ブリ (鰤) 

2024.03.01

旬: 12月~2月
主産地: (天然) 長崎県、石川県、島根県
    (養殖) 鹿児島県、大分県、愛媛県

ブリ (鰤)を選ぶ

まるまる一匹買う場合

目がみずみずしく張りがあり、透明感がある物、つまり目が澄んでいない白濁しているもの、乾いているものは避けましょう。全体によく太っていて大きいものの方が脂ののりが良いです。エラ蓋を開けてみて、エラが鮮やかな赤い色をしているかチェック。また、活け締めされているものが良い。天然物は尾が鋭く尖っているものを選び、養殖物の場合は尾が逆に丸いものを選びましょう。胴体にある帯状の黄色部分がはっきりしているものがよいとされています。

切り身を買う場合

血合いの色が赤い方が新鮮。身に張りがあり盛り上がっている。ドリップなどが出ていないこともチェックしましょう。新鮮なものは身に透明感があり、鮮度が落ちると白くにごってきます。天然ものは、血合の色がくすんできても味には関係ありません。しかし養殖ものは、血合の色が黒ずんでくると味が落ちています。やがて臭みが出るなど劣化してくるので、保冷材と一緒に持って帰り、帰ったらすぐに冷蔵庫へ入れましょう。切身、刺身の場合、切り口を見て切り口の鋭角さが失われている場合は、時間が経っている証拠です。

切り身は皮の色を見て選ぼう

売っている切り身をよく見ると、皮が青っぽいものや白っぽいものがあります。ブリの切り身の状態で、皮が青色の部分はブリの背中側の部分になるので、身が締まっていて味がさっぱりとしています。ブリのお腹側は、切り身の皮は白なので、脂がたっぷりと乗っています。味の好みで選ぶだけでなく、料理内容によっても使い分けてみましょう。脂が多い部位は、脂を落として調理する、塩焼き、照り焼きなどに。逆に脂が少ないものは揚げ物など、油を足す料理にすれば最適です。

ブリ (鰤)のおいしい食べ方

刺身よし、煮てよし、焼いてよし。しゅぶしゃぶはいかが?

刺身、照り焼き、塩焼き、煮魚、しゃぶしゃぶ、汁物など、料理法も幅広く何でも合います。特におススメなのは寒ブリをさっと鍋にくぐらせて食べる「ブリしゃぶ鍋」です。刺身でも食べられる新鮮なブリをさっと鍋にくぐらせて食べる贅沢な鍋です。日本全国諸説あるようですが、京都府の丹後地方がブリしゃぶ鍋の発祥の地といわれています。

ブリしゃぶ鍋に使用するブリは脂が乗っていて柔らかい腹身がおススメです。ブリは柵で買い、なるべく断面が大きくなるように包丁をできるだけ寝かせ4mm程度の厚さのそぎ切りにします。昆布を入れるだけのシンプルなスープに2~3回しゃぶしゃぶします。表面が白っぽくなり、中がほんのりピンクに色づいた状態が美味しいです。加熱しすぎると身がボロボロとなりますのでご注意ください。

ブリしゃぶ鍋。断面はなるべく広く切ったほうが、口に入れたときにブリの旨み十分に感じることができます。

ブリは脂の乗りが非常に良いため、大根おろしとの相性もよいです。ワサビ醤油よりもあっさりと食べることができます。

寒ブリの寿司は醤油ではなく、塩で頂くのもおススメです。

ブリかまの塩焼き。脂が乗ったかまの美味しさが引き立ちます。パリパリの皮とジューシーな身が美味しい。

ブリ (鰤)の豆知識

ブリコはブリの子?

ブリは「出世魚」として知られています。地域によって魚体の大きさから呼び名が違いますが、どこの地域でも魚体が80cm以上であるものが、ブリとして扱われています。
関東での呼び方は、モジャコ(稚魚)ワカシ(35cm以下)イナダ(35-60cm)ワラサ(60-80cm)ブリ(80cm以上)です。関西では、モジャコ(稚魚)ワカナ(モジャコより少し大きい。兵庫県瀬戸内海側)ツバス、ヤズ(40cm以下)ハマチ(40-60cm)メジロ(60-80cm)ブリ(80cm以上)となります。

