【果樹栽培】 イチジクは鉢植えもOK! ベランダやお庭で育てて収穫しよう
イチジクはお手入れの手間がかかりにくく、育てやすい果樹のひとつです。鉢植えもできるため、ベランダ栽培も行えます。ぜひご自宅でイチジクを育て、毎年の収穫を楽しみましょう。こちらでは、イチジクの基本情報や育て方、収穫時のポイント、挿し木での増やし方などをご紹介します。
果実ではなく花を食べる? 神秘的なイチジク
イチジクはアラビア半島や地中海沿岸などが原産とされる植物です。世界各国で古くから親しまれている果実で、現在は多数の品種がつくられています。原産地では紀元前から育てられていたとする説もあり、歴史ある植物としても知られています。基本的には暖かい土地を好むため、寒冷地で育てる場合は鉢植えにして、屋内で冬越しさせるのが基本です。ただし、耐寒性の強い品種を選べば寒い地域でも地植えできることがあります。
イチジクの特徴
イチジクは漢字で「無花果」と表記します。花を咲かせずに実をつけるように見えることから、この漢字が当てられたといわれています。
ただし、実際はイチジクの花は実の中に咲きます。収穫して果実を割るまでは見えないものの、まったく花が咲かないわけではありません。イチジクの実を食べるときは、断面にある粒状の花も観察してみましょう。
名前の由来や花言葉
イチジクの名前の由来には、いくつかの説があります。果実がひとつずつ熟すことから「一熟」と呼ばれるようになった説や、中国名の「映日果」から名前がついたという説など、さまざまなものがあります。
また、花言葉には「多産」や「子宝に恵まれる」などがあります。ひとつの木に多数の実をつけるイチジクの性質から連想されたようです。
収穫時期の違い
一般的に、果樹を植えつけてから収穫できるようになるまでには3年~4年はかかります。イチジクの場合は、早ければ1年目でも収穫可能です。なるべく早めに果実を楽しみたい方にもおすすめできる果樹といえます。
また、イチジクの品種は、収穫時期によって以下の3通りに分けられます。
- 夏果専用品種(収穫時期:6月~8月)
- 秋果専用品種(収穫時期:8月~10月)
- 夏果秋果兼用品種(収穫時期:7月~10月)
夏果秋果兼用品種はとくに収穫時期が長いことが特徴です。ただし、上記の収穫時期は目安で、品種や育てる地域によっても異なります。それぞれ大きさや味などが違うのはもちろん、適した剪定方法も変わります。イチジクの苗木を買うときは品種を確かめて、それぞれに合った育て方を調べるのが大切です。
イチジクの主な種類
イチジクには多数の品種があります。日本においては、とくに2種類の品種が有名です。それぞれの特徴を確かめてみましょう。
日本イチジク(蓬莱柿、早生日本種)
日本イチジクは、古くから国内で栽培されてきたとされる品種です。蓬莱柿(ホウライシ)や早生日本種などとも呼ばれます。江戸時代初期に日本へ持ち込まれたといわれており、現在も各地で育てられています。原産地は中国です。
実は小さめで丸い形をしています。色が薄いことから「白イチジク」といわれることも。甘みは強く、やや酸味が感じられます。収穫時期は8月~10月です。ハウス栽培のものは5月から収穫が始まります。
桝井ドーフィン
桝井ドーフィンは北アメリカ原産の品種です。日本には明治時代に持ち込まれたとされます。日本イチジクよりも大きい実をつけ、収穫できる量も多いことから、多くのイチジク農家で栽培されるようになりました。
実はしずく型で、濃い色をしています。夏秋兼用果である点も特徴で、年に2回の収穫時期を迎えます。夏果の時期は6月~7月、秋果の時期は8月~10月です。同じ木でも、夏果のほうが大きくなり、秋果は小さめになることがあります。
