野菜ソムリエプロ緒方湊さんにお聞きしました!”家庭菜園をはじめたい方におすすめの夏野菜 ”
「野菜博士」としてテレビなどにも出演し、農研機構広報アンバサダーも務める最年少野菜ソムリエプロ 緒方 湊さん。
今回は湊さんの経験から初心者の方、これから家庭菜園をはじめたいと思っている方におすすめの夏野菜や、今後の目標についてお話を伺いました。
自分で野菜作りを始めて、今年で8年目になりますが、野菜作りの楽しさはなんと言っても、おいしいこと!収穫したばかりの、鮮度のよい野菜が食べられるは家庭菜園の醍醐味。畑で採れたての野菜をいただくのは、なにものにも代えがたい味わいです。
そろそろ夏野菜がおいしい季節になってきました。代表的な夏野菜といえば、トマト、ナス、キュウリ、ピーマン。その中でも初心者の方でも育てやすく、おすすめの品種をご紹介します。野菜が育った同じ場所、同じ空気の中でいただく、格別な味を野菜作りでぜひ体験してみてください。
1.おすすめ夏野菜4品種
[ミニトマト〈純あま〉]
サントリー本気野菜シリーズのミニトマト〈純あま〉。これは僕が最初に作って、成功したトマトです。つまり初心者の方にも作りやすい品種です。ちょっと細長い形で、つまみやすくて食べやすく、名前の通りフルーツのような甘さがあります。肉厚で果皮の歯切れがよく、プリッとした食感。何よりうれしいのは、たくさんの数が収穫できるということ。文字通り「鈴なり」に実がなります。
[ナス〈十全ナス〉]
これまで本当にいろんな品種を栽培してきましたが、比較的育てやすくて、かつおいしいとなると〈十全ナス〉がおすすめです。ぽってりした卵形の新潟県の品種で、その味には感動しました。採れたてのナスにそのままかじりつくと、その水分量の多さに本当にびっくり、そのまま手でしぼるとナスジュースになるんじゃないかというくらい、みずみずしいナスです。生で食べてもおいしいですが、浅漬けにしてもおいしいですし、生ハムを巻いてオリーブオイルでいただくのもおしゃれです。ナスを生でいただくとき、包丁を入れずに、手で裂くというのもポイントです。表面積が多くなるので、オイルがよくなじみます。
[ピーマン〈ピー太郎〉]
こどもピーマンと呼ばれる、少し小さめの苦くないピーマンです。普通のピーマンより肉厚なのが特長で、輪切りにしてピザのトッピングにすると、見栄えもよく、シャキシャキとしたフレッシュな味がアクセントになります。たくさん実がなるので、小さなお子さんと家庭菜園を始めるという方にもぴったりの品種です。
[キュウリ〈四葉(スウヨウ)系〉]
四葉と書いて「スウヨウ」と読みます。中国語の読みです。四葉系のキュウリはピンピンとしたイボが特徴で、シャキッとしたさわやかな食感が楽しめます。キュウリを育てて驚くのは成長の早さ。葉っぱに実が隠れていて、朝に採るのを逃したら、夕方には大きくなりすぎているということもあるので、タイミングよく収穫してください。キュウリの葉っぱやツルにはうぶ毛のような柔らかい毛がびっしりと生えているので、そういった触感を自分の肌で確かめてみるのも野菜作りならではの楽しさです。
2. 夏野菜の面白い味わい方
今は、自宅の庭で野菜を栽培していますが、小学校低学年の頃は、近所の貸農園で、先生の指導のもと野菜を作っていました。
ある夏のこと、旅行に出かけていたので農園に2〜3日行けないことがありました。すると、キュウリが大きくなりすぎてウリのような姿に。ピーマンも色づいてきている実がありました。先生はそんな野菜を見て「失敗したね」と、野菜を捨ててしまわず「そのまま育てて観察してみよう」言ってくださいました。
