【ムスカリの育て方】春の花ムスカリをお庭や室内で育ててみよう
ムスカリはブドウの房のような花の形と、華やかな香りが特徴の花です。土に植えてお庭で育てるのはもちろん、水耕栽培(水栽培)でも育てられるため、お部屋で花を楽しみたい方にもおすすめできます。ここでは、ムスカリの特徴や、お庭や室内で育てる方法、増やし方などをご紹介します。
64:ムスカリの育て方|水耕栽培での育て方は?庭上の際の注意点などもご紹介
【ムスカリの特徴】甘い香りとブドウのような花が魅力
ムスカリの花はブドウの房に例えられる、独特な形をしています。花の色は青や紫、白、ピンク、黄などです。グラウンドカバーとしても人気で、公園や野原などを覆うように植えられたムスカリが開花すると、見事な花の絨毯が楽しめます。原産地は地中海沿岸から西アジア一帯です。日本では1980年代から広く流通しはじめました。
春の早い時期から花を咲かせるムスカリ
ムスカリの開花時期は3月~5月にかけてです。耐寒性が強く、秋に植えた球根は寒さを乗り越えて芽を出します。花の色は青紫が有名ですが、薄い青や白、黄、ピンクなどの花を咲かせる品種もあります。草丈は10cm~30cmとコンパクト。たくさん植えて花畑のような光景をつくることも可能です。ぜひお好みの品種を探して育ててみましょう。
手向けの花 ムスカリ
現在のイラクにあるシャニダール遺跡から、ムスカリをはじめとする花の花粉が発見されたことがあります。諸説ありますが、これらの花粉は故人へ供えられた花のものではないかと考えられているそうです。そのため、ムスカリは最古の手向けの花のひとつとしても知られています。
芳香を放つムスカリの花
ムスカリの名前は、香料の「ムスク」に似た香りがすることから付いたといわれています。ムスクはジャコウジカ由来の成分で、濃厚な甘い香りが特徴です。寄せ植えにするのも人気で、同じ春の花であるチューリップと一緒に植えられている姿がよく見られます。ムスカリを育てる際は、花と一緒に香りも楽しみたいという方が多いのではないでしょうか。ただし、品種によっては香りが薄いものもあります。球根を購入する前に品種を調べ、香りの強さを確認しておきましょう。
寄せ植えにも人気のムスカリ
ムスカリは寄せ植えをつくる際にもよく取り上げられる植物です。管理の手間がかかりにくいうえ、草丈が低めで幅広い花と合わせやすいメリットがあります。ムスカリを育てる際は、ぜひ寄せ植えにもチャレンジしてみてはいかがでしょう。人気の高いパンジーやビオラ、クロッカス、チューリップ、アリッサムなど、さまざまな種類の花と合わせられます。
ムスカリをご自宅のお庭で育てる方法
ムスカリは秋に植えつけして春に開花する植物です。春のお庭を華やかにするため、ぜひ鉢や花壇などに植えて育ててみましょう。ここでは、ムスカリをお庭で育てるときの基本的な方法をご紹介します。
球根の選び方
ムスカリの球根は、秋ごろには流通が始まります。持ったときにずっしりと重く、スカスカしていないものを選びましょう。カビが生えているものや、虫食いのあるものなどは避けます。シワの寄っているものや、小さすぎるものなども購入しないほうが良いでしょう。全体的にハリがあり、ツヤツヤとしているものが育てやすい球根です。
芽出し球根の選び方
春ごろになると、球根をある程度育てて芽が出た状態の「芽出し球根」が登場し始めます。芽出し球根のメリットは、発芽するまでの手間がかからないことです。球根から育てた場合は発芽しない可能性もありますが、芽出し球根であれば確実に栽培を進められます。植えてから開花までが短く済むのも魅力です。芽出し球根を選ぶときは、葉の色が美しく、生長しすぎていないものを探しましょう。
土づくり
ムスカリは水はけの良い土を好みます。ご自分で配合する場合は、赤玉土と腐葉土を7:3で混ぜたものがおすすめです。元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。
ただ、初心者の場合は用土を調整するのが難しいかもしれません。市販されている園芸用土を購入することがおすすめです。「ハイポネックス培養土 鉢・プランター用」であれば、元肥として緩効性肥料マグァンプKが配合されているため、購入してすぐに使うことができます。ハイポネックス培養土 鉢・プランター用を使わない場合は、元肥として「マグァンプK中粒」を加えておきましょう。
植えつけ