鉢植えでも楽しめるイチジクの育て方
イチジクは管理しやすく、初心者におすすめの果樹です。鉢植えでも育てられるため、お庭にスペースがないご家庭でも栽培にチャレンジできます。ぜひご自宅でイチジクを育ててみましょう。ここでは、イチジクの基本的な栽培方法をご紹介します。
土づくり
イチジクは水もちと水はけがともに良い土を好みます。鉢植えの場合、ハイポネックス培養土 鉢・プランター用がおすすめです。地植えの場合、植えつけ予定の場所を掘り返して腐葉土や堆肥などを混ぜ、耕しておきます。
苗選び
イチジクを育てる場合は、苗木を購入して植えつけを行います。お住まいの地域に合う品種を選びましょう。苗を直接見てから購入できる場合は、虫食いや病気の痕跡がないか確かめておきます。また、収穫までの期間を短くしたい場合は、ある程度育った鉢苗を入手しましょう。
植えつけ
イチジクの植えつけ適期は11月~3月です。寒い地域の場合は春に植えつけたほうが凍害を防げます。鉢植えの場合、鉢の中に半分ほど土を入れてから苗木を置き、周囲に土をかぶせて隙間を埋めていきます。
地植えの場合は植えつける場所に50cmほどの穴を掘り、深植えしすぎないように植えてあげます。どちらの場合も、苗木の根鉢は崩してから植えつけしましょう。
日当たり、風通し
イチジクは、日当たりが良く風通しの良い場所へ植えてあげましょう。ただし、エアコンの室外機の近くのように、常に風が当たる場所は避けます。また、葉が千切れたり折れたりすることがあるため、強い風が当たる場所も苦手です。基本的には日なたで育てますが、夏の間は激しい直射日光に当たると弱ってしまうことがあります。半日陰へ移動するか、日よけをつくってあげましょう。
水やり
イチジクを乾燥させすぎると株が弱ってしまいます。とくに夏は乾燥に注意し、水をたくさんあげましょう。ただし、過湿にならないよう、土の乾き具合を見てから水やりするのが大切です。鉢植えの場合は基本的に1日に1回、夏は1日に2回与えるのが目安です。冬になったら水やりの頻度を減らします。地植えの場合は降雨に任せてかまいませんが、雨が降らない日が続いたら水をあげます。
肥料
イチジクは生育旺盛なため、肥料をたくさん必要とします。植えつけ時には、元肥として『マグァンプK大粒』や堆肥などを混ぜておきましょう。6月~8月にかけて『錠剤肥料シリーズ かんきつ・果樹用』で追肥を行い、9月~10月にお礼肥を施します。12月~1月には寒肥を与え、次のシーズンへ備えましょう。
寒肥には、土壌改良を兼ねて『BrilliantGarden バラの有機肥料』を施します。
芽かき
冬にイチジクを剪定すると、次の春にはたくさんの新芽が出てきます。芽かきをして次に実をつける「結果枝」となる芽だけを残し、残りは摘み取りましょう。適期は5月~6月です。
芽かきの際は、上向きで勢いが弱い芽を取ります。横向きや下向きで勢いよく伸びている芽は残しておくと良いでしょう。芽と芽の間が近すぎるものや、垂直に生えているものなども間引いていきます。
また、芽かきは数回に分けて行います。葉が2枚~3枚開いたころに1回目を済ませ、2回目は5枚~6枚、3回目は8枚~9枚開くタイミングで作業すると良いでしょう。
冬越し
イチジクは寒さが苦手で、品種によっては10℃以下の環境になると枯れてしまうことがあります。とくに寒冷地で地植えする場合は、株を不織布で覆って風よけをつくる、藁やマルチを敷いて土を保温するなどして、寒さ対策をしっかりと行いましょう。鉢植えの場合は、屋内に移動させて冬越しするのがおすすめです。暖房の風が当たらず、気温が上がりすぎない場所で管理しましょう。
植え替え
