤散布で一年間美しい葉を維持します(タイプ1)。2021年秋発表の、ロサ オリエンティス プログレッシオの人気品種です。
シルクロード
2022秋発表の‘シルクロード’は、オレンジから落ち着いたコーラルピンクに変化し、花名の由来の絵画の夕照を想うよう。春花(写真上)と秋花(写真下)の花色はほとんど変わりません。
フレッシュなフルーツの強い香りがあるロゼット咲き・小中輪房咲き。四季咲き。樹は高さ1.5×幅2.5mの横張りシュラブ(写真中)で、庭で大きめのシュラブとするとカッコ良く、つるバラ仕立てにもできます。
樹勢が強く、小さめでマットな質感の丸い葉は耐病性が高く、バラの家のタイプ0。ロサ オリエンティス プログレッシオでこちらも発表早々人気です。
「花」から「香り」、「樹の性質」へ
育種上はまず「花」から。そして香りがあるものを。さらに樹の性質の向上へと。それら要素のバランスで発表されます。
オレンジ色の花は温かみがあり、気分を明るくします。花色の好みは時代の気分の反映。
今年はどんなバラを植えようか・・・コタツで暖まって、みかんを食べながら考えてみようと思います。
著者紹介
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玉置 一裕
バラの専門誌『New Roses』編集長。
『New Roses』の編集・執筆・アートディテクションを行うかたわら、ローズコーディネーターとしてバラ業界のコンサルティングやPRプランニング、関連イベントのコーディネート、バラの命名等に携わる。
また園芸・ガーデニング雑誌への執筆や講演を通じて、バラの「美」について語ると同時に、新しいバラの栽培法の研究も行っている。