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スマホで簡単!上手くなる身近な植物撮影術

スマホで簡単!上手くなる身近な植物撮影術

みなさまこんにちは。植物観察家の鈴木純です。まちなかでも気軽に楽しめる植物観察とはどのようなものなのか、日々地面を這いつくばって考えています。

まちなかで這いつくばって写真を撮る

まちなかで這いつくばって写真を撮る

さて、私は仕事柄こうして一眼レフにマクロレンズをつけ、しっかりと撮影を試みていますが、実は最近うっすらと思っていることがあります。もしかしたら、スマホのカメラでも十分かもしれない、と。

私が使っているスマートフォン

私が使っているスマートフォン

例えば、空の隙間に向かって伸びていくケヤキの新緑も、セイヨウタンポポの微細な綿毛も、スマホで気軽にパシャっと撮れてしまうからなのです。さらに、写真では表現できない動きのある映像も簡単に撮れてしまったり、使い勝手や機能も抜群。これは普段でも使わない手はありません。

空に向かって伸びるケヤキの新緑

空に向かって伸びるケヤキの新緑

セイヨウタンポポの繊細な綿毛

セイヨウタンポポの繊細な綿毛

ということで今回は、スマホで撮れる身近な植物写真のコツをご紹介します。もちろん、この記事もスマホで撮った写真だけを使っています。

大事なことは3つ

植物の撮影は、これまでならシャッタースピードや絞り、露出、ホワイトバランスなど多くのことを考えないといけない専門技術ですが、そんなこと言われたら身構えてしまいますよね。今回は、いったんそれらのことはすべて忘れても大丈夫です。プロを目指すわけではありませんし、ちょっと気になった植物があったとき、気軽に手持ちのスマホで撮れるテクニックの紹介です。楽しくトライしてください。

とはいっても、闇雲にシャッターを押してもよい写真は撮れません。今回は思い切って3つのポイントに絞りましたので、最低限これだけは意識してみてください。

 

・目線を下げる

・背景を気にする

・露出を変える

 

どうですか、これだけで写真のレベルは一気に上がります。しかも、スマホならどれも簡単ですよ。

目線を下げる

撮影に限らず、観察する時も同様のコツですが、植物を相手にする時は、とにかく目線を下げましょう。では、道路沿いでよく見るヒメツルソバを撮ってみましょう。

メツルソバを上からスマホでパシャっと撮った写真

まずは、よくある構図、ヒメツルソバを上からスマホでパシャっと撮った写真です。一応、何を撮ったかは分かりますが、なんだか面白みはないですね。こんなときは、目線を少し低くして撮ってみましょう。

ヒメツルソバ

少しだけ臨場感が出ましたが、まだ中途半端な気がしませんか。では、もっと目線を下げてみます。

ヒメツルソバ

ほら!どうでしょうか。花と同じ高さまで目線を下げるとすいぶんと見え方が変わりますね。恥ずかしがらずに、おうちゃくしないで、とにかく目線を下げること、です。これが基本中の基本です。

背景を気にする

つづいて、本当にちょっとしたことなのですが、「背景を気にする」ということも覚えましょう。何気ないようでいて、あとで見るとこれがとっても大事であることが分かります。

ドクダミ

まずは、特になにも気にせず撮ってみたドクダミです(上左写真)。背景にたくさんのドクダミが写り込み、なんだかチャゴチャしています。さらに私が乗っていた自転車まで入っています。こんな時は45度くらいカメラを右にずらしてみます。すると、背景に写るドクダミの数が減り、手前の花がはっきりと目立つ写真になりました(上右の写真)

 

コツを掴むまで少し経験がいるかもしれませんが、スマホだと何枚でも気軽に撮れるので、とにかくいろいろな角度から撮る練習をしてみてください。

露出を変える

はい。出ました。露出です。あっ、その言葉いやだ、もう分からないという声が聞こえてきそうですが、大丈夫、安心してください。スマホだとこの露出調整さえ簡単にできます。

露出調整

撮影する時に、画面をタップすると、太陽マークが出ます。これを上になでたり、下になでたりするだけで露出調整が可能です。

お気に入りの明るさを決めて撮影ボタンを押す

上左写真が太陽マークを下になでた時で、上右写真が太陽マークを上になでた時です。写真の明るさがずいぶんと違いますよね。露出という言葉にびくびくせず、指を上下に動かして、お気に入りの明るさを決めて撮影ボタンを押す。これでOKです。簡単ですよね。

このポイント3点さえ最低限知っておけば、スマホでもかなりいい写真が撮影できるようになります。まずは挑戦してみましょう。

 

では、さまざまな撮影テクニックを使って(といっても難しくはありませんが)撮ってみた写真を見て、解説していきましょう。

空を見上げ、すこし露出を上げて(太陽マークを上になでて)撮った写真

空を見上げ、すこし露出を上げて(太陽マークを上になでて)撮った写真です。コナラ、イヌシデ、ヤマザクラの新緑と花がそれぞれ空間を融通しあって枝を伸ばしていることがよく分かります。

メマツヨイグサ

草丈の高さにまでスマホを下げて、後ろの植物と重ならないようにして撮ったメマツヨイグサ。冬を越した赤い根生葉が立ち上がる、燃えるような姿がかっこいいですね。

 

植物との出会いも一期一会。スマホならいつでも携帯しているはずなので、いまこの時! という写真をぜひ撮ってみてください。

スロー撮影にチャレンジ!