鉢植えのイチジクは、2年~3年間隔で植え替えます。定期的に植え替えてあげることで土の通気性を良くし、根詰まりを防止します。適期は休眠期にあたる11月~3月です。新しい用土へ移し、古くなっている根があればカットしましょう。
イチジクの剪定方法
イチジクを長く育て、毎年収穫を楽しむためには、適切な剪定が欠かせません。こちらでは、イチジクの剪定時期や主な仕立て方などをご紹介します。
イチジクの剪定時期や方法
イチジクの剪定は、休眠期にあたる12月~2月にかけて行います。夏果がつく品種は、前年に伸びた枝に実がなります。剪定の際に枝を切りすぎると実がならなくなるため気をつけましょう。
秋果がつく品種は、春に伸びた新しい枝に実をつけます。そのため、前年に伸びた部分は切ってしまってかまいません。
また、夏果も秋果も実る品種は、枝の様子を見て切る部分を決めます。込み合ったところや徒長した部分はカットしましょう。夏果をつけたい部分は切り詰めないように注意が必要です。
イチジクの主な仕立て方
イチジクの仕立て方には、自然に枝が伸びるのに任せる「開心自然仕立て」や、枝を誘引して水平に伸ばす「一文字仕立て」などがあります。とくにおすすめとされるのが「一文字仕立て」です。お手入れがしやすく、美味しい実がなりやすいとされています。ただ、一文字仕立てをするには横長のスペースが必要です。露地栽培の場合は一文字仕立て、鉢植えの場合は開心自然仕立てのほうが管理しやすいでしょう。
一文字仕立てをする場合、主枝が若いうちから横に引っ張り、支柱を利用するなどの方法で誘引します。枝の先端が下がると樹勢が弱りやすいため、少しだけ上がるように調整するのがコツです。主枝は左右に一本ずつ伸ばします。
開心自然仕立ての場合、主枝を3本残す形が基本です。残す枝を決めて育てていき、植えつけ2年目の剪定では、主枝それぞれを3分の1ほどの長さへカットしましょう。3年目以降は主枝以外の枝もたくさん伸びてきているため、込み合った部分を適宜カットします。
イチジクの剪定のポイント
イチジクは植えつけ一年目の苗にも果実がつくことがあります。ただし、最初のうちは収穫ではなく株の生長を優先させることがおすすめです。植えつけの際、苗を地表から30cm程度の場所で切り詰めておきましょう。しばらくすると、切り口から新梢が出てきます。仕立てたい形に合わせて枝を伸ばし、不要な分は切り落としておきましょう。
美味しいイチジクを収穫しよう!
夏から秋にかけて、イチジクの旬がやってきます。タイミングを逃さないように収穫し、美味しいイチジクを堪能しましょう。イチジクの収穫方法や保存のコツなどをご紹介します。
収穫適期
イチジクは果実のなかでも収穫期間が長いのが特徴です。夏果が6月~8月、秋果が8月~10月に次々と収穫できます。
イチジクは追熟しないため、ある程度熟した状態で収穫することが大切です。ただし、収穫のタイミングを逃すと、熟しすぎて傷んでしまいます。
果実が膨らんでツヤがあり、先端が割けはじめたら収穫適期となります。品種によっては裂果しないものもあるため注意が必要です。食べごろを逃さないよう、こまめに観察しておきましょう。
収穫方法
イチジクは木の下についている実から順に熟していきます。収穫するときは、実をつかんで枝からもぎとるか、はさみを使ってカットします。
また、イチジクの枝を切ると白い液が出てきます。触るとかぶれてしまうことがあるため注意しましょう。イチジクのお手入れの際は、手袋をしておくのがおすすめです。
保存のコツ