キュウリはダイコンのように大きく育ち、やがて黄色くなりました。キュウリは「黄瓜」と書き、昔は黄色く熟した実を食べていたそうです。大きく育ったキュウリの味は家族には不評なのですが、酸味と独特の食感があって僕は好きで食べています。
夏も終わりの頃になるとピーマンは赤く熟します。赤いピーマンはパプリカやあるいはトウガラシのようにも見えますが、辛みも苦みもなく甘い味に変化していて驚きました。赤いピーマンの甘さは、夏の終わりを感じます。
そういえば、ゴーヤーも青い未熟な実を食べるのが普通ですが、そのまま育てていくとだんだん黄色くなって、やがて実がはじけて赤いタネが出てきます。タネのまわりはゼリー状になっていて、甘いデザートのようになるので、ぜひ試してほしい食べ方ですね。
収穫時期を逃すと畑でほったらかしになって、処分されてしまうキュウリやピーマンなどの野菜も興味を持って育てていくと面白い発見がありますよ。
3.トマト作りの失敗
実は小学校1年生の時に初めてトマトを作ったのですが、茎が太く葉っぱが青々と大きくなってちぢれて、実があまりつきませんでした。原因は肥料のやりすぎで、チッソ分が多すぎるとそういった症状が出るのです。まだ子どもだったので、肥料をたくさんあげたら元気に育って、おいしいトマトが採れると思っていたのですが、栽培はそんなに単純なものではありませんでしたね。
実は小学校1年生の時に初めてトマトを作ったのですが、茎が太く葉っぱが青々と大きくなってちぢれて、実があまりつきませんでした。原因は肥料のやりすぎで、チッソ分が多すぎるとそういった症状が出るのです。まだ子どもだったので、肥料をたくさんあげたら元気に育って、おいしいトマトが採れると思っていたのですが、栽培はそんなに単純なものではありませんでしたね。
その後は失敗を糧にして植えつけの時の元肥や、成長時の追肥の分量やタイミングを考えるようになり、肥料は適切な量と成分がとても大切ということを実感しています。今年は葉っぱに霧吹きで肥料をかける葉面散布も試してみたいなと思っています。
4. 生食トマトと加工用トマト
この夏、僕が作ってみようと思っているのは加工用のイタリアントマトです。トマトには、生のままで食べる「生食用トマト」と、ジュースやトマトソース、ケチャップなどに加工される「加工用トマト」があります。スーパーなどに並んでいる生食用のトマトは、ピンク色をしたトマトですが、加工用のトマトは真っ赤に熟した赤いトマトで、それぞれ違った品種なんです。
スーパーではなかなか手に入りにくいので、いくつかの種類を作ってみて、食べ比べしたいです。イタリアントマトが収穫できたら、トマトソースを作ろうと思っていて、夏休みのお昼ごはんにこのソースを使ったパスタを食べるのが今から楽しみです。大量のトマトソースを作っておくと、旬の夏を過ぎてもいつでもおいしくいただけるのもいいですね。
5.今後の野菜作り
将来の夢は伝統野菜を守っていくような農家になれたらと考えています。
今は幸運にも、メディアに出させていただく機会がありますので、「こんな野菜があるんだよ」とまずは皆さんに知っていただけるようにお話しています。伝統野菜の中には、後継者不足や環境の変化で絶滅しかけている野菜もあり、そのことを知ってもらうことで少しでも絶滅の時期を遅らせることができればと思っています。
また一度絶滅すると復活するのはそう簡単なことではありませんので、そうならないために活動していけたらと考えています。
これから僕の考えも成長とともに変化していくと思いますが、今は精一杯、野菜の魅力を伝えていきたいです。
緒方湊さん
2008年横浜市生まれ。史上最年少10歳で「野菜ソムリエプロ」を取得。著書に『野菜がおいしくなるクイズ』飛鳥新社刊。ホームページ「みなとの野菜大辞典」。ブログも連載中。