新潟県の地野菜・伝統野菜 1
2023.02.11
十全なす
昭和初期に新潟県中蒲原郡の十全村(現在の五泉市)の農家が泉州水なす系の茄子を導入し、自家栽培したものを臼井村(現:新潟市南区)へ嫁いだ女性が持ち込んだものが「十全なす」の発祥といわれています。これらは長岡など他の地域に伝播していき、「白十全」、あるいは「本十全」と呼ばれるようになりました。
昭和15年頃、長岡に泉州水なす系のなすが伝わり、いつしか「梨なす」と呼ばれるようになりました。それが三条市の種苗商により下越地方に「黒十全」として持ち込まれ、現在、下越地方では、「十全」といえばほとんどこの「黒十全」のことをいいます。
いずれにせよ、今日の十全なすは、締まった肉質ながら、やわらかくほのかな甘さが特徴で、浅漬けにされます。
深雪なす(みゆきなす)
泉州水なす系のなすをルーツにもつ深雪なす(みゆきなす)は魚沼市薮神地区で古くから栽培されてきた在来品種です。小ぶりな長卵形で、水分が多く、一般的ななすに比べ甘味が強いので、生で食べることも出来ます。皮は柔らかく歯切れがいいので漬物にするのが一般的ですが、果肉が緻密で締まっているので、加熱しても煮崩れしにくく、煮浸しにすると美味しいです。
中島巾着
明治40年代に中蒲原郡亀田町(現 新潟市江南区)から持ち込まれた「亀田巾着」の種子がルーツではないかといわれています。ヘタ際から果肉に向かって数本の筋が入り、巾着袋を連想させることから、この名前が付きました。果肉はかためで、締まりがよく、煮崩れしにくいです。巾着型であるほど味がよいといわれます。「ふかしなす」にして辛子醤油や生姜醤油で食べるのがおいしいです。「中島巾着」と「長岡巾着なす」 (長岡野菜に指定されている巾着型のなす)は同じものという見解もあります。
魚沼巾着
「魚沼巾着」は、明治30年代に六日町(現:南魚沼市)で和歌山の早生なすと在来のなすが交雑してできたといわれています。小ぶりの巾着なす。皮は厚く、果肉も締まって加熱しても煮崩れしにくいので、ふかしなす、煮なす、炒めなすなどにして食べられます。現在の形は、巾着型よりも丸型が多くなっています。
鉛筆なす
先端がとがっているので「鉛筆なす」の名前が付きました。宮崎県の佐土原ナスが昭和10年(1935年)頃に新潟県白根市笠巻地区に入り、年月を掛けて笠巻地区の気候風土にあった形になったといわれています。果皮、果肉がやわらかく、小なすで収穫し、数日で漬かる当座浸けにします。新潟県新発田市でとれるものを「久保なす」といいます。
久保なす
新発田市久保地区(旧・豊浦町) で多く栽培されていたことから「久保なす」の名が付きました。宮崎の「佐土原ナス」がルーツとされ、「鉛筆なす」と同種のものと考えられています。
やきなす
大型の長なすです。砂丘地園芸の盛んな新潟市北区でも、笹山および内島見でのみ栽培されています。地元では「焼きなす」として食べることが多いことから、この名が付いたといわれています。皮と果肉がやわらかく焼きなす向きの品種で、昭和30年代に「鉛筆なす」を改良したといわれています。果皮は赤紫色ですが、盛夏に果皮色の退色が著しくなります。
笹神なす(白なす)
「笹神なす」は、昭和のはじめごろから阿賀野市笹神地区で「白ナス」と親しまれていますが、色は白ではなく、果皮は薄緑色で米なすに似た形をしています。緑色なのは、果皮に葉緑素が多く含まれているために、緑色になります。果肉がよく締まっており、煮崩れしにくいなすです。
「なすの泥漬け」
ぬかを“泥”に例えているのではなく、瓦の原料となる粘土に漬け込みます。粘土は、粘土質の土を水で練り、塩を足したものを「ぬか床」ならぬ「泥床」としてなすを漬けます。「泥漬け」は良質な粘土が豊富に採れる阿賀野市の安田・笹神地域に伝わる郷土食で、安田・笹神地域だけでなく、全国にも作られている場所はあるようです。
緑なす
「緑なす」は主に柏崎市南鯖石地域の宮之下地区で栽培されている在来種のなすです。果皮は薄く、なめらかな肉質で、甘みのある果肉です。調理法は何にでも合うなすですが、なめらかな肉質が活きる「ふかしなす」(地元では「なすぶかし」)で食べるのがおすすめです。
越後白なす
新潟市西蒲区を中心に栽培されている「越後白なす」は僕が好きななすの1つでもあり、菜園で毎年栽培しています。果形は長卵型で、真っ白な果皮。白はやわらかく見えますが、カチカチにかたいです。一般的な紫色のなすは紫外線から身を守るため、ナスニンという紫色の色素があります。白なすにはナスニンがないので、紫外線から身を守るために果皮が硬くなりますが、このかたい果皮が焼きなすをする時にフタの役割をするので、加熱すると果肉はとろっとろになります。糖度が高めのなすということもありますが、加熱されることで、さらに甘さを感じます。
越の丸
県農業試験場が開発した育成種で、糸魚川市を代表する名産です。会津丸なす系で、甘みが強く、肉質が緻密で締まっているため加熱しても煮崩れしにくいですが、仕上がりがやわらかいなすです。高級食材として田楽などに用いられることが多いです。煮物、揚げ物、漬け物などにも向きます。