イチジクは鮮度が落ちやすいため、乾燥しないようにビニール袋などに入れて冷蔵庫へ保管しておきます。生食する場合は早めに食べてしまいましょう。また、ジャムやコンポートなどに加工しておけば、長く楽しめます。スイーツの材料にしたり、サラダに混ぜたりするのもおすすめです。ご自宅で収穫した美味しいイチジクを、さまざまな料理で味わいましょう。
イチジクを挿し木で増やす方法
イチジクは、挿し木という方法で増やすことができます。栽培に慣れたら、ぜひ挿し木にも挑戦してみてはいかがでしょうか。最後に、イチジクの増やし方を解説します。
挿し木とは
挿し木(挿し芽)は、植物を増やす方法のひとつです。枝や茎などをカットして「挿し穂」をつくり、土に挿して発根させます。種を採取して育てるよりも時間を短縮できるほか、親株と同じ性質を持つ植物を育てられるメリットがあります。種をつくりにくい植物でも、挿し木であれば増やすことが可能です。株の更新を行う場合も、挿し木がおすすめです。
また、葉をカットして使う「葉挿し」や根を使う「根挿し」などの方法もあります。植物の種類によって使い分けましょう。
イチジクの挿し木で準備するもの
挿し木の際に必要なのは、清潔な刃物や水を入れる容器、挿し床などです。刃物は枝をカットするときに使用します。切り口から菌が入ると病気の原因になるため、使う前に消毒しましょう。
挿し床とは、挿し穂を挿す土のことです。挿し木用土として使うのは肥料が入っていない土です。古い土を使うのは避けたほうが無難。できるだけ雑菌が入っておらず清潔であることも重要です。
赤玉土や鹿沼土など、保水性のある土を使うことがおすすめです。市販されている挿し木用土を購入しても良いでしょう。
イチジクの挿し木の方法
イチジクの挿し木におすすめの時期は3月~4月です。挿し穂は前年に伸びた枝を使うと良いでしょう。長さは20cm~25cmです。芽の1cm程度上の場所をカットします。ひとつの挿し穂につき、芽が3つほど残るように気をつけましょう。
土に挿すほうの切り口は斜めにします。面積を多く確保しておくと、根が伸びやすいためです。反対に、枝の先端は水平にカットします。
挿し穂をつくったら、乾燥しないように下部を水につけておきます。用意しておいた挿し床に小さく穴を掘り、挿し穂を植えましょう。土には水を与え、しっかりと湿らせておきます。
また、剪定時にカットした枝を挿し穂として使う方法もあります。ただし、剪定時期は12月~2月、挿し木の適期は3月~4月です。カットした枝は、一定期間保存しておく必要があります。
挿し穂は、冷蔵庫の野菜室で保管することがおすすめです。挿し穂をカットした際、切り口から白い汁が出てきたら洗い流しておきます。水分を含んだ新聞紙などで包み、冷蔵庫へ入れましょう。
イチジクの挿し木苗の育て方
挿し木した苗は、しばらく日陰で管理します。枝から出た葉が大きくなっても、植え替えに耐えられるくらい発根するまでは時間がかかります。水を与え、土が乾かないように気をつけながら様子を見ていきましょう。時期的に霜の心配がある場合は、ビニール袋をかぶせて保温しておきます。
葉がある程度大きくなり、株が一気に生長を始めたら、根が十分に伸びているはずです。鉢や地面へ植えつけましょう。
イチジクは植えつけから収穫までが早い果物です。植えつけた挿し木苗も、植えつけてから早めに収穫できるようになるはず。甘い実を堪能するのを楽しみに、丁寧に育てていきましょう。
おわりに
イチジクは園芸初心者でもチャレンジしやすく、ご家庭で育てやすい果樹のひとつです。庭木として大きく育てられますが、鉢植えにして剪定を行えば、高さを抑えてコンパクトに育てることもできます。収穫期間が長く、何度も果実を食べられるのも魅力です。ぜひお好みの品種を見つけ、栽培にチャレンジしてみましょう。
公開日: 2020年9月4日
更新日: 2022年10月21日