秋田県の地野菜・伝統野菜 2
2023.01.10
目次
小様きゅうり
北秋田市阿仁上小様(こざま)地域に伝わる在来のキュウリです。阿仁地域には、江戸時代に日本一の銅産地となった阿仁鉱山があり、鉱山に集まる人々に向けた野菜の栽培が盛んでした。この「小様きゅうり」もその一つでした。その後1978年の閉山とともに野菜の栽培が衰退し、いつしか「小様きゅうり」も途絶えてしまいました。長い間、種が途絶えたとされていましたが、県農業試験場に「小様きゅうり」の種が保存されていることが分かり、近年復活しました。一般的なのキュウリより3倍程度太くちょっとした瓜のようです。輪切りにすると断面が三角形のキュウリです。皮には苦味がありますが、青臭さや苦みもない美味しいキュウリです。
湯沢ぎく
やわらかい花びらを食べる「湯沢ぎく」は、昭和20年代に在来キクの中から食味の良いものを選抜し定着させた食用菊です。お浸しや和え物、新処(あらどこ)なすの「なすの花ずし」などに使います。菊の茹で方はとても簡単ですが、色鮮やかに仕上げるために、酢を入れるのがポイントです。
雫田(しずくだ)カブ
「雫田カブ」は仙北市角館の雫田集落で栽培されています。少なくとも約200年前から存在し、地元では「はじゃぎゃかぶ」などの呼び名で愛されてきた在来種のカブです。こぼれ種で自生するほど生命力が強く、昔は作物の少ないシーズンに重宝されました。野性的でワサビに似ています。
てんこ小豆
「てんこ小豆」は呼び名で、品種は「黒ささげ」です。小豆ではないですが、サヤが天に向かって伸びることや、サヤがかたいことから「天甲小豆」「ならじゃ豆」などと呼ばれます。豆の色は黒く、煮ると煮汁は黒紫がかかった赤色です。赤飯の色もその色になります。なぜ小豆ではなく、ささげを使うのか? それは小豆と違って皮がかたいため、煮崩れせず、小豆のように武士の切腹をイメージさせる胴割れがないからだと言われています。
とんぶり
ホウキグサの実を完熟させ、熱を加えて加工した「とんぶり」は、ぷちぷちとした独特の食感で、「畑のキャビア」と呼ばれます。大館市は日本国内唯一のとんぶりの生産地で、平成29年に「地理的表示保護制度(GI)」に登録されました。とんぶりは緑黄色野菜に分類され、βカロテン、食物繊維などが豊富です。
カナカブ
「カナカブ」は由利地域(由利本荘市、にかほ市)の伝統野菜で、長さ10~15㎝、太さ2㎝ほどの小さい大根の形をした白長カブの在来種です。山の傾斜地に火を放ち、雑草害虫を駆除し、その灰を自然の力で育てる焼畑農法で受け継がれてきました。焼畑農法なので「火野カブ(カノカブ)」とも言われるようになりました。形は一定ではなく、太短、長形など様々です。パリっとした歯ざわりで、独特の辛味と甘みがあります。塩漬けや麹漬けなどの浅漬けに使われ、「かなかぶ漬け」が人気です。
平良かぶ
秋田県の南東端、雄勝郡東成瀬村で古くから栽培されてきた長カブ「平良(たいら)かぶ」。やや辛みのある独特の風味があり、肉質は緻密でパリパリとした食感です。青首大根のような見た目で、長さ15cmほどの手のひらサイズのカブで、明治時代頃から栽培され、古くは焼畑で栽培されていました。平良地区は天文年間(1532~1555年)に新地を求めてきた旅人や商人に開拓されたので、岩手県との交流もあり、岩手県の「暮坪かぶ(遠野かぶ)」に似ていると言われています。「平良かぶのこうじ漬」は麹の甘い香りのする初冬の名物です。
田沢ながいも
