長野県の地野菜・伝統野菜 2
2023.04.08
目次
- 1穂高いんげん
- 2下栗芋 (しもぐりいも)
- 3上野大根
- 4親田辛味大根
- 5戸隠大根
- 6ねずみ大根
- 7灰原辛味大根
- 8前坂大根
- 9牧大根
- 10300年以上の歴史がある「木曽の赤かぶ」は6種
- 11芦島かぶ(あしじまかぶ)
- 12王滝かぶ
- 13開田(かいだ)かぶ
- 14細島(ほそじま)かぶ
- 15三岳黒瀬(みたけくろせ)かぶ
- 16吉野かぶ
- 17常盤牛蒡(ときわごぼう)
- 18村山早生牛蒡
穂高いんげん
安曇野市穂高の勝野義権氏によって導入された、穂高地方の平サヤタイプのツルありインゲンです。中の実が成長してもサヤがかたくなりにくく、甘みもあり歯切れの良い食感です。お浸し、和え物、天ぷら、炒め物など何にでも合います。暑さに弱いので家庭菜園での栽培は難しいですが、豆は煮豆にしても美味しいです。
下栗芋 (しもぐりいも)
飯田市上村下栗、「日本のチロル」「天空の里」と呼ばれる標高1000m、最大傾斜38度の山間の急傾斜地、下栗地区で江戸時代から作られているピンポン玉サイズの小ぶりなじゃがいもです。粘質ですが肉質はとても締まっていて、加熱しても煮崩れしません。エゴマ味噌を塗った田楽芋や、煮物などで食べられています。僕が初めて下栗芋を見つけたのは2019年12月に放送された「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」でのロケ中でした。
上野大根
諏訪市豊田上野地区で栽培される上野大根は、寛永年間(1635年頃)の高島藩による開拓時から導入されていたといわれている大根です。下膨れのない円筒形で長さは25センチ程度、肉質は緻密でかたくシャキシャキとした歯ごたえがあり、生で食べると辛いのが特徴です。天日干しし、市田柿の皮と漬け込んだ沢庵漬けにして食べられます。
親田辛味大根
南信州にある下伊那郡下條村親田地区で、江戸時代中期には栽培されていたと記録のある地大根です。カブに似た球形で、果皮が紅色と白色の2色あり、白い方を「ごくらくがらみ」、赤い方を「とやねがらみ」として登録されています。肉質は緻密で水分が少ないため、辛味が強いですが、辛いだけでなく後味は大根特有の甘味があるので、地元では「あまからぴん」と表現されます。皮ごとおろして大根おろしにして食べます。栽培地の下條村親田地区は、昼夜の温度差が大きい気候に併せて、水分の吸収が抑制される粘土質の土地であることから、親田辛味大根の辛みを生み出しています。
戸隠大根
長野市の戸隠地域にある戸隠神社の宿坊には、江戸時代に蕎麦の薬味として戸隠大根が利用されていたと記録が残っており、戸隠大根は、江戸時代に交易する商人が持ち込んだのがはじまりとされています。尻部が下膨れしていて、長さ15〜20cmと小ぶりな辛み大根です。おろすと辛みだけではなく甘みも感じられ、地元では、これを「甘もっくり」といいます。肉質は緻密でかたく、歯ごたえもあり、沢庵漬けにも合う大根です。
ねずみ大根
坂城町を中心に栽培されてきた辛み大根です。下ぶくれでずんぐりとしており、膨らんだ尻からねずみの尻尾のように根が伸びているように見える事から「ねずみ大根」と呼ばれるようになりました。長野の地大根は丸い葉が一般的ですが、ねずみ大根の葉は細く、細かく切れ込みが入っているのも特徴です。肉質は緻密で、水分が少なく辛みが強いので、つゆが薄まらない利点を活かして「おしぼりうどん」に使われます。寒くなるとねずみ大根自身が寒さから身を守るめ、糖を蓄えます。辛みの中にも甘みが残るので、地元では「あまもっくら」と表現します。歯ざわりが良いので、沢庵漬けやおやきにも使われます。
灰原辛味大根
