こんなバラの修景、見たことありますか! The Natural Gardens of Sakano(坂野ガーデン)
茨城県常総市にある国指定の重要文化財「坂野家住宅」に隣接する、約4,000㎡の敷地に約700品種1,000株のバラが咲く「The Natural Gardens of Sakano」(通称:坂野ガーデン)をご紹介します。
私が初めて訪れたのは約10年前のこと。坂野武美さんが坂野家17代当主のご主人とつくられた庭を一般に公開していたときでした。そのとき、都会で働いていたお嬢さんの坂野郁子(ゆうこ)さんが、仕事をやめて庭を手伝っていると話を聞いた覚えがあります。その後、郁子さんは育種家でもある将史さんとご結婚され、バラだけではなく、宿根草や球根も楽しめる庭づくりを進めています。今や、ナチュラルなローズガーデンとして、その素晴らしい修景がバラ好きに広く知られるようになりました。
昨年、2020年からは秋の公開を止め、春のシーズンに集中して庭を見せていく、と決めた矢先の新型コロナウイルス禍、結局オープンできたのは、茨城県の緊急事態宣言が解除された翌日5月15日でした。といっても、みなさん来てくださいと大きな声で言えない状況は続いていました。近隣の方がぼちぼち訪れていたようですが、せっかくの素晴らしい修景を多くの方に見て頂きたいと思い、東京の緊急事態宣言解除後に訪れて観た、今年のガーデンの様子をご紹介することにしました。
坂野ガーデンの見どころはいくつもありますが、まずは何本もある高木とバラや草花などとの共演です。高木が聳え立つエリアに迷路のような小路を配して、森の中でバラを楽しむ演出です。
次に高木の向こうに広がる、バラと宿根草や球根などの草花との共演エリアです。ボーダー的に植栽していますが、開けた側を見れば広い空とボーダーガーデン、森の側を見れば、高木茂る森を背景にしたボーダーガーデンが楽しめます。
さらに、ちょうど高木の森とボーダーの境にある、切り立つような斜面に植栽されたバラの共演です。フェンスなどで立体的に仕立ててあり、花の多くが遅咲きのこのエリアが、私が伺ったときは最も見ごろでした。
見ごろの花には、魅力的な品種がたくさんありました。自分の庭でもこんな風に咲いたらいいな、と思える品種たちです。
もう一つ加えれば、高木に誘引したつるバラの風景がとてもステキで、ほかではなかなか見られない景色になっています。同じ品種でも、他のバラ園で見るのとは全然見え方が違います。
ご主人の将史さんの育種するバラも、2017年最初に発表したプリムレーゼ以降、毎年生まれています。今回も、試作品を含めてまだ花が咲いているものをいくつか見せてもらいましたが、なかなかよい花がありました。まだまだ若い育種者で、この修景の中で見栄えのする花を生み出そうと頑張っていますから、将来が楽しみです。
それに、坂野ガーデンは花ばかりではありません。ウサギに、ウコッケイに、モルモットにと、小動物たちが訪れた人を楽しませてくれます。宿根草ガーデンでは、チョウやハチなどの昆虫たちも生き生きと飛んでいました。生き物たちと共生できる庭であることがわかります。
母屋の前では、バラの苗も販売していますので、見て気に入った開花株を持ち帰ることも可能です。個人のお庭というには、スケールが大きいのですが、それぞれのバラの個性を生かした仕立て方を楽しめるガーデンとして、バラ好きなら、ぜひ一度は訪れたいスポットです。
今年はすでに終盤を迎えてしまいましたが、来年もまたすばらしい修景が見られるはずです。来年まで覚えておいてください。そう、今年は特別に、秋も公開するかもしれないとのこと、気になる方はサイトをチェックしてください。
The Natural Gardens of Sakano (坂野ガーデン)
http://www.sakano-garden.com/
取材・構成・文・撮影 出澤清明
園芸雑誌の元編集長。植物自由人、園芸普及家。長年関わってきた園芸や花の業界、植物の世界を、より多くの人に知って楽しんでもらいたいと思い、さまざまなイベントや花のあるところを訪れて、WEBサイトやSNSで発信している。
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