つづいておすすめしたいのが、スマホの動画撮影機能。なかでもいま私が夢中になっているのが「スロー撮影」です。これがまた凄いのです。

カメラの「スロー」を押して撮影

これも方法は簡単。カメラの「スロー」を押して撮影するだけ。

さっそくカタバミの実を指でつまんだ時の動画を撮ってみました。普通なら肉眼では捉えられない速度で種がはじけますが、スロー撮影ならばっちりその瞬間を撮ることができます

 

ムラサキケマンの種がはじけ飛ぶ様子です。

 

カラスノエンドウの黒い莢(さや)がぱちんとひっくりかえる様子もスロー撮影が可能です。

 

ちいさな種を持つナガミヒナゲシも。実の上部にあいた窓から種がこぼれ出る様子がよく分かります。こんなふうにして種をばらまいているのですね。

 

スローで撮ると、いままでとは違った発見がたくさんあります。ぜひみなさんも植物の決定的瞬間を集めて、スローの世界を楽しんでみてください。

秘技!マクロレンズ装着!

ここまででも十分たのしく撮影を楽しめるはずですが、さらに撮影を楽しむために入手をおすすめしたい道具があります。

接写レンズ

それがこれ。スマホのカメラに装着するアタッチメントです。なんとこれ。接写レンズなのです。クリップ式なので、こうしてレンズに挟むだけ。なんとこれだけでスマホのカメラでマクロ撮影が可能になります(100円均一ショップなどでも購入可能です)。

 

えぇ、そんなまさかぁ~、と私も最初は思いました。ですが試してみてびっくり。ムラサキツユクサの花に、マクロレンズで近寄ってみました。右が接写です。

花の雄しべから生える微小な毛

花の雄しべから生える微小な毛が撮れました。毛に小さな粒々があるように見えますが、なんとこれ、細胞ひとつひとつが撮れています。

ヒメツルソバ

記事の最初に登場してもらったヒメツルソバも、通常の撮影ならここまでしか近づけませんが、接写レンズをつけると…、右写真まで接写できました。真ん中に2つ小さな花が開いているのが分かります。ヒメツルソバは小さな花の集合体だったのですね。

 

これは面白い!と、ほかにも色々と試してみました。

セイヨウタンポポの綿毛

セイヨウタンポポの綿毛が花床から抜けていくところも撮れます。

ムラサキツメクサ

ムラサキツメクサが小さな花の集合体で出来ていることもしっかり確認できました。花は中心から外側に向かって順番に咲いていくのだということも分かります。こうなってくるともうルーペもいらなくなってきますね。

 

さらに、雨が降っていると高価な一眼レフカメラを持ち歩くことにも躊躇してしまいますが、スマホならポケットにしまっておいて撮るときだけささっと取り出せば問題ありません。シロツメクサの葉っぱにつく水滴やカモミールの花びらの水滴まで撮影することが出来ます。まさか、スマホでここまで撮れるとは私も予想以上でした。

シロツメクサの葉っぱにつく水滴
カモミールの花びらの水滴

撮ってみよう

わたしのいまの観察テーマは「半径100mの植物観察」です。遠出しなくても、家の近所だけでも、じゅうぶんに植物は楽しめます。スマホで植物写真を撮るだけでも、いつもの街の見え方が変わってくるはずです。ご近所にある命の美しさと驚きを発見しに散歩に出かけてみましょう!

 

今回は、初心者でも挑戦できるよう、内容をとても簡単にして書きました。さらに追及していきたくなった方には下記の書籍がおすすめです。植物写真家のいがりまさしさんの『野の花写真 撮影のテクニックと実践~デジタルカメラで楽しむ四季折々の草木』です。こんなにノウハウを公開していいの?と思うほど、植物写真撮影のテクニックが載っています。読むだけで写真が上手になったような気がする本ですので、ぜひどうぞ。

『野の花写真 撮影のテクニックと実践~デジタルカメラで楽しむ四季折々の草木』

鈴木 純(すずき じゅん)
植物観察家。東京農業大学造園科を卒業後、中国で砂漠緑化活動に従事、帰国後、日本中の植物を見てまわり植物ガイドとして独立。街の植物観察会を中心に、保育や地域おこしなど幅広く活動。
著書に『そんなふうに生きていたのね まちの植物の世界』(雷鳥社)。

『そんなふうに生きていたのね まちの植物の世界』

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