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イカナゴ(コウナゴ)を選ぶ
関西ではイカナゴ(玉筋魚)、関東ではコオナゴ(小女子)
全国各地で漁獲はされていますが、兵庫県の明石では通常2月下旬から3月初頭に漁が解禁されます。この時期に取れる稚魚はシンコ(新子)と呼ばれ、各家庭でも主にくぎ煮にされ郷土料理として特産にもなっています。シンコは鮮度も重要なため、漁港から小売店へすぐに運ばれます。大きく成長したものはフルセ(古背)、カマスゴ(梭子魚子)と呼ばれ、釜揚げなどで食べられます。イカナゴは低水温を好むので、暑さに弱く、水温15℃以上になる初夏から晩秋までは砂に潜って夏眠します。
カルシウムや鉄分が豊富な魚
イカナゴは水面を長い群(玉)になって泳ぐので、 玉筋魚(イカナゴ)と呼ばれます。小さいものを小女子(コオナゴ)、大きいものを大女子(オオナゴ)と字をあてる地方もあります。名前の由来は「いかなる魚の子なりや」と、何の魚の子か判らなかったことからイカナゴと呼ばれるようになったと言われています。イカナゴは骨ごと食べる魚なので、カルシウムをたくさん摂取できます。骨の生成に必要なリンも豊富に含んでおり、それらの吸収を助ける働きがあるビタミンDも豊富です。また、鉄分を多く含んでいますので、貧血気味の方にはおススメの魚です。
明石の春の風物詩 イカナゴのくぎ煮
潮の流れが速い明石海峡の海にもまれ、イカナゴの身も引き締まっています。イカナゴのくぎ煮は、明石や神戸を中心につくられている家庭料理です。イカナゴ漁が解禁になる春先では、町のあちこちでイカナゴを炊く醤油の香りがしてくるので、「イカナゴの香りがするとそろそろ春がやってくる」といわれるほど、明石の春の風物詩となっています。「くぎ煮」という呼び名は、醤油、みりん、ザラメ、生姜などで煮詰められ、折れ曲がって赤茶色になっている姿が、錆びた釘(くぎ)に似ていることから名付けられたと言われています。
イカナゴ(コウナゴ)のおいしい食べ方
買ったらすぐに調理
イカナゴは身が柔らかく縮みやすい魚なので、何よりも「鮮度」が味を左右します。傷みが早いので、買って帰ったらすぐ調理します。一晩寝かせたりするとくぎ煮にした時に一匹一匹が綺麗な姿のままではなく、大半がちぎれた状態に仕上がってしまいます。明石ではイカナゴ漁が解禁されると多くの鮮魚店がある商店街の魚の棚(うおんたな)にお店の開店時間に主婦の方が行列をして買いに行きます。明石ではお昼の11時半に獲れたての魚が競りに掛けられます。これが有名な明石の昼市です。昼市で競り落とされたイカナゴを店に搬入される時間を狙って買いに来るベテラン主婦も多くいます。イカナゴを美しく、美味しいくぎ煮に仕上げるには、微妙な火加減を調節しながら、タレが丁度なくなり、しかも焦げ付かないように、ほど良い加減を見極めて引き上げます。折れ曲がるのは、新鮮ないかなごの身が瞬間的に引き締まった証拠です。 素材の鮮度が良いほど、腹が割れたり、頭が欠けたりすることもなく、きれいな曲線に仕上がります。
稚魚はシンコと呼ばれ2cm前後の大きさ。近年、シンコの不漁が続いている。
甘辛く煮た郷土料理「くぎ煮」として食卓を飾る。
明石の台所として栄える【魚の棚商店街】。100店舗以上が軒を連ねる。
明石の林崎漁港では春の訪れを告げるイカナゴの水揚げがはじまった。
イカナゴ(コウナゴ)の豆知識
明石の魚が美味しい理由は
明石海峡付近は潮流の浸食のため深くなっていますが、海底は全体として平たんで,水深はおおむね40m未満です。鹿ノ瀬という明石市沖合10km (最浅部2m)の場所はイカナゴの産卵場として有名です。瀬戸内海のイカナゴは瀬戸内海の中で生活を送っているため、仔魚(しぎょ)から成魚までかなりの量のイカナゴがいます。イカナゴは中・大型魚の餌として食物連鎖の中でとても重要な位置にいる魚です。イカナゴを狙って、タイ、ブリ、サワラなどの魚類が瀬戸内海に入ってきます。
明石といえば、全国に知られる美味い魚の水揚産地です。『鯛』『タコ』『アナゴ』『カワツエビ(サルエビ)』『マルハゲ(カワハギ)』『タチウオ』など、数えだすとキリがありません。明石の美味しい魚は激流の早い明石海峡に揉まれながらも、プランクトンやエビ、カニ、イカナゴなどそれぞれの魚が大好きなエサを豊富に食べ、回遊しているうちに身がキュッと引き締り極上な魚になります。イカナゴは、瀬戸内海を豊かにしている重要な魚なのです。
明石の魚 (兵庫県)