「カンパチ」と「ヒラマサ」はそれぞれブリとは別の魚ですが、同じスズキ目スズキ亜目アジ科ブリ属に分類される仲間で、ブリ御三家と呼ばれています。ブリの旬は冬ですが、カンパチやヒラマサは夏が旬になります。
ブリコはハタハタの子です。ブリコの粒は大きく歯ごたえがあります。噛むと「ブリブリ」という音がするのでブリコといわれたという説と、もう一つは関が原の戦いで、石田三成側に加担したと疑われた水戸藩主佐竹義宣が出羽の久保田(現在の秋田県)に国替えさせられました。毎年正月に味わっていたブリが秋田には無い。そのさびしさを紛らわせるために「ハタハタの卵巣」をブリコと呼ばせて食したのが始まりともいわれています。

ブリ(鰤)の代表的なご当地料理、富山県:ブリ大根

ブリ大根ってどんな料理?

出世魚のブリを使う料理は縁起がいい

柔らかく煮た大根に熱湯をくぐらせたブリのアラを加え、しょうゆや砂糖、だしなどで味を調えて煮付けた日本の郷土料理。ブリに脂が乗ってくる冬の料理。ブリは成長に伴って何度も名をかえることから、出世魚と言われる。富山湾では良質なブリが多く獲れ、富山の一部の地域では、娘の健康と娘婿の出世を祈願し、嫁ぎ先にブリを贈る風習が今でも伝わります。2007年、農山漁村の郷土料理百選において富山県の郷土料理として選定され、今では全国各地でよく食べられているポピュラーな料理です。

ブリ大根に必要な材料は?(3〜4人分)

ブリ(カマ、切り身)  700g
大根          1/2本         
ショウガ        大さじ2程度      
ネギ          好みで         
水           3カップ(600ml)
酒           1カップ(200ml)
濃口醤油        大さじ5(75ml)
砂糖          大さじ4
みりん         大さじ5(75ml)
ゆずの皮のせん切り   少々  

ブリ大根の作り方

①ブリのカマと身は、食べやすい大きさに切ってボウルに入れ、分量の塩をして20分置く。
②ブリの入ったボウルに約80度の湯を注ぎ、表面の色が変わったら水にさらし、ウロコなどの汚れを取り除く。
③大根の皮を厚めにむき、2cm厚さの半月切りにし鍋に入れ、かぶるくらいの水を注いで中火にかける。煮立ったら15分ほど煮て、ザルに上げる。青ネギは斜め細切りにする。
④鍋に大根、ブリ、煮汁用の水、酒、みりん、砂糖を入れて落とし蓋をし、沸いてくれば中火で10分煮る。
⑤醤油を加えて弱めの中火で15分ほど煮る。
⑥鍋にショウガ汁を加え、器に盛り、青ネギとゆずの皮のせん切りを混ぜてのせる。

ブリ大根、発祥の由来とは?

ブリは捨てるところが無い魚

北陸では、晩秋から初冬に掛けて起こる寒い大荒れの日を「ぶりおこし」といい、 これが終わるとブリの水揚げが本格化します。 富山湾では良質なブリが多く獲れ、中でも富山湾の西端にある、氷見でとれるブリは有名です。ブリ大根の発祥は不明ですが、どう調理してもおいしいブリを使って、ブリ大根や照り焼き、ブリのあんじゃなます(ブリを使ったなます)などブリの味を生かした沢山のブリの郷土料理が生まれ愛されてきました。富山の人にとってブリは捨てるところのない魚なのです。

ブリ大根はご当地ではどんな時に食べられる?

ブリ大根は一般的に浸透し、各家庭料理です。「寒ブリ」は12月~2月の厳寒期に旬を迎えます。ですので、富山では、12月~2月に食べられます。ブリは漢字で書くと「鰤」、魚に師です。
ブリが師走に最も美味しくなるから、という意味で魚偏に師の字が当てられているそうです。
ちなみに、なぜ『ブリ』という名が付いたのか? 由来はいくつかありますが、脂の乗っている魚であることから「あぶら」が「ぶら」となり、「ぶり」となった説が有力です。

ブリ大根の栄養価・効能は?