ムスカリは球根から育てられます。植えつけの適期は10月~12月です。あまり早い時期に植えると葉が生長しすぎてしまい、開花する頃にはだらしない姿になってしまうことも。小さくがっしりとした苗に育てたい場合は11月以降に植えると、葉が伸びすぎずにコンパクトにまとまります。
球根は土から2個~3個分の穴を掘って植えつけます。複数株を植えるときは、株間を球根2個分程度あけましょう。地植えの場合、球根1,2球分の高さの土が上に覆いかぶさるくらいの深さに植えましょう。一方で、鉢植えで小さく育てたいときは、球根の上部が少しだけ地上に出るようにして植えつけます。上述した通り、植えつけ時期を遅くすることでも小さく育てることができます。また、カーペットのようにしたい場合は、間隔をあけずに植えましょう。
また、小さな子球がついている球根があったら、子球を外してから植えつけしましょう。そのままにしておくと、子球に栄養が取られ、親球から出る花が小さくなってしまいます。
芽出し球根を植えつける場合は、すでに根が伸びています。根を傷つけないよう、優しく扱いましょう。
発芽後の管理方法
球根が発芽したら、よく日光に当ててあげましょう。日当たりの良い場所で管理することで、がっしりとした苗に育ちます。日陰で栽培すると葉がひょろひょろと細長く伸び、生育に影響が出ることもあるため注意が必要です。植えつけ場所さえ気を付ければ、その後は植えっぱなしの状態でも毎年花を咲かせます。初心者の方にもおすすめの花です。
肥料
ムスカリはそれほど多くの肥料を与えなくても元気に育ちます。肥料を使わずにも成長できますが、肥料を与えることによって、花が早く、そしてより大きく咲くことができます。地植えの場合、植えつけ時の元肥以降はしばらく施肥を行わず、開花後に、液体肥料「ハイポネックス原液」
水やり
ムスカリに水をあげすぎてしまうと、球根が腐る原因となる可能性があります。鉢植えの場合は定期的に水やりを行わず、土の表面が乾いたのを確認してから水を与えましょう。地植えの場合は、極端に雨が降らない日が続かない限りは水やりの必要はありません。
日当たり
前述の通り、ムスカリは日陰で育てると葉ばかりが伸びてしまいます。基本的には、日当たりの良い場所に植えましょう。
ただし、開花期間になったら鉢を移動させ、日に当たる時間を減らすことがおすすめです。日なたに置くのを半日程度にとどめることで、花もちが良くなります。
剪定・花がら摘み
秋に植えつけしてから葉が伸びすぎてしまったときは、剪定をして形を整えてもかまいません。開花期間が来る前の早春に短くカットしましょう。また、ムスカリはひとつの株にたくさん花をつけます。花がらはこまめに切り取ることで、美しい花を長く楽しめるでしょう。
ムスカリは、花が咲き終わったら、残った葉で光合成を行って球根を大きくします。翌シーズンも同じ球根を育てたい場合は、葉が枯れるまで切り取らないように気をつけましょう。
夏越しの方法
ムスカリは、土に植えっぱなしにしながら夏越しが行えます。地上部が枯れてきたら水やりをやめ、土を乾かしましょう。花梗(かこう)と呼ばれる茎の部分は最後の2,3輪の花が残っている状態でカットして球根だけの状態にします。ムスカリは自然に分球するので、2,3年に1度を目安に、葉が枯れたタイミングで掘り上げ、秋に植えなおしましょう。
ただし、地植えの場合、地上部が枯れている間はどこに球根があるのかわかりにくくなります。管理が難しくなるようであれば、葉が残っているうちに球根を掘り上げて冷暗所に保管しましょう。また、鉢植えの場合、葉が黄色くなったら、鉢ごと軒下など雨水にかからない場所に移すことがおすすめです。梅雨の雨や夏の高温などの影響からも守ることができます。
球根の入った鉢は、雨が降っても濡れず、風通しの良い場所へ置いておきます。直射日光を避け、涼しい環境をつくってあげましょう。
病害虫対策
ムスカリは病害虫被害を受けにくいものの、まれに白絹病などが生じることがあります。白絹病は、カビが原因となる病害です。根元の部分に白い網のようなカビが発生し、放置しているとどんどん広がっていきます。発症したら治療はできず、株を処分するしかありません。植えつけていた土の消毒も必要です。石灰分を与える等、しっかりと予防して、病気にかからないように気をつけることが重要となります。
白絹病は高温多湿の環境で発生しやすいため、栽培中は十分に風通しの良い場所を用意しておきましょう。球根を植えつける際に、カビが生えていないかチェックすることもポイントです。
