岩手県の地野菜・伝統野菜
2023.01.03
目次
安家地大根(あっかじだいこん)
岩手県岩泉町の北部に位置し、1000m級の険しい山々に囲まれた安家(あっか)地域(旧安家村)で栽培されている伝統野菜です。水分が少なく繊維質が豊富なため、肉質がかたく、氷点下10度以下になる冬でも貯蔵できる保存食として伝承されてきました。表面の色は鮮やかな赤、紫やピンク、白などもあり、強い辛味とほのかな甘みがあるのが特徴で、凍み大根やそばや豆腐田楽の薬味、なます、かき揚げ風の天ぷらなどに調理されます。
暮坪かぶ(くれつぼかぶ)
近江の薬売りの近江弥右衛門が持ち込んだと伝えられ、約400年前から栽培されている遠野市上郷町佐比内暮坪地区の和種系かぶです。暮坪地域以外の遠野市内で生産された暮坪かぶは、「遠野かぶ」という名称になります。長さは約20cm、直径は最大5cmほどの長根系の白かぶで、見た目は小さな青首大根のようなかぶです。独特の風味と辛みが特徴で、皮ごとすりおろしてそばや刺身などの薬味、あるいは漬け物として食べるのが一般的です。
二子さといも(ふたごさといも)
北上市の北部にある北上市二子町で300年以上栽培され続けている在来種の里芋です。里芋には「赤茎(あかから)」と「白茎(しろから)」の2種類がありますが、二子さといもは赤茎種の里芋です。粘り気が強く、ねっとりと滑らかな舌触りです。やわらかいのに煮崩れしにくいのも特徴です。コクがあるので、食べた後に口の中に余韻が残ります。
曲がりねぎ
一関市は白い部分が太く長く曲がっている「やわらか美人」という曲がりねぎの一大産地です。伊達藩時代から伝承されている栽培方法で、ねぎは曲がることによってストレスがかかり、甘みが増え、柔らかいねぎになります。調理の際は、加熱しすぎないようにするのがおすすめです。
矢越かぶ(やごしかぶ)
矢越かぶは、一関市室根町矢越地区で栽培されている黄かぶです。一般的なかぶのイメージとは違い、大ぶりでゴツゴツしています。明治時代に種の行商人が西洋から「ルタバカ」の種を持ち込んだのが始まりと言われています。加熱調理すると黄色くなり、甘みも強くなります。伝統的な料理は矢越かぶともち米と小豆を混ぜ込んで蒸し上げる「かぶ蒸かし」ですが、煮崩れしないのでシチューやポトフ、天ぷらなども合います。
琴畑かぶ(ことはたかぶ)
遠野市琴畑地区で栽培されている果皮は上部が赤紫色で、大根のように細長い形をしたかぶです。漬物などの保存食として利用されていましたが、時代の流れとともに栽培されないようになり途絶えていましたが、2014年に遠野緑峰高校の生徒によって復活したかぶです。
橋野かぶ
釜石市橋野地域で栽培されている小さな大根のようなかぶです。昔かぶ、曲がりかぶとも呼ばれています。
芭蕉菜(ばしょうな)
芭蕉菜は主に漬物用として奥州市江刺区で栽培され、独特な風味と辛みのある青菜です。主に漬物用として利用されるツケナです。芭蕉菜という名前は芭蕉の木(バナナの一種)の葉に似ていることから付けられました。葉は幅広く肉厚で、ぱりっとした食感で歯ごたえがあります。宮城県の仙台芭蕉菜とは別品種になりますが、山形県の山形青菜とは同じ系統になります。
早池峰菜(はやちねな)
遠野地方の早池峰山麓の農家さんに伝わる在来種です。絶滅寸前だったのですが、偶然発見された野菜です。濃い緑色の大きく平たい葉が特徴でシャキシャキとした歯ざわりです。早池峰菜は、茎立菜の一種(花茎を食べるカブ類の変種)なので、かぶのようにふくらみがあるのが特徴です。煮物、炒め物、漬物等にして食べます。
岩手山梨(イワテヤマナシ)
宮沢賢治の童話に登場する、大きさが3センチから8センチほどの姫りんごのような小さな梨で、北上山系に自生し「ミチノクナシ」とも呼ばれています。香りがよく、シャリっとした食感で果汁、甘みは少ない梨とのこと。自生しているものだけではなく、近年は栽培される動きもあるようなので、一度食べてみたいと思う梨です。
山ぶどう(日本山ぶどう)
山ぶどうは東北北部に多く自生している日本古来の野生ぶどうです。ぶどうの在来種としては「甲州」が有名ですが、この「山ぶどう」も在来種になります。一般的なぶどうに比べミネラル分が高い山ぶどうは特に岩手県、中でも久慈地域で栽培されています。粒が小さく、種が大きいためジュースやジャムなどに加工されることが多いです。