ブリは、良質なたんぱく質をはじめ、脂質、ビタミン類を多く含み、大根には食物繊維やビタミンCが多く含まれ、この2つを合わせたブリ大根は、栄養バランスの取れた料理です。ブリ大根の鍋に残った煮汁がゼリー状になっているのは、アラから出たコラーゲンが固まっているのでゼリーのようになっています。体内に吸収されたコラーゲンは、大根のビタミンCとともに新しいコラーゲンを作り出し、肌の弾力性を高める効果があります。

またブリに含まれる脂質のうちEPA(エイコサペンタエン酸)は、中性脂肪を下げ、血液をサラサラにする効果があり、DHA(ドコサヘキサエン酸)は、情報伝達に欠かせない栄養素で、記憶力の向上や生活習慣病の予防、肌のくすみ改善などさまざまな効果があります。ビタミンB2には、脂肪の代謝をアシストする効果があり、ナイアシンはビタミンB3とも言われ、調理によるロスがない水溶性ビタミンです。ビタミンB2とビタミンB3は、脂質や糖質からエネルギーを効率よく作るための重要な役割があり、ダイエットの味方といわれています。そしてビタミンDは、カルシウムの吸収を助け骨を丈夫にする働きがあり、骨粗しょう症予防の効果がある栄養素です。

ブリ大根を作ったときに、大根が苦くなったり、大根にブリの味が染み込まなかったりした経験ありませんか?

魚を使う料理で一番大事なことは、魚の下処理です。僕は魚の下処理にタワシや歯ブラシを用意します。魚をさばいた時の血合いの部分をタワシや歯ブラシでとり除きます。アラは、歯ブラシで血合いの部分を取り除き、さっと流水できれいにします。キッチンペーパーでしっかり水気を拭き取り、塩をブリ全体に均一にかかるように振りかけ、20分間そのまま放置します。この「塩をかける」というのは簡単に見えますが、均一にかけるというのが難しいので、僕の場合は、手のひらに塩を乗せ、それをブリに揉みこむように塩をつけていきます。何回かすると均一に塩がついています。20分後、再び水洗いし、水気を拭き取ります。鍋でお湯を沸かし、煮立った湯の中にブリを入れ、しっかり火を通したら、水洗いし、キッチンペーパーでしっかり水気を拭き取り、下処理完了になります。

大根は表皮と身の間に数ミリほどの若干色の違う部分があるので、この部分を取り除くように厚めに大根の皮を剥きます。“大根は殿さまに剥かせろ”とは上手く言ったものです。その後、面取りをして隠し庖丁を入れ、煮立たせます。大根を茹でる際に鍋にお米を少し一緒に入れてください。お米の研ぎ汁でも大丈夫です。お米や研ぎ汁を一緒に入れるのは、大根の苦みを取るためです。お米や研ぎ汁にはデンプンが含まれており、ジアスターゼとデンプンが一緒になることで、デンプンが糖に変化し、苦みを取り、甘くなります。また味が染みやすくなります。大根が茹であがったら、水に取り、ぬめりをしっかり取り除き、大根の下処理が終了です。美味しいブリ大根を作るために、ブリと大根の下処理をもう一度確認してみると、次は上手くいきますよ。

ブリ漁の方法は?

「天然のいけす」と呼ばれるほど魚介が豊富な富山湾。富山の漁師の人たちは約400年前から「越中式定置網漁」という定置網を仕掛けてきました。「氷見の寒ブリ」で知られる氷見漁港は、定置網漁発祥の地です。陸地に近いところでも急激に水深が落ち窪んでいる「すり鉢状」な地形のため、魚場はなんと出港からわずか15分程度の場所。ブリは佐渡島のあたりで海が荒れると、富山湾の奥深くまで避難してきます。それを定置網でとらえます。数キロにも及ぶ大きな定置網に入り込んだブリは、船に揚げられる直前まで気づかずにのんびり泳ぎまわっているとのこと。水揚げされたブリは、直ちに氷で満たした船倉に入れ”沖じめ”(仮死状態)にして鮮度を保っています。このやり方が『氷見の寒ブリ』の鮮度と旨みの秘密とのことです。

ブリの魅力

ブリの美味しい時期は冬です。北方の海で成長し、充分に栄養をたくわえたブリは、秋になり気温が下がり始めると産卵のために南下します。12月~2月の真冬のブリは「寒ブリ」と呼ばれ、一年のうちで最も脂が多いです。北陸(氷見など)のブリが美味しいといわれるのは、日本海側は太平洋側と比べて水温が低いため、脂がより乗っているといわれています。この脂は美味しいだけでなく、不飽和脂肪酸のDHAとEPAが豊富に含まれ、脳細胞の活性化や生活習慣病の予防に役立つとされています。40cmぐらいまでの大きさの「イナダ(関西ではハマチ)」は夏の時期に美味しくいただけます。

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