以前は千曲市と長野市の一部で栽培されていた辛味大根ですが、1990年以降に長野市の信更町(しんこうまち)の灰原地区で栽培されています。灰原地区は来客をもてなす際にそばを振る舞うことから、薬味としてこの大根の栽培が始まったといわれています。辛みが非常に強く、すりおろした大根の絞り汁をつけ汁として「おしぼりうどん」にされることが多いですが、緻密な肉質を活かして沢庵漬けにも利用されます。
前坂大根
前坂大根は長野県の北東に位置する山ノ内町前坂地区で栽培されている大根です。山ノ内町は町内に志賀高原や、猿が温泉に入ることで有名な地獄谷野猿公苑がある湯田中渋温泉郷を有する町です。この前坂大根の来歴は不明ですが、「練馬大根」を基にして改良されたとも伝えられている通り、小さな練馬大根のようです。一般的な大根と比べるとやや下膨れた形で、肉質は緻密でかたく水分が少ないことが特徴です。辛味大根ほど辛くはないですが、辛みのある大根なので、おろしにして薬味として食べる他、沢庵漬け、煮崩れしないので煮物、おでんなどに利用されています。市場には出回らなく地元でしか味わえない大根です。
牧大根
牧大根、または牧地大根と呼ばれている大根は、安曇野市穂高の牧地区だけで栽培されている大根です。少なくとも明治時代には栽培されていたことが分かっている歴史ある野菜です。根の長さは15センチから20センチほど、形は下ぶくれで、尻が丸い形です。肉質は緻密でかたく、水分が少ないので辛みも強いです。輪切りにすると繊維質が分かるくらい、繊維が細かく入っているので、食感はパリパリとした歯ごたえを感じます。沢庵漬け、ぬか漬けにして食べられます。
300年以上の歴史がある「木曽の赤かぶ」は6種
芦島かぶ(あしじまかぶ)
木曽郡上松町の芦島集落で栽培されているくさび型で赤紫色のかぶです。木曽の赤かぶの中では最大で、中には500gを超えるものもあります。
王滝かぶ
「王滝かぶ」は、御嶽山のふもとに位置する木曽郡王滝村で栽培され、尾張藩への年貢として出した記録がある赤かぶです。肉質は緻密で甘味強いです。
開田(かいだ)かぶ
旧開田村で栽培されていて、現在も木曽郡木曽町開田高原を中心に栽培されています。すんきを温かいかけそばに入れた「すんきそば」が、木曽の冬の名物。
細島(ほそじま)かぶ
木祖村小木曽細島地区で栽培され、牛角状に曲がるものが多いかぶです。果肉は緻密で果汁が多いです。「王滝かぶ」、「開田かぶ」と近縁ともいわれています。(来歴不明)
三岳黒瀬(みたけくろせ)かぶ
牧尾ダムに埋没した県南部の旧三岳村黒瀬地区(現木曽町三岳)で栽培されていましたが、一軒の農家が40年にわたって自家採種してきたことで今日まで栽培されています。
吉野かぶ
上松町の吉野地区が発祥の「吉野かぶ」は、他の赤かぶ同様、葉茎を「すんき漬け」、かぶを「甘酢漬け」にします。
常盤牛蒡(ときわごぼう)
常盤牛蒡の「常盤」は江戸時代からある常盤村(ときわむら)からの名前です。現在の飯山市常盤小沼(おぬま)で栽培されてきました。常盤地区の土壌は千曲川が運んだ肥沃な堆積土壌で、且つ石がないので、牛蒡が真っ直ぐに深く伸びます。また、アクが少ないことから食べやすい牛蒡になります。
村山早生牛蒡
村山早生牛蒡は、須坂市に伝わるゴボウで、太く色は白っぽく一般的な牛蒡と比べてアクが少ないのが特徴です。とても香りがよいと感じました。
木曽の赤かぶには300年以上の歴史があるといわれ、木曽地方には「芦島(あしじま)かぶ」「王滝かぶ」「開田(かいだ)かぶ」「細島かぶ」「三岳黒瀬(みたけくろせ)かぶ」「吉野かぶ」という6種類の赤かぶが栽培されています。葉と茎を当時、貴重品だった塩を使わず、天然の乳酸菌のみで発酵させた漬物「すんき漬け」にします。酢茎漬けがなまって「すんき」という名前になったといわれます。かぶは「甘酢漬け」にします。