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キビナゴ(黍魚子)を選ぶ
鹿児島のプライドフィッシュ
キビナゴの最大の特徴は、体に入った美しい銀色の縞模様です。鹿児島では帯のことを「キビ」というから、魚体に走る青白色の縦縞を「帯」と考えて「帯(キビ)」の「小魚(ナゴ)」で「キビナゴ」という名前の由来になっているという説が有力です。キビナゴは伊豆半島以西でよく食べられている魚です。特に鹿児島県ではなくてはならない郷土食材で、長崎県、高知県といった暖流に面した地域でまとまった漁獲があります。小魚で傷みが早いこともあり、漁獲地以外に流通することは少ないようです。身が柔らかく手で開いて簡単に刺身を作ることができるので、鹿児島では手開きした刺身を菊の花にかたどって並べる「菊花造り」が有名です。
キビナゴ漁は午前3時以降
キビナゴは夕方に餌を食べます。餌は赤い色のアミエビを食べているため、食べたアミエビが未消化で残っていると腹が赤みを帯びた感じになっています。この色が消えるのは消化が終わった午前3時以降となるので、午前3時以降に漁が始まります。その理由は腹にアミエビが少しでも残っていると鮮度落ちが早くなるからです。したがって、腹が赤みを帯びているキビナゴは鮮度が落ちたものというわけではなく、鮮度落ちが早いので買ってきたらすぐに食べるか調理しましょう。鮮度を見る時は、目が黒く澄んでいることと、体側の帯がはっきりとしていて身が固く張りがあるかどうかを見ます。
「鮮度が命」。水からあげると、すぐに死んでしまうデリケートな魚
銀色の体をキラキラ輝かせながら、海面スレスレを泳ぐキビナゴの大群は実に美しく、「海のしずく」「海の宝石」などといわれています。そんなキビナゴは綺麗な水の中でしか生きていくことができないので、1秒でも水の外に出すと死んでしまうため水族館で長期飼育できた例がないといわれています。またウロコなども、人間の手に触れただけでボロボロと落ちてしまいます。また、小さく身がやわらかいので、刺身にするには、包丁を使わず一匹ずつ手開きしていきます。刺身が一番美味しいのは12月頃、脂が乗って塩焼きが美味しいのは2月頃、白子や卵がたっぷりで天婦羅やフライが美味しいのは5月頃となり、年に3回美味しい時期があります。
キビナゴ(黍魚子)のおいしい食べ方
すき焼き風の鍋料理「きびすき」
鮮度が良い場合、キビナゴの味をそのまま楽しむことができる刺身がおススメです。鹿児島では味噌、酢、砂糖で作った酢味噌が添えられることが多いです。
2011年12月から鹿児島県阿久根市では「きびすき」による街づくりに取り組みました。「きびすき」とは、キビナゴのすき焼きです。すき焼きは牛肉を砂糖と醤油で甘辛く煮た料理ですが、港町では簡単に手に入るサバやイワシを牛肉の代わりに使っていました。今でも全国に“うおすき”と呼ばれている魚を使ったすき焼きですが、阿久根市ではキビナゴを使っています。砂糖や醤油で作った割下が入った鍋に野菜と一緒にキビナゴを入れ、表面が白くなったら食べます。火を通しすぎないのがポイントです。
刺身はわさび醤油や酢味噌で食べます
淡泊な味なので天ぷらも美味。天つゆよりも塩で
干すことによって余分な水分がなくなり、旨味が凝縮されます
ニンニクと一緒にオリーブオイルで。「アヒージョ」の出来上がりです
キビナゴ(黍魚子)の豆知識
キビナゴとイカナゴは○○ナゴ繋がりで同じ仲間?
結論から言いますと仲間ではありません。スズキ目 ワニギス亜目イカナゴ科のイカナゴに対し、キビナゴはニシン目ニシン科の魚です。簡単にいうと、ニシンやマイワシと仲間なのです。両方の魚の「ナゴ」は、「小さい魚」などの意味があるそうです。関東ではコオナゴ(コウナゴ)という呼び名が一般的ですが、関西では「イカナゴ」で漢字では「玉筋魚」や「如何子」と書きます「如何子」という漢字の由来は、その昔、たくさん獲れる小さな魚がいかなる魚の子であるか分からないことから、誰かが如何子と書いたのが、「イカナゴ」という名前の始まりといわれています。(諸説あります)
キビナゴは海の中では群れで行動します。これはあたかも1尾の大きな魚と敵の目を欺くための習性ともいわれていますが、効果は無いようで大型魚の格好の餌となってしまいます。カツオ漁などで「ナブラが立つ」と言いますが、これは小魚が群れていることを指しており、そこには小魚を食べようとしている大型魚がいるということなのです。キビナゴはカツオの一本釣り用の生餌や養殖ブリの飼料として利用されています。