【ムスカリの増やし方】分球してムスカリを増やすには
ムスカリは球根の分球で増えていきます。放置しておくと土の中が込み合ってくるため、定期的に球根を整理しましょう。
分球とは
分球は、球根植物の増え方の一種です。球根が分かれることで、株の数が増えます。植物によって分球の方法が異なり、自然分球するものもあれば、人の手で切断することで増えるものもあります。
ムスカリの場合、数年間植えっぱなしでも自然と分球し、花が咲きます。ただし、分球をしないままでいると花が小さくなっていきます。大きく育てていきたい場合は、毎年1回は分球をすることがおすすめです。
球根の掘り上げ方
分球の際は、球根を掘り上げます。適期は花後の6月ごろです。地上部が枯れて黄色く変色してきたら、作業を開始しましょう。
土から球根を掘り上げたら、枯れた葉をカットします。傷んでいる根があったときも取り除いてかまいません。
乾燥を終えたらネットに入れ、次の植えつけ適期が来るまで大切に保管しておきましょう。風通しの良い日陰に置いておくことがおすすめです。
分球の方法
分球のタイミングは、植えつけ前の時期です。夏越しが終わったら、分球を済ませてから再度植えつけていきましょう。
ムスカリの球根には、小さな子球が複数生じていることがあります。親球から子球を取り分けてあげましょう。手で自然と割れるものもありますが、難しい場合は刃物を使ってカットします。切り口から雑菌などが入らないよう、刃を事前に消毒しておくことが大切です。
子球のなかには、ごく小さなものも見られます。あまりに小さいものは植えつけてもうまく育たないことがあるため、大きいものだけ残しておきましょう。
分球を終えたら、球根を冷暗所にて乾燥させます。切り口が湿ったままだと、カビの原因になることもあるため注意が必要です。
お部屋の中でムスカリの水耕栽培(水栽培)にチャレンジ
ムスカリは土に植えるほかに、水耕栽培(水栽培)でも育てられます。お部屋の中でムスカリを楽しみたいときは、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。ここからは、ムスカリの水耕栽培の方法をご紹介します。
栽培適期
水耕栽培を始めるのにおすすめなのは10月~11月です。球根は9月ごろから販売が始まるため、お好みの品種を選んで入手しましょう。また、土に植えられた状態の球根も、彫り上げて水耕栽培で育てられます。根についている土を優しく落として洗い、水耕栽培用の容器に移し替えましょう。
準備するもの
水耕栽培に必要なものは、球根を入れられる容器です。専用の容器を購入するのはもちろん、ご自宅にあるガラス瓶やペットボトルなどで容器を自作するのもおすすめです。球根が完全に水に浸かってしまわないよう、水の量を調整しやすいものを選びましょう。
水耕栽培(水栽培)の注意点
手軽に楽しめるのが魅力の水耕栽培ですが、こちらの方法で育てた球根は、翌シーズンに花をつけることができません。水耕栽培では、球根に栄養を蓄えにくいためです。数年にわたってムスカリの花を育てたい場合は、土に植えつけしてあげましょう。
発芽のポイント
通常、球根は暗い土の中で発芽します。明るい場所に置いておくと、いつまでたっても発芽しないことがあるため、発芽するまでは暗い場所で管理しましょう。室内の明かりや日光の影響を受けないよう、覆いをかぶせておくのもおすすめです。
また、ムスカリの球根は、冬の寒さに当てることで発芽します。暖かい部屋の中は発芽に適さないため、玄関などの外の気温に近い場所へ置いておきましょう。もしくは、球根を入手してから冷蔵庫でしばらく保管しておくのもおすすめです。うまく条件がそろえば、1カ月ほどで発芽するはずです。ただし、球根をつけている水はこまめに交換しましょう。そのままにしておくと水が汚れ、球根が傷んでしまうことがあります。
発芽したら明るく暖かい場所へ移動させてかまいません。お部屋の好きな場所に置いて、どんどん生長していくムスカリの姿を楽しみましょう。
おわりに
冬の寒さを乗り越えて花を咲かせるムスカリ。鉢植えや地植えはもちろん、水耕栽培でも育てることができます。長く育てていきたいときは、定期的に分球してあげることも大切です。ご自分に合った育て方にチャレンジして、可愛らしいムスカリの花を堪能しましょう。
公開日: 2020年2月5日
更新日: 2022年10月12日
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