旧田沢湖町に位置する仙北市田沢地区で「田沢ながいも」は藩政時代から栽培されています。一級河川の玉川から流れ込む土砂で形成された土壌は砂地が多く混じり、ナガイモの生育に適しています。この土壌以外では育ちにくいこと、長いものでは1m近くにもなりますが、1本1本手掘りで収穫していることから、田沢ながいもは生産量が少なく「幻の田沢ながいも」とも呼ばれます。味は独特の粘りとコクがあり、山芋に近い味です。
松館しぼり大根
目が覚めるほどの辛さと独特の風味が特徴の「松館しぼり大根」。正式な品種名は「あきたおにしぼり」です。鹿角市八幡平字松館地区の「野月」と呼ばれる台地の土壌でしかあの味は出ないとのこと。“しぼり大根”という名前の通り、大根のしぼり汁をそばやイカ刺しにつけます。日本で一番辛いといわれるほど辛いですが、さらに辛さをアップさせるには絞って5~6分経つと辛さがアップします。ぜひお試しください。
山内にんじん
「山内にんじん」は横手市山内地域で栽培されている長さ30cm程度ある長ニンジンで、肩が張ったような形です。山内地域は県南部の県境に位置し、いぶりがっこの発祥地とも言われている地域です。一般的なニンジンと比べると、香りが強く、濃いダイダイ色のニンジンです。ややかための肉質で歯ごたえがあり、甘みもあります。肉質が緻密で煮崩れしにくいため煮物や鍋物に最適です。「山内にんじん」は北海道の在来品種「札幌太」から選抜・育成され、現在主流の「短根系ニンジン」の台頭により一時は衰退しましたが、2007年に復活しました。地元では味噌漬けが人気の食べ方のようです。
石橋ごぼう
「石橋ごぼう」は、「亀の助ねぎ」でもご紹介した大仙市の篤農家、石橋家の3代目亀松氏が、「滝の川」「砂川」「赤茎」の混植から育成し「石橋ごぼう」を誕生させました。石橋ごぼうは、茎が赤く、白肌の肉質はやわらかめ、香りが高いゴボウです。
横沢曲がりねぎ
大仙市太田町の横沢地区に江戸時代から伝わる在来種のネギです。播種から収穫まで2年を要し、2年目の夏に寝かせて定植するために腰の曲がったネギになります。青ネギ、白ネギの両方の良さを併せ持つネギで、独特のぬめりと香りがあり、青い部分の先端まで柔らかいです。生は辛みが強いので薬味に、加熱をすると柔らかく、甘くなります。
エゴマ(つぶあぶら)
エゴマ(荏胡麻)は、「つぶあぶら」「じゅうねん(食べると十年長生きできるという謂れから)」と呼ばれ古くから食用と灯火用としてしようされてきました。現在は、大館市、八峰町、由利本荘市、東成瀬村、大仙市で栽培が行われています。エゴマはシソと原種が同じなので、葉も花もよく似ています。
三関せり
江戸時代から栽培されてきた湯沢市三関地区の「三関せり」の特徴は白く長い根です。寒冷地の三関では寒いので葉茎はゆっくり伸び、葉茎よりも根の方が伸びます。シャキシャキとした歯触りの三関せりは、セリ鍋はもちろん、きりたんぽ鍋にも欠かせない食材です。爽やかな香りと根のシャキシャキを楽しむため、茹ですぎないことが大事です。“根までおいしく食べられるセリ”は鍋以外にも、根の天ぷらがおすすめです。柔らかく、とても美味しいです。
からとり芋
「からとり芋」は芋だけなく、葉や茎の部分まで食べることができる里芋の一種です。秋田県内では由利地域のみで栽培されています。一般的な「里芋」と「からとり芋」の違いは芋にぬめりがあるか、ないかです。からとり芋はぬめりがなく、煮崩れしにくいので煮物やおでんなどで食べます。葉柄(ずいき)は青系、赤系と2種類ありますが、赤系の方が柔らかいです。