アワビ(鮑)

2024.02.28

旬: 7月~9月  
11月~12月 エゾアワビ(東北・北海道)
主産地: 岩手県、宮城県、北海道

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熨斗(のし)紙はアワビで出来ていた?

贈り物に「のし袋」や「のし紙」を利用しますが、これは元々アワビで出来ていました。鎌倉時代、有力な武士は、贈り物に酒樽と干アワビを贈りました。裕福でない武士は酒樽と、干アワビが高価なため代わりに熨斗(のし)アワビを贈りました。かつては和紙に包んで献上された熨斗(のし)アワビですが、その礼儀作法は今でも浸透し、贈答品に「のし紙」が添えられるようになりました。熨斗(のし)アワビとはアワビを薄く剥がして、平たく伸ばし、日干しにして熨(の)しました。吉事に欠かせないものであり、作る時に伸ばすという工程があることから、「延命延寿」や「敵をのす」めでたい食べ物とされていました。

アワビの種類

一般にアワビと呼ばれるものは、クロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビ、エゾアワビの4種類があります。漁獲量のほとんどはクロアワビとメガイアワビの2種類です。そのクロアワビやメガイアワビは冬に産卵を終え、夏にぷりっぷりに肥え旬を迎えます。東北地方や北海道の沿岸で採れるエゾアワビは冬に旬を迎えます。マダカアワビは、30cmまで成長する大型のアワビで、現在ではほとんど水揚がない貴重なアワビです。アワビと似ているものにトコブシがありますが、見分ける方法があります。それは貝殻に開いた穴の数です。アワビ類は外側に4個ほどの穴があいていますが、トコブシにはこの穴が7個前後あり小ぶりなのが特徴です。

中国の皇帝だけが食することができたアワビは日本産

中華料理では、干しアワビはフカヒレ、ツバメの巣とともに三大珍味とされています。乾燥させることでアワビの旨みと風味が凝縮され、戻した時により深い味わいとなります。アワビは成長がゆっくりである上に、乾燥させるとサイズが小さくなるため、それを考慮し、それなりのサイズになるまでには長い年月が必要になります。中国ではその貴重さからお金にも例えられ、「乾貨」とも呼ばれています。最高級とされる干しアワビは、中国産ではなく日本で生産され中国へ輸出されています。岩手県三陸町吉浜の干しアワビは「吉浜(きっぴん)アワビ」という世界最高級のブランドアワビとして広く知られています。

アワビのおいしい食べ方

定番は「酒蒸し」「刺身」「ステーキ」

「酒蒸し」は、アワビに酒を振り蒸すことで、とてもやわらかくなり、旨みを引き出す調理方法です。ぷるんとした食感を楽しむことができます。

「刺身」は、アワビのもつ食感や味を楽しむことが出来る方法です。上品な甘みが感じられ、コリコリとした独特な歯ごたえは刺身ならではです。わさび醤油の他、アワビの肝を使った肝醤油で食べるのも美味しいです。

「ステーキ」は、バター醤油が定番。適度な弾力があり、バターが加わることでコクがプラスされます。

千葉県産マダカアワビ

塩をまぶしてタワシでこすり洗いします

酒を振り、昆布をのせ、3時間弱火で蒸します

塩味と旨みがしっかりあるのでそのまま食べます

アワビの豆知識

「磯のアワビの片思い」

「アワビ」という名前は、牡蠣等の二枚貝ではなく巻き貝なので、片側にしか殻がなく、殻が一枚なので「会わずにわびしい」からきている説があります。
アワビは、夜行性なので夜になると岩礁を動き回り、アラメ、ワカメ、カジメ、コンブなどの海藻を歯舌と呼ばれるギザギザになった歯で削り取り食べます。殻の色は食べる海藻によって変わり、一般的には黒みがかった色です。アワビも全国で養殖されており、海のない内陸部の建物の中でも可能です。様々な種類の海藻を食べて育つ天然アワビに対し、養殖アワビは単一のエサを与えられて育ちますので、それが貝殻の色に出やすく、殻が緑色っぽくなります。味ですが、養殖技術の向上に伴い、天然に劣らない味の養殖アワビも存在します。アワビは死ぬと臭みが出ますので、死んだ天然アワビよりも生きた養殖アワビの方が良い場合もあります。

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