長野県の地野菜・伝統野菜 3
2023.04.12
目次
- 1坂井芋
- 2木曽菜
- 3諏訪紅蕪
- 4鈴ヶ沢なす
- 5松本越瓜(まつもとしろうり)
- 6番所きゅうり(ばんどころきゅり)
- 7むらさきいも
- 8清内路黄いも
- 9平谷いも (ひらやいも)
- 10くだりさわ
- 11ぼたんこしょう (ぼたごしょう)
- 12上平大根 (わってらだいこん)
- 13千代ネギ
- 14あかたつ(唐芋)
- 15ひしの南蛮
- 16伍三郎うり
- 17鈴ヶ沢うり
坂井芋
県北部の飯山市坂井地区は、千曲川とその支流の樽(たる)川の決壊で、何度も水害に悩まされてきた場所です。江戸時代、伊勢参りに行った際に「水に強く栽培可能な作物」として里芋が持ち帰られてから、今に続きます。川の氾濫や豪雪地帯のため、この土地にはミネラル分がたっぷりと含まれ、砂目まじりの土地で育てられた里芋はやわらかいのに粘りが強い里芋になります。地元では大きな葉を繁らすことから「葉芋」と呼ばれています。
木曽菜
木曽地域で作られている伝統的な漬け菜で、「信州の伝統野菜」にある7種類の漬け菜の1つです。旧 木曽福島町、今の木曽町福島地区を中心に栽培され、「福島菜」と呼ばれたり、「木曽菜」と呼ばれたりしている。地元では「はとり」とも呼ばれています。野沢菜と比べて草丈が短く、全体的に丸みを帯び、株が横に広がり、葉が柔らかいのが特徴です。
諏訪紅蕪
長野県南信地域で栽培されていた漬け菜です。実、葉とも食べます。「箕輪蕪」とも呼ばれています。昭和初期には盛んに栽培されましたが、野沢菜の普及により栽培が減少しました。蕪菜の「源助蕪菜」は諏訪紅蕪と、関西系のカブ品種との交配から育成されました。
鈴ヶ沢なす
下伊那郡阿南町と平谷村との境にある和合鈴が沢という集落で栽培されていましたが、現在では和合を中心に栽培されています。太さ15cm、長さ30cmにもなり、天龍村の「ていざなす」と見た目は似ていますが、ヘタの色やトゲの有無、食感などは大きく異なります。鈴ヶ沢なすは水分を多く含み、甘味が強いなすです。紫色のなすですが、濃い紫ではなく、薄く青みがかっているのも特徴です。
松本越瓜(まつもとしろうり)
松本越瓜は「しろうり」の一種で、長野県では一般的に「本うり」と呼ばれています。以前は「松本本瓜」と呼ばれていましたが、現在は「松本越瓜」と呼ばれています。皮は緑色で独特の縦の線が入り、実は白く肉厚でかたく、歯切れが良いので、奈良漬けや福神漬けに利用されます。
番所きゅうり(ばんどころきゅり)
安曇地区の乗鞍高原一帯で栽培されていて、地元では「番所うり」と呼ばれています。形は太く短く、長さは約20センチになります。一般的なきゅうりの場合、太くなれば皮が厚くなりがちになりますが、番所きゅうりの皮は厚くなく、実はとてもみずみずしいです。かつて夏の農作業の際、水分補給に番所きゅうりを食べていたと言われるほどの水分量です。これは昼夜の寒暖差がある乗鞍高原で栽培されているため、みずみずしいものが出来ます。甘みもあり、中心の種の部分はゼリー状で柔らかいのが特徴です。現在は浅漬けや生食で食べますが、流通量は少なく、ほぼ地元で消費されます。
むらさきいも
売木村で栽培されているじゃがいも。北海道から導入されたものと思われています。皮は紫色、果肉は黄色で、ホクホクとした食感です。
清内路黄いも
「清内路黄いも」の来歴は不明ですが、肉質が黄色のため「黄いも」と呼ばれ、戦前から栽培されていたといわれています。下伊那郡阿智村の旧・清内路村地区で栽培され、主に清内路や木曽地域で田楽、ねぎみそ和えなどにして食べられています。一般的なじゃがいもよりも小さく、収量が少ないです。肉質はすこしかためで、煮崩れしにくいのが特徴です。
平谷いも (ひらやいも)
下伊那郡平谷村で栽培されている小さなじゃがいもです。黄色く粘りがあります。
くだりさわ
飯田市南信濃で栽培されているじゃがいもです。静岡県の兵越峠(ひょうごしとうげ)、地図上では「ヒョー越峠」を越えて伝わったといわれています。「遠山の二度芋の味噌田楽」が、標高の高い山間部の急斜地で作られる畑作文化と認められ、長野県の選択無形民俗文化財に指定されました。
ぼたんこしょう (ぼたごしょう)
ピーマン型トウガラシで果肉も厚く、辛そうに見えませんが、種がついている白い芯の部分は強烈な辛みがあり、素手で触ると痛くなります。果実が牡丹の花のように見えることから「ぼたんこしょう(ぼたごしょう)」と呼ばれるようになりました。丸焼き、こしょう味噌、味噌漬け、天ぷらなどにして食べられます。
上平大根 (わってらだいこん)
千曲市 森 上平(うわだいら)地区で栽培される辛味大根です。「わってらだいこん」とも呼ばれます。首の部分が薄い緑色で、根部は水分が少なく辛みが強いのが特徴で、硬さと辛みを活かして、沢庵漬けやおろし大根に利用されます。
千代ネギ
「千代ネギ」は飯田市の千代地区で昔から栽培されています。一般的なねぎに比べると細くて柔らかいため、白い部分だけでなく緑の部分まで全部食べる事ができます。
あかたつ(唐芋)
木曽、上下伊那で栽培されている里芋の一種である「唐芋(とうのいも)」の赤紫色の茎を塩漬けや酢漬けにして食用にしています。それを「あかたつ漬け」と呼び、シャキシャキとした食感です。島崎藤村の小説「家」にも「あかたつ漬け」が出て来ます。
ひしの南蛮
小諸市菱野地区で栽培されていることから「ひしの南蛮」と呼ばれます。昭和18年頃、戦争からの帰国者が朝鮮半島から持ち込んだ種子を栽培したことが始まりと言われています。アオトウガラシの一種ですが、辛さは抑えぎみで苦味と甘味の独特の風味があります。果肉が薄く柔らかいので、種やヘタまで全部食べることが出来ます。素揚げ、醤油煮などにして食べます。
伍三郎うり
長野県下伊那郡天龍村で栽培されている大型のきゅうりです。長さは25センチくらいあり、ずんぐりとした形で、清内路きゅうりに似ています。(故)村松伍三郎さんが栽培を続けてこられたことから、このきゅうりの名前の由来となりました。生食や漬け物、三杯酢や味噌につけて食べます。
鈴ヶ沢うり
来歴は不明ですが、長野県南端近くの標高900mの集落、下伊那郡阿南町和合の鈴ヶ沢地区で栽培されています。長さは15~18cmで、重さは400~500グラムある太めの白イボ系きゅうりです。果肉はやわらかく、みずみずしいです。果肉の断面が三角形なのも特徴です。生食のほか、漬物や味噌汁の具として食べられます。