福島県の地野菜・伝統野菜

2023.01.19

アザキダイコン(弘法大根)

アザキダイコンの根(収穫時)

アザキダイコン花

アザキダイコンはおろしてソバの薬味に

大沼郡金山町の在来大根。長さは5~15cm、根茎は3cm程度で、肉質はかたく、水分が少ないです。辛みが強いため、そのままで食べることはほとんどなく、おろしたしぼり汁をそばつゆに入れるなど、薬味として使うことが多いです。「あざき」とは、人をだます「あざむく」が転じたという説もあり、“食用の大根に似ていますが、かたい上に辛みが非常に強く、人をあざむく大根”から名前が付いたのではないかという説もあります。

アザミゴボウ(立川(たちかわ)ゴボウ、アザミバゴボウ)

アザミゴボウの花

アザミゴボウ栽培風景

アザミゴボウ収穫

明治末期から会津坂下町立川地区で多く栽培されていたことから「立川ゴボウ」の名前が付きました。また、鋸歯(ギザギザ)が良く発達しアザミ葉となることからアザミゴボウと呼ばれています。日本に現存する唯一のアザミ葉品種と考えられていて、とても貴重なゴボウです。根は長く肉質および香りが良く、ス入りしにくいゴボウです。収穫量が少ないために栽培が減少した品種です。

会津丸(なす)

会津丸の果実

会津丸栽培の様子

会津地方一帯で栽培されてきた丸型のナスです。光沢があり、巾着形に近い丸形で、直径8~10cmになると収穫されます。肉質はキメが細かく、果皮はややかたいです。煮物や焼き物に向いています。

会津菊南瓜(会津小菊座、会津小南瓜、会津早生)

会津菊南瓜の完熟果

会津菊南瓜の断面

外皮に深い溝が入っているので輪切りにすると、菊の花が咲いたように見えることから「菊座かぼちゃ」

350年前(江戸時代)から会津若松市の門田町飯寺地区を中心に飯寺(にいでら)カボチャとして栽培されてきた日本カボチャです。収穫時期が7月中旬から8月中旬と早く、「夏至カボチャ」とも呼ばれていました。成熟するとロウのような粉を吹いてきます。肉質は粘質で、西洋カボチャとは異なります。

舘岩かぶ

舘岩カブの収穫(根の形は色々)

舘岩カブ栽培風景

南会津の舘岩村や檜枝岐村周辺で栽培されている赤カブで、320年以上前から焼畑式で栽培されていたといわれています。表皮は赤紫色、中は白色です。標高の高い地域になると、表皮は赤に発色します。この地域は、そば、あわ、ひえが主食で、細かく切ったものを混ぜて量を増す糧めし等の材料として利用された時代もありました。肉質はち密で貯蔵性も高く、漬け物に利用されます。

信夫冬菜(しのぶふゆな)信夫菜(しのぶな)

信夫冬菜(収穫期)

大正末期より福島市渡利地区から岡部地区にかけて栽培されてきた漬け菜で、小松菜に近い品種と考えられています。福島市を含めた地域の旧郡「信夫(しのぶ)」が名前の由来です。江戸時代後期に伊勢神宮へ参拝に行った人が種を持ち帰ったのが始まりといわれます。寒い時期に濃い緑色で光沢のある葉に育ち、葉はやわらかく美味しいです。凍み豆腐と一緒に煮浸しにするのが当時の定番調理方法です。

真渡瓜(まわたうり)

真渡瓜の果実

真渡瓜の果実断面

大正の初期頃、会津若松市北会津真渡地区で栽培されてきたことから「真渡瓜」の名が付きました。完熟すると果皮が銀色になり、芳香を放ちます。味は良いですが、軟化しやすく日持ちしません。昭和30年代までは盛んに栽培されていましたが、プリンスメロンの登場とともに激減。現在はお供え物として使われることが多いです。

慶徳タマネギ(慶徳中甲高黄)

喜多方市慶徳地区の発祥。淡路の泉州中高たまねぎをベースに会津地方で品種改良をして育成されました。縦が長い球形で、やわらかく甘みが強いのが特徴です。昭和39年には農林大臣賞を受賞したのをきっかけにこの名前にしました

かおり枝豆

会津地域一帯で栽培されています。普通の枝豆よりもさやが大きく、豆も大粒で甘みがあります。茹であがった時、遠くにいてもこの香りが伝わる事から、「かおり豆」といわれています。

アサツキ(雪中アサヅキ)

県内各地に自生しており特に二本松市安達町、西会津町、柳津町周辺にて栽培されています。アサツキ栽培は露地とハウスで行われており、会津地方では雪の中から掘り起こすため「雪中アサヅキ」とも呼ばれ、辛みだけでなく豊かな風味があります。露地栽培では、葉が短かく鱗茎が曲がった「鷹の爪」のような形になります。ハウス栽培では保温することによって葉を伸ばし、葉ネギのようになります。昔から正月の膳には欠かせない作物でした。弘法大師が伝えたといわれ、別名「弘法あさづき」ともいわれます。

会津早生茎立ち(荒久田茎立)

会津若松市町北町荒久田が発祥で、昭和以前から栽培されていた漬け菜の一種です。早春に伸びたトウを食べます。冬を越したトウは甘みがあり、やわらかいです。お浸しやカラシ和えにしますが、昔は茹でた茎立を干して乾燥させ、煮物などに使用し初夏まで楽しんでいました。

ちりめん茎立

会津若松市周辺で栽培されてきた、葉がちりめん状に縮れているのが特徴の茎立ち菜です。やわらかく味の良い品種です。花茎が出始めるのが遅い品種なので、会津早生茎立ち(荒久田茎立)に続いて収穫されます。

かぶれ菜

県内在来の茎立菜(西洋アブラナ)で、「かぶれ菜」というのは福島県での呼び方です。冬の間は葉を食べ、春になるとトウを食べます。折り菜、芯つみ菜の両方で利用できる「かき菜(関東地方での呼び名)」と同じです。苦みは少なく、加熱すると甘くなります。お浸し、みそ汁、炒め物におすすめです。

会津赤筋大根

戦前には、会津地方一帯でつくられていた地大根です。名前の通り、大根の表面に赤い筋が入り、葉柄にも少し赤紫色の部分が見られます。表面に赤い筋はありますが、中は白い大根です。長さは30~40センチほどで、肉質はち密でややかため。生のままかじるとシャクシャクした食感で、僕の好きな大根の1つです。水分が少ないので、肉質は辛味大根に似ていますが、辛みは一般の大根と同じです。漬物に使われることが多いですが、肉厚でしっかりと煮込んでも煮崩れないため「大根もち」にするのもおすすめです。

庭の菜園で栽培

源吾ネギ

中通り地方の須賀川市を中心に栽培されています。須賀川市に住む安藤源吾氏が「藍黒一本太ネギ」から風土に適した品種に改良したといわれています。斜めに植える「やとい」により曲がりネギにしています。柔らかく加熱するとトロトロになるのが特徴です。

阿久津ねぎ(阿久津曲がりねぎ)

明治30年(1897年)頃に富山の薬行商人から譲り受けた種子を栽培し、郡山市阿久津地区の気候・風土に適したネギです。阿久津地区の土壌は粘土質が多いため、「やとい」を行いネギを曲げ、白い部分も青い部分もやわらかく、甘い「阿久津曲がりネギ」になりました。令和4年2月、福島県では「南郷トマト」に次いで2品目の「地理的表示(GI)保護制度」に登録されました。

関連する記事